均等法改正論議、大詰めに

先週金曜日(9日)に開催された労働政策審議会雇用均等分科会で、今回の均等法改正についての報告素案が提示されたということでしたので、さっそく取り寄せて読んでみました。すでに先月中旬には「たたき台」が提示されていましたが、素案はさらに明確な書きぶりになっています。要点はこんな感じでしょうか。
(素案はhttp://www.jtuc-rengo.or.jp/new/wakaru/kurashi/byoudou/data/20051209soan.pdfにあります)

  1. 女性差別のみを禁止している規定は、男女双方に対する差別を禁止する規定とする。なお、現状にかんがみ、ポジティブ・アクションの対象は引き続き女性のみとする。
  2. 配置における権限の権限の付与、業務の配分、降格、雇用形態・職種の変更、退職勧奨、雇止めについて差別的取扱いの禁止の対象とする。コース別雇用管理制度については、より適切なものとなるよう指針を見直す。
  3. 間接差別については、当面「募集・採用における身長・体重・体力」「総合職の募集・採用における全国転勤要件」「昇進における転勤経験要件」を限定列挙し、職務との関連性があるなど合理性・正当性が認められる場合でなければ差別として禁止する。
  4. 妊娠・出産、母性保護措置など法に定められた権利の行使、妊娠・出産による能率低下・労働不能に対する解雇その他の不利益取扱いを禁止する。妊娠中および出産後1年間の解雇は、妊娠・出産を理由とするものでないことを証明しない限り無効とする。
  5. 企業がポジティブ・アクションへの取り組み状況を外部に開示する際に、国が支援する。
  6. セクハラ概念を男性にも拡大し、予防措置・事後措置とも配慮義務規定から措置義務規定に変更する。
  7. 調停について、セクハラ等を対象に加える。報告徴収の拒否や虚偽報告に対して過料を課すなど、一定の機能強化を行う。
  8. 女性技術者が坑内の管理・監督業務等に従事できるよう規制緩和を行う。

性差別禁止法への転換、間接差別概念の導入など、法理論的にはかなり大きな改正ということになりそうです。


そのいっぽうで、具体的な内容をみるとかなり現実的なものとなっており、規制強化ではありますが、本当に女性差別を意図している論外な企業を除けばほとんど問題はない内容ですから、経営サイドもなんとか受け入れられるものなのではないでしょうか。
行政にとってどうかといえば、今回の検討の前提となった昨年6月の研究会報告が、間接差別やポジティブ・アクションを中心に、もっと多くの内容を含むものだったことを思うと、もう少し大幅な改正を念頭に置いていたのではないかと思えないこともありません。とはいえ、間接差別概念が一応導入され、妊娠中や出産後1年の解雇無効、セクハラへの調停の導入といった必ず実施したかった改正は織り込むことが出来ているようにも思えます。
労働サイドにとっては、欲をいえばキリはないでしょうし、これまでの姿勢からすればかなり不満が残るのではないかとも想像しますが、坑内労働を除けば規制強化には違いないのですから、反対する筋合いのものではないはずです。
であれば、多少の出入りはあるにしても、これで概ね決着ということになるのでしょうか。だとすれば、政労使三者がそれぞれに妥協できる合意点を見出したということで、その限りにおいては立派なものだと評価できるのかもしれません。
とはいえ、私の印象としては、労働サイドはいささか作戦を誤ったという感を禁じ得ません。労働サイドは、7月に発表された「中間とりまとめ」に対する連合の事務局長談話にもありましたが、「仕事と生活の調和を法の目的・理念に明文化すること」を、「法改正の柱として」強く要求してきました。ここが実現すれば全体に大きな波及効果があるという考えだったのかもしれませんが、さすがに常識的に考えてこの要求は理不尽であり、厚労省のホームページで公開されている分科会の議事録をみても、複数の公益委員が労働側委員を繰り返したしなめています。しかし、議事録類や連合HPなどウェブ上にある断片的な情報などを見る限りでは、労働サイドはこれに異様なまでに固執したようで、議論の入口のところでいたずらに時間を費消してしまったのではないかという感は否めません。結果として、その他の部分で、議論を尽くせば進展が見込めた部分が実現できなかったとしたら、まことに惜しい話だと思います。