「混迷深まる同一労働同一賃金」フォロー

先週金曜日(25日)に第6回一億総活躍国民会議が開催されてまたしても大量の燃料が投下されましたのであれこれ書いていきたいと思います。まずは前回会合の議事要旨が公開されましたので、同一労働同一賃金を中心に前回のフォローを。議事要旨はこちらになります。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/dai5/gijiyousi.pdf
これをみると、まず水町先生のプレゼンがあり、その後は全員が一人2分という限られた持ち時間で一通り発言して、特段の議論などはなく首相がまとめて終了したということのようです。まあ1時間の会議の中で水町先生と13人の有識者議員(欠席2人除く)、石破・馳・森山の3大臣が発言したわけなので致し方のないところでしょう(ちなみに加藤大臣も司会だけで意見表明はありません)。もちろん議事要旨であって全文議事録ではないので書かれていない部分というのも当然あるでしょうが、しかし実際にお一人おひとりのご発言を読み上げてみるとそこそこ2分くらいはかかるので、要旨に入っていない部分というのもそうは多くないと考えてよさそうです(2分相当のオーラル原稿を準備していた議員というのもいそうで、そういう人については原稿をそのまま掲載していることもあるのではないかと思料)。ということで、資料に口頭での補足があったというよりは発言できなかった分は資料を参照してくださいという会議だったようなので、資料を提出した議員については、前回エントリでご紹介できなかった内容もそれほど多くはないようです。
とはいえ資料なしで発言された議員の中には同一労働同一賃金にかなり踏み込んだ発言をされた方もおられますので、以下追加的なコメントと感想をいくつか書いていきたいと思います。
まず進行についてですが、水町先生のプレゼンについては「本日の議題の1つである非正規雇用労働者の待遇改善を考える上で大変重要なテーマである同一労働同一賃金の推進について専門家に出席いただいた」という位置付けで、その上で「これも踏まえて本日のテーマである正規雇用労働者の待遇改善、高齢者、若者、障害や難病のある方の就業促進について」有識者議員が発言する、という仕切りだったことがわかりました。
そこで最初の水町先生のプレゼンですが、基本的には資料に沿って、判例などを除けばほぼそのまま読み上げているという印象です。そんな中でひとつ目についたのは、資料(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/dai5/siryou2.pdf)7ページについて力説されたあと、8ページに入った段階で資料に記載のないこんなご発言があったことです。

 最後に8ページ、日本は、ヨーロッパと比べても、アメリカと比べてみても、正規・非正規労働者間の壁、格差が、私が知る限り、どの先進諸国よりも高くなっています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/dai5/gijiyousi.pdf

ここまでずっとヨーロッパの話をしてきたわけですが、ここで唐突に「アメリカと比べてみても」と発言しておられます。しかし、アメリカのフルタイム・パートタイムの賃金格差は日本よりさらにかなり大きいというのが関係者の共通認識ではないでしょうか。私の手元にあるJILPT編の『データブック国際労働比較2015』によれば、フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準は日本の56.8%に対して米国は30.5%となっています(いずれも2013年。第5-5表、p.177)。まあ「壁」に関して言えば米国の方が日本よりはかなり低いといえると思いますが(善悪は別として)、格差は明らかにそうではないでしょう。前回ご紹介時にコメントした「働きぶりに見合わない低い処遇を受けて、十分にその能力を発揮できない状況」という意味不明な表現もそのままに発言されたようで、率直に申し上げて同一労働同一賃金の導入に較べれば非正規雇用の労働条件改善は多分にどうでもいいとお考えになっておられるような印象がさらに強まったように感じました。前回も書きましたがそれ自体についてはそういう考え方もあると思いますし私としてはいいとも悪いとも言うつもりはありませんが、この会合においては手段と目的が転倒しているとは思います。
さて資料のなかった議員のうち、対馬徳昭社会福祉法人ノテ福祉会理事長は障害者雇用と高齢者雇用、松本理寿輝まちの保育園代表は高齢者雇用についてご発言されましたが、お二方とも同一労働同一賃金について特段のコメントはしておられません。
これに対して、経団連の榊原会長は資料なしですが、かなり踏み込んで発言しておられます。

 雇用形態の違いによる不合理な格差の解消に向けて、同一労働同一賃金の実現を目指すという安倍総理の方針に、経済界は賛同いたします。経済の好循環のためにも、正社員と非正規労働者の格差を是正していくことは、大変重要であります。
 そこで、経団連では、今年の経労委報告を通じて、非正規労働者の時給引き上げや正社員への登用促進など、総合的な処遇改善を呼びかけているところでございまして、これに沿って、各社で具体的な取組が進められております。
 同一労働同一賃金についての今後の検討に当たりましては、我が国の雇用慣行に合った、同一労働同一賃金を実現していく必要があると考えます。多くの企業では、仕事の内容や責任の程度といった職務内容だけではなく、労働者に対する期待、役割、将来的な人材活用の要素、さまざまな要素を勘案して、賃金を決定しております。単純に同一の職務内容なら、同一の賃金という考え方にならないように、日本の雇用慣行を踏まえた議論が必要だと考えます。
 経済界といたしましては、我が国企業の実態に即した、同一労働同一賃金の実現を目指して、引き続き、積極的に意見・提案を述べてまいりたいと考えています。…

後半は高年齢者雇用の話ですが省略しました。一応は「同一労働同一賃金の実現を目指すという安倍総理の方針に、経済界は賛同いたします」と賛意を表していますが、いろいろと留保や条件をつけているようです。
まず最初のポイントはいきなりさりげなく書かれた「不合理な格差の解消」という部分で、ここは私も経団連事務局の方からお聞きしてなるほどと思ったところなのですが、水町先生がしきりに言われる「合理的な理由のない格差」と「不合理な格差」とは異なるということなのですね。現行労契法20条は「…不合理と認められるものであってはならない」と定めているところ、そこには「合理的な理由があるかどうかは判然としないが、しかし不合理とまではいえない」というグレーゾーンがありうるわけです。現行法ではここはセーフであって、(ここからは私個人の推測になりますが)経済界としてここを譲るつもりはないというのがこの部分の含意ではないかと思います。
「今年の経労委報告を通じて、非正規労働者の時給引き上げや正社員への登用促進など、総合的な処遇改善を呼びかけている」というのも、たしかに経団連の『2016年版経営労働政策委員会報告』にはそのような記述がありますし、さらにそれが一定程度実現していると自画自賛もしていますが、同一労働同一賃金への言及はありません。
というのも、続けて榊原会長は「我が国の雇用慣行に合った同一労働同一賃金を実現していく」と述べ、前半の最後でさらに「我が国企業の実態に即した同一労働同一賃金の実現」と念を押しているわけです。ここでも榊原会長は「仕事の内容や責任の程度といった職務内容だけではなく、労働者に対する期待、役割、将来的な人材活用の要素、さまざまな要素を勘案して、賃金を決定」と発言しておられるわけですが、過去の経営労働政策委員会報告をみても、たとえば『2010年版』においてすでに「同一労働同一賃金を求める声があるが、見かけ上、同一の労働に従事していれば同一の処遇を受けるとの考え方には問題がある。外見上同じように見える職務内容であっても、人によって熟練度や責任、見込まれる役割などは異なる。それらを無視して同じ時間働けば同じ処遇とすることは、かえって公正さを欠く」と書いていますし、さらに同一価値労働同一賃金に至っては「将来的な人材活用の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働(中長期的に判断されるもの)であれば、同じ処遇とするというもの」と主張しているわけです。これについてはhamachan先生がご著書『働く女子の運命』の中で「国際的な常識とは真逆」と批判しておられますが(実際それはそのとおりだが)、それがまあ「我が国の雇用慣行に合った」「我が国企業の実態に即した」ものだということでしょう。
ということで、ここの話は非正規労働の処遇改善の話なのでまあ「同一労働の定義次第」ということでいいのだろうと思いますが、では正社員間の格差はどうなのかという問題は別途あるのではないでしょうか。経労委報告は「将来的な人材活用の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働(中長期的に判断されるもの)であれば、同じ処遇」と言っていて、まあ「期待できる」なのでそれが実現するか否かを問わないということかもしれませんが、現実問題としてはある程度勤続した段階で「中長期的に判断」すれば当然ながら各個人が企業にもたらす付加価値の期待というのは大きく異なってきているわけで、本当にそれが同一なら同じ処遇になっているかというと、必ずしもそうではないのではないかと思われるわけです。毎回書いていることですが、典型的には不運にも病を得て能力的に大幅にダウンしてしまったとして、冷静に考えればもたらす付加価値の期待も大きく下がるわけですが、だからといって処遇も大きく下げるというわけではないでしょう。これはこれでそれなりに合理的なしくみとして労使で作り上げてきたもので…という話もやはり繰り返し書いています(たとえばhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20090831とか、上の検索窓に「互助的」とか入れて日記検索してもらえばたくさん出てきます)ので略します。まあこれも「同一労働」「同一価値労働」の定義や評価をどうするかという問題ではあるのですが…。
続いて日本総研の高橋理事長も資料なしで発言されておられ、やはり該当部分を抜き出しますと、

…今日は、「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込むべき具体的な事項として、3点申し上げたいと思います。
 第1点が、非正規雇用労働者の待遇改善でございます。水町先生からも御提案がありましたけれども、私もおおむね賛成でございまして、まず同一労働同一賃金を実現すべき、そして、労働者派遣法、労働契約法、パートタイム労働法、全てについて、制度のあり方を検討すべきだと思います。ただし、企業側に混乱を生じさせないためにも、賃金に差を設けることが正当でない事例について、政府として、ガイドラインを制定すべきだと思います。
 それから、欧州と日本は異なるとの見解がよく言われますけれども、そもそも欧州の実態把握が正確に行われておりません。まずは欧州の実態把握を正確に行うべきであり、早急に専門的検討を開始すべきだと思います。
 我が国の非正規雇用労働者は、欧州における待遇と比べて、賃金あるいは人材育成などの面で、不当に扱われております。ちなみに、フルタイムの労働者とパートタイム労働者の賃金水準を比べてみますと、ドイツのパートタイム労働者の賃金水準は、フルタイムの79.3%、フランスが89.1%なのに対して、日本は56.8%にすぎません。非正規雇用は就業の1つの形態として、柔軟に選択できるようにすべきであり、正規に対しての非正規という位置づけは、排除すべきだと思います。…

高橋先生もなかなか微妙な言い回しで、「賃金に差を設けることが正当でない事例について」ガイドラインを制定せよ、と言っておられます。これと水町先生の言われる「合理的な理由としてどういうものがあるのか」ガイドラインを示す、というのとは同じなのか違うのか。まあ実際にガイドラインを設けるとなるとこれは正当だ、これは正当でない、と両方が例示されるのでしょうが…。
「まずは欧州の実態把握を正確に行うべきであり、早急に専門的検討を開始すべき」というのももっともであり、そもそもこういう議論に入る前にJILPTなどが予備的な事実調べを半年なり1年なりかけて行うべきテーマだろうと思います。いや高橋先生としては日本総研こらこらこら、いやもちろん日本総研が調べてもいいと思います。
なお高橋先生はさすがに「欧州における待遇と比べて」と正しく指摘しておられ(いや不当にかどうかは別として)、上げられている数字も上でご紹介したJILPT『データブック国際労働比較2015』に掲載されているものです。
さらに日商の三村会頭も資料なしで発言しておられました。

…まず同一労働同一賃金についてですが、この考え方が、非正規労働者に対して不合理な理由による不利益な扱いをしてはならないという趣旨であるのならば、総論としては、理解することができます。
 問題は、同一労働の定義が明確にできるかであります。また、その定義が明確でないままに、例えば合理的な理由の立証責任が、企業側のみに課せられるとすれば、現場に大変な混乱を引き起こすことになります。例えば終身雇用、年功序列との関係をどう整理するのか。さらにはキャリアコースや勤続年数の違いなどによる、いわゆる不合理でない賃金格差について、ガイドライン等で具体的に整理できるのか、これらはいずれもそう簡単ではないと考えますが、ぜひともやっていただきたいと思います。
 本件によって、中小企業にとっては、労務対策上の負担が過大となることが懸念されます。無用な労使紛争を未然に防止し、経営の予見可能性を確保するためにも、ぜひとも慎重な検討をお願いしたいと思います。
 また、付加価値を生む力である生産性という視点で、処遇を考えることも重要だと思っています。格差是正の観点から、例えば職業訓練の充実等を通じて、非正規社員の生産性向上を支援することも、解決策の1つだと思っています。

例によって同一労働同一賃金を離れた後半部分は略しました。冒頭で「不合理な理由による不利益な扱いをしてはならないという趣旨であるのならば、総論としては、理解することができます」と一応は賛意が示されていますが、やはり経団連の榊原会長と同様「不合理な理由」であり、さらに「同一労働の定義が明確にできるか」が問題と明確に述べられています。紛争の多発に対する懸念も示され、「不合理でない賃金格差について、ガイドライン等で具体的に整理できるのか、…そう簡単ではないと考えますが、ぜひともやっていただきたい」というのは、「できるものならぜひやってほしい」=「できないならやめてくれ」という意味としたものでしょう。「中小企業にとっては、労務対策上の負担が過大となることが懸念されます。無用な労使紛争を未然に防止し、経営の予見可能性を確保するためにも、ぜひとも慎重な検討をお願いしたい」というのは、かなり切実な本音に近いのではないかと思われます。
もうお一方、土居丈朗先生なのですが、資料をご紹介した際にも興味深い提案を含んでいるものの不可解なところもあって口頭で補足されたものと思うと書いたのですが、議事要旨を見ると、まず同一労働同一賃金で正社員の待遇が悪くなるのではないかという誤解を払拭し、国民の共感を深めるべきだという発言のあと、こう来ます。

…確かに、既に正規雇用されている方でも、雇用は安定的ではあるけれども、残業を命じられれば残業に応じなければ正規雇用でなくなってしまうというおそれもありますし、無限定的な働き方を甘受せざるを得ないという面もあるという意味では、正規雇用の方でも必ずしも十分に満足できる働き方をしているわけではないということですから、その有期であるか無期であるかということによって、大きな差異が生じているというところを根本的に改めることで、国民の共感を得られるのではないかと思います。
 高齢者雇用に対しても、定年制があるというのは、無期雇用を終わらせるための一つの仕組みということで、無期雇用という働く者としては得難い雇用の安定性を得るためには、大いなる犠牲を払って無期雇用の座にいるということであってはいけない。働き方を多様にして、いろいろな形で働きつつも雇用が安定している。そういう働き方を模索していくことが重要だと思います。

これと資料(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/dai5/siryou8.pdf)を照らし合わせてなにを言っているのかわかる人というのはどのくらいいるのでしょうか。思うに「正規雇用の方でも必ずしも十分に満足できる働き方をしているわけではない」それは(有期雇用と異なって)「大いなる犠牲を払って」「無限定的な働き方を甘受せざるを得ない」からなので、その「大きな差異」を根本的に改めれば国民の共感は得られる、つまり正規雇用もより満足できる働き方になるのだから同一労働同一賃金で賃金が下がっても共感が得られるという意味なのでしょう。だから(賃金は下がるけど)待遇が悪くなるというのは誤解だ、というわけですね。たしかに労働条件はパッケージなのでこういう議論は十分ありうると思いますがしかし本当にそれで国民の共感が得られるのか。
さらに、こうも主張されるのですが、

…合理的な理由を明確にする必要があって、それに対しては私もガイドラインを早期に政府が示すことは重要だと思います。そういうことを通じて、…育児や介護の時期になりますと、無期雇用でなくなってしまうという現状から、労働時間を限定的にした無期雇用が採用されるならば、この雇用形態でもって働き続けられ、育児や介護が終わった後には、引き続き無期雇用であることも可能になってくる。これは有期雇用か無期雇用かだけでは差が生じなくなることが背景にあって、この実現に近づけられるものだと思います。
 そういう意味では、合理的な理由のない場合の差別的な取り扱いを禁止することを厳格に適用して、有期か無期かだけで賃金差が生じないようにすることが重要だと思います。

出産・育児でいったん退職すると正規雇用での復職が難しいことは事実なので、育児短時間勤務や育児休業を充実させていくことが重要だというのはまことにそのとおりだと思いますし、すでに取り組まれていることでもあると思います。ただ「有期雇用か無期雇用かだけでは差が生じなくなることが背景にあって」とか「有期か無期かだけで賃金差が生じないようにすることが重要」というのはいまひとつ関連性がよくわかりません。出産前は正社員、出産で退職して育児期以降は短時間有期(パートタイマー)、というパターンを想定して、短時間有期の期間も賃金が同じなら企業は有期に変えても賃金面でメリットがないから無期のまま雇用し続けるだろう、そうすれば育児後もフルタイムに戻りやすくなるだろう…ということでしょうか?まあそういう理屈もあるかもしれませんがそうそう単純でもない可能性は高く、それよりは育児短時間の拡充に取り組んだほうがよほど筋がよさそうには思えるのですが…。
さて、その後の3大臣の発言にはやはり同一労働同一賃金への言及はなく、あとは特段のディスカッションもなく総理の総括となったわけですが、そこを読みますと、

…第一に、同一労働同一賃金の実現です。多様で柔軟な働き方の選択を広げる
ためには、非正規雇用で働く方の待遇改善は待ったなしの重要課題であります。本日は榊原会長からも大変心強い御発言がございましたが、同時に我が国の雇用慣行についても御意見がございました。また三村会頭からも御意見がございましたが、そうした我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、同時に躊躇なく法改正の準備を進めます。あわせて、どのような賃金差が正当でないと認められるかについては、政府としても、早期にガイドラインを制定し、事例を示し てまいります。
このため、法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ、欧州での法律の運用実態の把握等を進めてまいります。厚生労働省内閣官房で協力して準備を進めていただきたいと思います。
 できない理由はいくらでも挙げることはできます。大切なことは、どうやったら実現できるかであり、ここに、意識を集中いただきたいと思います。

「躊躇なく法改正の準備を進めます」「できない理由はいくらでも挙げることはできます。大切なことは、どうやったら実現できるかであり、ここに、意識を集中いただきたいと思います」などとなかなか勇ましいわけですが、一方で榊原会長・三村会頭が求めたように「我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ」とも言っていますし、「どのような賃金差が正当でないと認められるかについては」というのも「不合理と認められるものであってはならない」の路線ではなかろうかと思われます。
ということで当面は一億総活躍プラン策定に向けて「法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ、欧州での法律の運用実態の把握等を進めてまいります。厚生労働省内閣官房で協力して準備を進めていただきたいと思います」という話になったわけですが、中身は「欧州での法律の運用実態の把握等を進め」るということですので、さすがに一億総活躍プランの段階ではあまり具体的・詳細なことまでは書き込まれないのではないかと思います。以前も書きましたが、ここではまあ「同一労働同一賃金という考え方にも留意しながら非正規雇用労働者の労働条件の改善をはかる」くらいにしていただいて、あらためて現状把握、研究者による研究会、そして労働政策審議会というステップをふんで時間をかけて議論すべきテーマではないかと思います。