拡大する中途採用

今朝の日経新聞によれば、鉄鋼大手が現場の技能職の中途採用を拡大しているそうです。

 鉄鋼大手各社が業績好調を背景に社員の中途採用を拡大している。新日本製鉄やJFEスチールなど4社の2005年度採用実績(12月末時点)は合計606人で、03年度の3倍強に急増した。02年前後までの長期不況期に新卒採用を抑えたため、現場の若手技能者が不足。今後はベテラン社員の定年退職が大量発生することもあり、中途採用で「世代の空白」を埋めたい考えだ。
(平成18年1月5日付日本経済新聞朝刊から)

200万人のフリーターに対して600人はいかにも少ないとの見方もあるでしょうが、こうした動きが産業界全体に広がれば、かなりの数にのぼることも期待できそうです。


実際、別の記事(私の見ている版ではこの記事の隣にあります)では、こんなことも書かれています。

 景気回復に加え、団塊世代の大量定年退職に備え、企業はこれまで抑制していた人材採用を急拡大。採用しなかった年の補充を含め、中途採用を大幅に増やし始めた。人材紹介最大手のリクルートエイブリック(東京・千代田)によると、昨年11月末の中途採用求人数は約5万8500人。前年同月比23%増と高い伸びが続いている。
 名の知れた大企業も中途採用向け会社説明会を頻繁に開いている。昨年十二月だけでも日立製作所日産自動車、ホンダ、三井住友銀行武田薬品工業ブリヂストンなどが実施した。中途採用向けの説明会が急増したのはここ一年の現象だ。
(平成18年1月5日付日本経済新聞朝刊から)

有効求人倍率が1倍に迫るなど労働市場には人手不足感が流れはじめており、こうなると「早めに動いてなるべくいい人を確保しよう」と企業も考えるでしょうから、動き始めれば案外速いのかもしれません。
とはいえ、現時点ではまだ狭き門ということになるでしょうか。どんな人材が求められているかについては、記事によれば「各社に共通するのは20−30歳代半ばの若手技能者を積極採用していること」「現場の第一線で働く世代を補充し、技能の習得を急がせたい考えだ」ということのようで、特段製鋼所などでの経験や技能を求めているわけではなく、採用してから育成する方針のようです。
ということは、結局は人物本位での採用ということになるでしょうか。「20−30歳代半ば」というのは、記事にもあるように、かつての採用抑制の結果その年齢層が手薄になっているという事情があるのでしょう。中途採用を増やしているということは当然新卒採用も増やしているはずで、中途採用者にはできれば新卒の「先輩役」としての役割を果たすことも期待されているでしょう。となると、一定の「社会人経験」「仕事経験」が望まれるわけで、常識的に考えれば、人柄に加えて、職歴をみて、派遣やアルバイト、有期雇用であっても、工場などでの作業の経験があるか、「平日毎日、朝9時から夜5時まで働く」ことができていたかどうか、ということがポイントになるのでしょうか。当面は、フリーターたちが「どのようなフリーター生活を送っていたか」が問われる局面になるのかもしれません。
今後さらに人手不足が強まってきて、企業が「多少の難はあってもとにかく採って、中で育てよう」という姿勢になればしめたもので、日本企業の人材育成マシーンがフル稼働しはじめるでしょう。企業の努力が最重要ですが、行政などにも適切な経済運営をお願いしたいものです。