ILO総会 厚労相ではなく戦略相を派遣へ

これは5月30日の日経から。これはかなり変則的な状況ではないかと思うのですがどんなものなのでしょう。

 政府は29日、6月にジュネーブで開く国際労働機関(ILO)総会に、仙谷由人国家戦略相を派遣する方向で調整に入った。これまでは労働政策を担当する厚生労働副大臣らが出席するのが通例で、厚労省の閣僚級が参加しないのは初めてとなる。6月16日に会期末を迎える今国会の終盤情勢を見極めて正式に決める。
 厚労分野では年金制度改革やB型肝炎訴訟への対応など、戦略相が主導するテーマが目立つ。戦略相のILO派遣について、厚労省内からは「長妻昭厚労相の閣内での発言力の弱さが反映した人選」との指摘もあがる。連合など労働組合と距離を置く厚労相の派遣に、連合側が難色を示したとの見方も多い。
 戦略相は政府の緊急雇用対策本部の本部長代行を務めており、ILO総会では政府を挙げて雇用対策に取り組む姿勢を強調するという。
(平成22年5月30日付日本経済新聞朝刊から)
http://www.nikkei.com/paper/article/g=9695999693819481E0EBE2E2E18DE0EBE2E7E0E2E3E28297EAE2E2E2;b=20100530

「緊急雇用対策本部の本部長代行」が出席して「政府を挙げて雇用対策に取り組む姿勢を強調する」のはもちろん大事でしょうが、それにしても厚労相もいっしょに行けよと思うわけで。もっとも、記事にもあるように、舛添前厚労相が出席していたかというとそうでもなく、昨年は当時の渡辺孝夫厚労副大臣が出席するなど、副大臣の出席が恒例になっています。今回は誰にせよ「大臣」が出席するということですから、例年にない力の入りようには違いありません。「緊急雇用対策本部」という枠組みで考えるなら、仙石大臣は記事にもあるように本部長代行、長妻厚労相は他の関係閣僚と並んで副本部長*1という位置づけなので、より格上の大臣が行くという形にもなってはいます。
そうはいっても、やはり仙石大臣が行くのに厚労閣僚が行かないというのは不自然な感じがします。まあ、労働担当の細川厚労副大臣社民党の連立離脱という状況の中で、会期末にかけて派遣法改正を通さなければならないこの時期にILO総会どころではないというのはあるでしょうが、とりあえず労働担当の政務官*2である山井和則氏が行けないという事情も考えにくいものがあります(官僚答弁禁止で国会審議の都合とかいうのがあるのかもしれませんが、それにしても厚労相がいれば問題ないはずではないかと思いますが…)。記事には「連合など労働組合と距離を置く厚労相の派遣に、連合側が難色を示したとの見方も多い」とありますが、それにしても山井政務官は行けばいいのではないかと思いますが…。
案外、「政府を挙げて雇用対策に取り組む姿勢を強調する」と言いながら、その実は派遣労働者の職を奪う派遣法改正などの逆噴射政策を推し進めている現状では、厚労閣僚としてはいまひとつILOで理屈の通った話をする自信が持てない、だから仙石大臣お願いしますよ…ということだったりして…いやさすがにそんなことはないか。今回も厚労官僚はたくさん行くようですし…。ちなみに話は変わりますが、日本代表団の構成をみると政府側が18人、労働者側が11人に対して使用者側はわずか4人となっています。政府側が多いようですが、半数近くは現地のレーバー・アタッシェです。労働者側は連合の古賀会長をトップに、代表団以外にも多数の活動家が現地入りするのに対し、使用者側は経団連の讃井常務理事プラス経団連事務局幹部3人です。いや讃井常務理事が悪いというわけではありませんが、しかしここまで力の入り方が違うというのはどんなものなのでしょう。旧日経連時代にはここまでではなかったはずですが…。
ときに、記事は「連合など労働組合と距離を置く厚労相の派遣に、連合側が難色を示した」と推測していますが、長妻氏大臣は連合とも疎遠なんでしょうか?まあ、特に近いということはないでしょうし、そういえば社保庁職員の雇用問題でやりあう場面もあったかなあとも思うわけですが。しかし、そんなことで連合が大臣のILO総会出席を拒みますかねぇ?いずれにしても、長妻大臣は経団連とも疎遠なようですし、官僚との関係はいわずもがなですから、まことに孤立したお立場のようで、とはいえご自身で好んで招いた立場でしょうからそれほど同乗する気にもなれませんが…。

*1:ちなみに本部長は鳩山首相、本部長代行は仙石大臣と菅副総理、副本部長は厚労相のほか内閣官房長官総務相財務相(菅氏兼務)、文科相農水相経産相国交相環境相、金融担当相、少子化対策担当相となっています。

*2:まあ、山井氏は労働担当といっても得意分野は福祉のほうなのではありますが。