民主党のマニフェスト

今朝の日経新聞で、民主党マニフェストが大々的に取り上げられ、その要旨も大きな紙幅を割いて紹介されていました。みると、「3.社会保障、雇用」となっているので、どれどれと思って読んでみたところ、要旨は社会保障の話だけで雇用については全部省略されていました(笑)。
仕方ないので民主党のホームページをみてみると・・・


ありました、ありました。「2005年衆議院選挙マニフェスト政策各論=文字原稿版=」となっています。
http://www.dpj.or.jp/seisaku/sogo/image/BOX_SG0062_kakuron.pdf
で、日経の要旨で全面カットされた雇用政策はというと、こうなっています。

(4)仕事と生活のバランスをとりながら、能力が最大限発揮できる雇用環境をつくります。
1)誰もが仕事に就き、労働が正当に評価されるルールを確立します。
就業機会の拡大を図り、ワークシェアリング男女共同参画の推進、不払い残業の解消などに取り組みます。失業の新規発生を食い止め、就労者を増やします。男性も女性も家事を担い、生活を共に楽しむため、長時間労働を解消し、休暇が取れ、年休の完全消化ができるワーク/ライフ・バランスを実現します。過重労働やメンタルヘルス対策として、長時間労働者に対する医師による面接指導を義務づけます。経済環境の変化に適合した労働者の権利擁護、労働債権の優先的な保証、官民格差の是正、国際的ルールの確立などを推進します。
2)パート均等待遇の実現、育児・介護休業制度の拡充をすすめます。
正社員とパート社員などの間の合理的な理由のない格差を是正します。短時間労働であることを理由として、賃金その他の労働条件について正社員などと差別することを禁止する「パート労働法改正案」を、政権獲得後すみやかに成立させます。実質的に1年以上の雇用契約を結んでいる有期雇用労働者であれば、育児・介護休業がとれるようにします。また、子どもが生まれてから小学校に入学するまでの間、月単位で2回まで分割して育児休業を取得できるように改善をすすめます。結婚、出産、育児、介護などを経て、再就職や起業にチャレンジする女性のため、教育訓練制度を創設します。
3)能力開発と月10万円の手当支給で、失業・廃業からの再出発と暮らしを応援します。
雇用保険特別会計の安定を図るとともに、失業給付期間が終わっても就職できない人や、自営業を廃業した人などを対象として、能力開発訓練を拡充し、最大2年間、月額10万円の手当を支給する法律を制定します(所要額2500億円)。また、倒産やリストラで失業した人が安心して医療を受けられるよう、医療保険料を離職後1年間軽減します(所要額25億円)。
4)若者の自立のため、就労支援をマンツーマンで行います。
「ヤングワーク・サービスセンター(仮称)」を整備し、失業・無業状態の若者に個人アドバイザーによるマンツーマンの就労支援、民間企業での職業訓練などのプログラムを用意し、必要に応じて就労支援手当を1日1000円(月3万円程度)支給します(所要額360億円)。学校にも行かず、職にも就かず、職業訓練も受けていない「ニート」と呼ばれる若者が集まることのできる場所をつくり、相談・支援を行います。また、全国の中学2年生に年間5日以上の職業体験学習を実施します(所要額17億円)。
 ※一部機種依存文字を変更しています。

全文です。これだけなのです。なるほどこれでは要旨で全面カットされるのも致し方ないかな・・・という感じがします。個人的には例の「キャリア・スタート・ウィーク」の全国展開がうたわれている点に目をひかれましたが、連合の政策要求そのままのような内容が多く、新鮮な提案がないばかりか、妙にバラマキ的な印象すらあります。
それに、個別に見ていくと、「失業の新規発生を食い止め、就労者を増やします。」とあっさり書いていますが、具体的にはどうするのでしょう。「食い止め」はゼロにするということではないにしても、倒産などの発生はある程度は止めようがありませんし、転職のための失業だってあるでしょう。
それから、「官民格差の是正」というのは、これはいったい何者なのでしょうか?普通、官民格差是正といえば官を民並みに引き上げるということですが、現実には官の処遇の高さや不透明さが批判されているわけですし、このマニフェストにも何回も「公務員人件費総額2割削減」が出てきます。賃金だけでなく労働条件全般を民並みに引き下げるという意味で受け取っていいのでしょうか。まさか、官公労の意を受けて官の処遇をさらに引き上げるということではないと信じたいのですが・・・。
そのあとの「国際的ルールの確立」というのも意味不明です。まあこれは「国際機関(=ILO)ルールの確立」という意味なのでしょうか。ILOの条約(いわんや勧告をや)の相当部分はおよそ国際的に一般的なものではありませんが・・・。
まあ、公約ですし一部には努力目標的な性格もあるでしょうから、こんなものなのでしょうか。ワーク・ライフ・バランスに関しては人それぞれに考え方が違うでしょうから、余計なお世話だと思う人は多いだろうと思うのですが、長時間労働に対する医師の面接指導というのはまあまあ現実的な提案でしょう。パート均等待遇も「合理的な理由のない格差を是正」ということで、合理的な理由の範囲が経営の自由を侵害しないなら、まずまずひどく悪くはありません。育児・介護休業の拡大も、単に休めるというだけで所得保障の拡大を伴わないならそれほど悪くもなく、よく我慢したといえそうです。
いっぽう、失業給付が切れた後も2年間毎月10万円払うというのは、いかにもバラマキ的ですし、結果として失業期間を長期化させるだけという懸念もつよく、これはいただけません。ニート対策も効果が判然とせず、1日1000円のお手当てもどういう意味のお金なのかがよくわからず、バラマキにしてはそれほどの額でもなく、理解しがたいものがあります。
結局のところは、連合の要請を取り入れつつ、「無党派層」に好感されそうな施策を並べてみた、ということなのでしょうか?書いてあることもさることながら、現在進行中の労働契約法制の取り扱いなど、重要なテーマが書かれていないことのほうが気になります。まあ、要するにあまり気合が入っていないということなのでしょう。準備期間が短かったので手が回らなかったのだとすれば気の毒な部分はありますが、民主党には本当に労働政策を担当できる能力があるのか、心配がまったくないわけでもない印象です。実際に政権につけばしっかりおやりになるのだろうとは思いますが。