- 作者: 橘木俊詔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/09/20
- メディア: 新書
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最低賃金は低すぎるか
橘木先生はこの本の中で、わが国で貧困(この定義が微妙なのですが)が増加している一因は、わが国の最低賃金が低すぎるからだと、生活保護との比較を通じて指摘しておられます。
…最賃額の方が、生活保護制度による支給額よりも低くなっているのです。
生活保護制度による支給額は、人が最低限生きていけるだけの生活保障を念頭においています。したがって、それより低いということは、最賃が生きていけるだけの生活費さえも支給していないと解釈できます。しかも、生活保護を受けている人は労働をしていない人が圧倒的に多いのです。一方、最賃を受け取る人は労働をしているのです。労働をしているのにもかかわらず、労働をしていない人よりも少ない収入しか得られないというのは、理解しがたいことです。
(上掲書、p.81)
これは、政治家や労働組合の活動家なども「最賃がいかに低いか」を訴えるときにたびたび持ち出す話なので、よくお目にかかります。直観的にはエモーショナルに訴える話なので、プロパガンダとしては効果的でしょう。しかし、理屈の上ではどうでしょう。
「最低賃金は低すぎるか」というタイトルをつけましたが、ここでは一応水準の議論はしません。理屈として、橘木氏の主張には違和感があります。