労働契約法案の修正

JILPTのサイトに、労働契約法案の修正内容が掲載されていました。いやほんと、私のように政策問題に関わるような仕事をしている実務家なんかにはこのサイトが公開されているだけでもJILPTの存在意義は高いものがあるのですが。「メールマガジン労働情報」もホント有用ですし。
http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/siryo/pdf/20071109b.pdf
さて、それをみると、11月7日のエントリで紹介した「均衡処遇」と「仕事と生活の調和」については実際にはこう修正されたようです。

  1. 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、または変更すべきものとする。
  2. 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、または変更すべきものとする。

かたや「労働者及び使用者が」のあとに「、」があり、かたやないのはナゼ?なんてことは気にするほうがバカなのでしょうか?
それはそれとして、この修正にはなかなかうなずかされるものがあります。均衡処遇に関していえば、これは要するに、当事者双方が「就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ」労働契約を検討し、双方が受け入れ可能な条件がみつかれば契約すればよし、みつからなければ契約しなければいい、ということでしょう。もちろん、「均衡を考慮」するためにはそれなりの情報が必要でしょうから、特に使用者はその企業での労働条件について労働者に情報提供する必要があることになります。この場合、当然ながらこの仕事をしているこの人の賃金はこれだけだ、という具体的な個人情報は提供できないでしょうから、まずは職種別・コース別あるいは雇用形態別の初任給と、平均年齢、平均的な給与といったようなものを開示することになるのでしょう。これは求人を出している企業であればだいたい開示しているでしょうから、それをわかりやすく求職者に見せて、説明する努力が必要だということになりそうです。
仕事と生活の調和はといえば、これはまさに「配慮しつつ」ですから、当事者双方が配慮をしたうえで合意できれば契約すればよし、合意できなければ契約しないというだけのことになるでしょう。それでも、「仕事と生活の調和」というものを常に意識はしなさいよ、という訓示的なものとしてはそれなりの意味はあるのではないでしょうか。こうした価値観を労働契約の基本ルールに織り込むのはいかがなものかとの感は依然としてありますが、特定の「仕事と生活の調和」ではなく、それぞれの当事者が多様に思い描く「仕事と生活の調和」だということであれば、まあまあ問題は小さいように感じます。