民間らしい

きのうの日経から。

 あなたと同じような経歴の人は、こんな企業に転職しています――。人材サービス大手のインテリジェンス(東京・千代田、鎌田和彦社長)は、過去の転職紹介実績からどんな経歴の人がどんな企業に転職したかを分析し、転職希望者に情報提供し転職時の不安を取り除く。
 新システムでは転職希望者の経歴を詳細に登録する。項目は業種に関するものが二百、仕事の経験スキルに関するものが四百。詳細なデータから、特定のキャリアを浮かび上がらせる。この情報を過去一年間、一万件以上の紹介実績のデータベースと突き合わせ、転職希望者と同じキャリアでの転職に成功した例を探し出す。
 データベースには企業からの求人条件も詳細に登録。転職希望者のキャリアと照らし合わせ、適合の度合いが大きい順に検索できる。
 江田通充・常務執行役員は「これまでの人材紹介は、コンサルタントの個人的な経験や勘に頼った部分が多かった。新システムの導入で内定しやすさや、成功実績を全社で共有化できる」と話している。
(平成20年10月13日付日本経済新聞朝刊から)

こういう科学的な方法でマッチングの質と効率を上げていくというのは、職安ではまず行われない試みでしょうから(すみません、もしやっているなら失礼しました)、民間職業紹介の一つの意義であると言えそうです。逆にいえば、職安の求人や求職の多くは、こうした分析があまり必要のないものになっている、という実情もあるかもしれません。民間の有料職業紹介と無料の公共サービスである職安との棲み分けがこうした形で進んでいるということでしょうか。もっとも、職種が200で経験スキルが400、かなり詳細なようではありますが、経験スキルなんかはちょっと細かくみれば膨大な数になるでしょうし、職種とスキルのほかにも重要な要素はありそうです。まあ、そのあたりはこれからの研究というところでしょうか。
これはどちらかといえば求人企業向けのサービスというよりは求職者(転職希望者)向けのサービスでしょうから、こうした取り組みが拡がると、原則として求人企業からしか手数料の徴収を認めない現行規制も見直していく必要があるかな…とも思ったのですが、考えてみれば、転職希望者にとって本当に必要な情報は「転職に成功したか」ではなく、「転職して成功だったか」でしょう。実際、転職には成功したものの、転職先であまりうまく行かず、結果的には退職してしまった、ということでは転職希望者にとってはあまり意味がないでしょうから。ということは、結局はこれは記事にもあるように、人材サービス業者にとって「内定しやすさや、成功実績」につながるものにとどまっていて、転職希望者の本当の期待にはまだ応えていないということでしょうか。これまた民間らしいといえば民間らしいですが、となると、これに手数料を払う求職者も多くはないかもしれません。