パートタイマーの年金加入拡大

まずはこれから。

 政府の「再チャレンジ推進会議」(議長・安倍晋三官房長官)は18日、非正規社員の待遇改善など格差是正策を一括して法案化する「再チャレンジ推進法案」(仮名)の検討を始めた。来年の通常国会への提出を目指す。実施には個別法の整備も必要となるが、「再チャレンジ可能な社会づくりへの決意を示すには一括法が欠かせない」(会議関係者)との判断が強まった。
 法案は、(1)パートなど短時間労働者の厚生年金加入の拡大(2)非正規社員の正社員への転換制度導入や正社員との待遇均等化(3)解雇や配転など労働契約に関するルールの明確化――などが柱。基本理念やスケジュールを示す「プログラム法」としての位置付けが想定されている。
 このうち厚生年金の加入拡大は、「正社員の4分の3(週約30時間)以上」としている労働時間の条件を「2分の1(週約20時間)以上」に引き下げる内容で、厚生労働省の試算では加入者が300万人増える。労働契約のルール整備は、年々増加する労使間の紛争処理には、現行の労働基準法などだけでは不十分との認識に基づく。
(平成18年5月18日付毎日新聞朝刊から)

記事だけでは詳細がわからないのですが、いいことも言っていればとんでもないことも言うという、なかなか面白い?会議のようです。


パートタイマーの厚生年金加入拡大は、さまざまな観点から私は望ましいと思います。もちろん、流通業などパートを多数雇用する産業・企業にとってはコストアップにつながる話なので、産業界は反対するかもしれませんが、短期的にはコストアップになったとしても、中期的には賃金水準で調整すればいいだけの話で、全国一斉に導入されるのですから競争条件は変わらないはずです。パートタイマー自身にとっては、直接保険料負担が発生する上に、事業主負担分もいずれは賃金減となってはねかえってくることになるわけですが、これは年金給付という見返りがあるわけですから、容認できないものではないでしょう。現実には、目先の損が先行するので労使ともにツラいところはあるでしょうが。
非正社員の正社員への転換制度も、労働市場の逼迫を受けてすでに多くの企業で取り組まれているところです。ただ、それを法律で義務化するというのはさすがに行き過ぎですし、制度を作っても運用せずに放置することもできる(というか、現在はともかく、不況期にはそうせざるを得なくなると思います)わけですから、無意味でしょう。正社員との待遇均等化というのはよくわからないのですが、この会議の「再チャレンジ」というのは正社員になることなのでしょうから、パートから正社員になった人と、以前から正社員だった人との待遇均等化ということでしょう。であれば、正社員に転換した人には当然正社員と同じ人事制度が適用されるわけで、なにも力んで法律でうたうまでもありません(なお、転換前のパートタイマーと正社員については、市場価格や仕事、役割、期待、人事管理などさまざまな違いがあるわけですから、賃金にも違いがあるのは当然のことです)。
労働契約に関するルールの明確化というのは、今労働政策審議会労働条件分科会で議論が進んでいる労働契約法制のことでしょうから、これは労使に異論の多い既定路線を強化したという位置付けでしょうか。私としては労働契約法制にはそれほど否定的ではありませんので、内容次第というところです。