このところ、日経新聞は朝刊で「働くニホン」という企画連載を掲載していて、労働問題を継続的に取り上げているのですが、従来に比べてあまり面白くないので、なかなかブログのネタになりません。かつてのような叩きやすい(笑)独立開業転職マンセー、流動化マンセー、成果主義マンセー、首切り賃下げマンセーみたいな論調が息をひそめていて、いまひとつ口汚くののしりにくい(笑)せいかもしれませんが。
で、今日の「働くニホン」も「私事もシゴト」というイマイチなダジャレみたいな内容なのですが、このくだりが気になりました。
流行語となった「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」。言うは易(やす)く行うは難しで多くの企業は戦力低下を恐れ、社員が私事を増やすことになおためらっている。
「育児休暇の取得を申し出たら、査定に響くぞと忠告された」。仕事と生活の両立支援策に詳しい第一生命経済研究所(東京・千代田)の主任研究員、松田茂樹(38)のもとには、男性サラリーマンからの実態報告が続々と集まる。「人材獲得や競争力向上には両立支援を進めた方が有利なのに、企業の理解は足りない」と松田は批判する。
(平成20年6月24日付日本経済新聞朝刊から)
「育児休暇の取得を申し出たら、査定に響くぞと忠告された」というのがお気にめさないようですが、今日的にみればこれはむしろ有益なアドバイスとして評価すべきものではないでしょうか。もう少していねいに書けば、昨今ではこういう発言は「育児休業をとるとその間は貢献度が低下するし、その分は同僚がカバーするわけだから、その時期のあなたの査定は同僚より低くなることは承知しておいてね。わかってると思うけど、念のため」ということを意味することが多くなっているのではないかと思います。で、もっとていねいに言えば、「でも、育児休業を取得したことが仕事にもプラスの影響を与えて、復帰後の貢献度が高くなれば、その後の査定で十分取り返せるからね」と付け加えればさらによろしいのではないかと思うわけです(もちろん、どこまでいっても結局は査定への不満は残るでしょうが、それは評価を行う以上は致し方ないことで、育休とは直接の関係はありません)。それが本当の意味での「人材獲得や競争力向上には両立支援を進めた方が有利」ということでしょう。まあ、記事もそういう意味で書いていると読めないこともありませんが、いずれにしても「育休をとるとその間査定で同僚に後れをとる。それがいやだから育休がとれない。したがって、育休取得時も同僚と同等(以上)の査定を保障すべきだ」といったトンチンカンな考え方をしている人もかなりいるようなので、マスコミにはそうした誤り(というと表現がきつすぎるとも思いますが)を正す方向の論調を期待したいものです。