「6つの壁の5つの項目」再開

私がモタモタしている間に経済財政諮問会議の専門調査会における議論は進みつつあるようですが、「6つの壁の5つの項目」再開します。

3、高齢者雇用の拡大 →年齢の「壁」の克服
 ・「定年制」のあり方
 ・高齢者雇用を拡大するための条件整備
 ・雇用と社会保障との整合性、等

高齢化が進展するなかで高齢者雇用が重要な課題であることは間違いないと思いますし、高齢者雇用といえばまずは「定年制」ということになるのでしょうか。この問題については過去にも繰り返し取り上げていますので、まずはそのサルベージから。
http://www.roumuya.net/zakkan/zakkan13/rokujuu.html
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20050916
で、実際にはすでに高齢法が改正され、老齢基礎年金支給開始年齢までの継続雇用が原則義務化されているわけです。
私は基本的に定年延長論者であり、定年年齢と年金の(満額)支給開始とは接続する必要があるとの考え方ですが、当面、団塊世代が65歳到達するまでは、企業実務に対する影響の大きさを考慮して60歳定年制の維持が望ましいと考えています。最大の理由は定年退職→再雇用という形をとることで職務や労働条件の変更が円滑に行えるという点にあります。その後、老齢厚生年金の支給開始年齢引き上げにあわせて定年年齢も引き上げられるよう、労使で努力することが望まれます。
問題は、年金財政上の要請から、支給開始年齢をさらに引き上げようという動きがあることです。65歳ともなると、高齢者の健康状態や就労能力、意識などはばらつきが大きくなりますので、定年制のような一律の取り扱いをすることはかなり困難になってきます。年金満額支給と定年制の接続は65歳くらいが限界かもしれません。
いずれにしても、「あり方」などと称して、日本の労働市場や人事管理の実態を無視した「定年制禁止」などのような無謀な逆噴射をしないようくれぐれもお願いしたいものです。専門委員会の顔ぶれをみれば、まさかそんな蛮行に及ぶようなことはないと思いますが…。
で、私が定年制のあり方なんぞよりはるかに重要だと思うのがその次の「高齢者雇用を確保するための条件整備」です。条件整備といっても幅広いわけですが、当然ながらその後にあるような社会保障の問題もあり、働けば年金を減らされるようなバカげた制度は再考すべきでしょう(もちろん、しっかりおカネ援を稼げて、年金なんかもらわなくても十分リッチな人にまで年金を払うのか、という問題については、必要であれば別途の方法で対処すればいいわけで)。
ここで私が強調したいのは、高齢者にも働きやすい職務づくり、いわゆる「高齢者適職開発」の推進です。これはかつては定年延長や高齢化の議論のたびに取り上げられてきたと思うのですが、このところの高齢化をめぐる議論のなかでは意識が低下しているのではないかという気がするのですが、そんなことはないでしょうか?高齢者は当然ながら将来の期待就労期間は短いわけで、したがって能力開発などの人的投資の効果は限定的です(もちろん、生涯能力開発は重要ですが)。それよりは、すでに獲得している能力を発揮しやすいような環境を整えるほうが就労促進には効果的なのではないでしょうか。具体的には、高年齢になると維持が難しくなる体力、筋力、視力といったものを設備的な配慮などでサポートして、高齢者にも働きやすくする、といった取り組みです。すでに高年齢者雇用環境整備奨励金などの施策が行政においても展開されていますが、こうした施策をさらに拡大すれば、一般的に生計費の低い高齢者は賃金水準も低くできることが可能であることから、設備投資をしても引き合うようにすることはそれほど難しくはないのではないかと思います。