愛・地球博 食事編その4

「食事編」はきのうでやめるつもりだったのですが(笑)、きのうのエントリに対する常連さんたちのコメントで興味深いポイントを指摘されたのでもう一回だけ。
まずはrunbiniさんのコメントを再掲します。

 お弁当持込禁止は、あまり深い考え無しに、TDLなんかを参考にしたんではないでしょうか。TDLはお弁当持込み禁止でも、あんなにゲストに喜ばれ愛されてるんだから特に問題ないでしょ、くらいに。そこが甘くて役人の仕事らしいですね。形だけ一緒でも思想が違うとダメの典型かと。ディズニーのハートがあれば、当然お弁当を持ってきたい人への配慮が事前に成されたはず。ま、気配りの問題ですけどこれが一番ないのが行政です。

なるほど、参考にしたかどうかはわかりませんが、たしかにTDLも弁当持ち込み禁止ですね。

  • 厳密には持ち込むことはできるが会場内で食べることができない。入場門を出ると近くに弁当を食べるスペースがあり、そこで食べて再入場する。

違いはどこなのでしょうか。


実際、私も自分がTDLに行って、そこに弁当を広げて食べているファミリーがいたらがっかりするだろうと思います。TDLというのは「そういったもののない非日常空間」を売りにしているわけで、多くの来場者はそれを期待して来るわけですから、「だからこそ愛され喜ばれる」わけです。期待していない人も、少なくともそれを前提に納得ずくで来るわけですから、不満は出ないわけですね。で、持って来たい人には持ってきて食べられるような手配もしてある。
万博も非日常空間であるには違いありませんが、「弁当を食べている人がいない」というコンセプトではないわけですから、TDLと同じ発想で通用するわけはないと考えるのが普通でしょう。もし主催者がTDLからの類推で「大丈夫」と考えていたとしたらたしかに大甘だろうと思います(考えたかどうかはわかりませんが)。しかし、あたらめて考えてみるとTDLって食べ物については何をどこで売り、どこでどうやって食べてもらうか、ということがよく考えられていて感心しますね。だからああいった「売りになる」空間づくりができるのでしょう。まあ、この手の話は私は素人なのでよくはわからないのですが。
ただ、食中毒対策となると、「持ってきたい人への配慮」がTDLと同じ形ではできないところがつらいところです。持ってきた人には入り口で「自己責任で持ち込みます」と一筆取る、というのもちょっとねぇ・・・それで主催者が必ず免責されるとも思えませんし。
そういえばTDLはペットボトルだけでなく、飲み物類も禁止ですね。たしかに、TDLで歩きながら「南アルプス天然水」(でもなんでも)を呑んでる人がいたら興ざめかも・・・コカコーラのカップなら許せそうですが。って、そう思わせちゃうところがTDLの凄さなんでしょうね。ちなみに長崎のハウステンボスも食べ物・飲み物ともに持ち込み禁止だそうで、やはりこれもTDLと同じ理屈で納得できるものがあります。
ところで、食中毒対策で弁当持ち込み禁止にしているのも万博だけではなく、たとえば楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、フルキャスト宮城スタジアムも「弁当は食中毒対策のため持ち込み禁止」なのだそうです。野球場は万博よりはるかに滞在時間が短く、立地・時間帯から考えて気温も低めなはずで、万博会場よりかなり安全ではないかと思うのですが、それでもダメなのだとか。イーグルスにとって観客動員の切実さは万博に負けず劣らずでしょうから、球団が弁当を禁止するわけもなく(他の球場では認められているようですし)、やはり行政の指導があるのでしょうが、従来からの施設は一応既得権を認めて、新しくできる施設から厳しく指導するということなのでしょうか?それにしても皆さんこれには怒らないのはナゼ?仙台のファンは人間が出来ているのか、理屈がわかるのか。
もうひとつ、TTさんのコメントからの連想で、くどいようですがもう少しこれについて考えさせてください。きのうの一部再掲です。

 協会は当初、1人あたりの飲食を900円、土産物などを600円と見込み、子どもを含めた来場者が会場内で使うお金を、入場料などを含めて1人4600円と見積もった。TDLやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を大きく下回る。
(平成17年3月25日付朝日新聞朝刊から)

きのうも書きましたが、一人あたりで「TDLやUSJを大きく下回る」というところに、いかに主催者(協会)が商売をする気が薄かったかということが見てとれますが、それでは弁当を持ち込めたとしたらどうだったか、を計算してみましょう。
協会の見積もりでは、1人当たり4,600円、入場者の目標が1,500万人ですから、売り上げは総額で4,600円×1,500万人で690億円という計算になります。
そこで弁当を持ち込めるようにしたらどうなるかというと、きのうのエントリでも紹介しましたが、報道によれば弁当を持ち込んだ人は約2割だそうです。私が現地でみた実感ではとても2割という感じはしませんでしたが、子ども連れの多い週末は持ち込む人が多いかもしれませんので、まあ2割としておきましょう。
で、この2割の人は「1人あたり900円」がゼロになるかというと、そんなことはありません。食事はゼロになるにしても飲み物も買うでしょうし、食事時以外にも軽食を食べたり、子どもがいればソフトクリームを食べたりもするでしょう。ペットボトルも解禁すれば、という意見もあるでしょうが、ペットボトルを持ち込む人はもっと少ないはずです。もともと紙パックは持ち込める前提ですし、ペットボトルは保冷が難しく、場内でも冷えたものが150円で買えるのですから、1本十数円(?)を節約するために重い思いをして持ち込む人がどれほどいるか。ペットボトル解禁論は、安くあげたいというよりは、「せっかく持ってきたのに入り口で捨てさせられた」という恨みのほうが大きな要因になっているのではないでしょうか。あと、「ペットボトル禁止がテロ対策になるのか」という疑問もあるでしょうが、これは別の役所の指導なのでしょうから、それを主催者にいうのは気の毒というもの。
まあ、それでも高く見積もって、ペットボトルも2割の人が持ち込んで、弁当を持ち込んだ人は弁当以外はなにも食べず、ペットボトルを持ち込んだ人はそれ以外なにも飲まないとしましょう。それで減少する売り上げは、900円×1,500万人の2割=27億円という計算になります。27億円は大金ですが、690億円に較べれば4%にもなりません。弁当持ち込みで安く上げた分、お土産の買い物を増やそうという人もいるはずですし、実際の影響はこれよりはるかに少ないでしょう。
「弁当持ちで行けるなら行ってみようか」という人がどれほどいるかわかりませんが、いずれにしても少し入場者が多くなれば吸収されてしまう程度の話です。さらに、持ち込み禁止にしたために入場の際の手荷物検査の手間が多かったり時間が長くなったりで、検査員の人件費もたくさんかかっているでしょう。
こう考えてみても、「業者を儲けさせるために持ち込み禁止にした」というのが的外れな言いがかりであることは明らかでしょう。