入社十年間は完全年功制

住友商事が、入社十年間は昇格や賃金に差がつかずに年功的に上昇する人事制度を導入するそうです。

 住友商事は4月から、入社後十年までは同期社員の昇格や賃金に差を付けない完全年功制を導入する。チームワークを重視した人材育成や能力開発を確実に進める方策の一環。能力主義を一部修正する動きで、2007年以降の団塊の世代の大量引退を見据え、若手をじっくり育てようとする機運が企業に広がり始めている。
…新制度では新卒社員は入社11年目に一斉に管理職層の資格に昇格。その後は年功要素を撤廃し、能力のほか仕事の重要度などで資格に差がつき、降格するケースも出てくる。
 半面、いったん管理職相当の資格に就くと、従来の制度よりも大きく差がつくようにし、能力主義を徹底。「若手は年功主義、中堅は能力主義」とメリハリを利かせ、社員の能力開発とやる気を引き出す環境を整える。…
 バブル崩壊後の業績悪化時に、人件費を抑える目的で緊急避難的に成果主義を導入した企業は多い。だが今は景気の回復や業績の改善で、企業に余裕が出てきた。成果は出なくても、将来の貴重な戦力になる若手は年功序列型で一定年次まで横並びで育成するといった動きは今後も見込まれる。一律に導入の進んだ成果主義は業種や社風にあわせた制度に修正し、社内の活性化を促す局面に来ている。
(平成18年3月2日付日本経済新聞朝刊から)

評価は賞与に反映してそこでは差をつけるようなので、まったく同じということではないようです。まあ、住友商事ほどの超人気企業であれば若い頃にはそれほど能力の差はないでしょうし、毎年着実に能力を高めていく人材育成のしくみも確立しているでしょう。逆にいえば、年功的に上がる賃金に応じてきちんと能力をつけさせることができる、という自信の表れかもしれません。
管理職相当の資格に就いたあとも、「能力主義を徹底」ということなので、短期の成果を重視する「成果主義」とは異なるものと思われます。能力主義である以上は、制度的には「降格するケースも出てくる」と言っても現実にはごく例外的になるでしょう。となると、程度の差はかなりあるとしても管理職層も結果的には年功的な処遇になるのではないでしょうか。これまた逆にいえば、能力のある人を能力に応じて使いこなせるという自信があるということではないでしょうか。
考えてもみれば、若いうちはほとんど差をつけず、ある程度能力や適性のみきわめがついてから徐々に差を拡大していくというのは、まさに日本流の「遅い昇進」そのもので、そういう意味では先祖がえりしているといえるかもしれません。

ファイザー

日航のゴタゴタが話題になっていますが、そういえば、先日リストラをめぐる労使紛争を紹介したファイザーでも社長が交代したそうです。

 リストラを巡る労使対立が発端で社長が交代したファイザー(東京・渋谷)は1日、岩崎博充・新社長(63)が会見し=写真、「労使関係を改善し全社一丸の体制をつくりたい」と、融和路線を強調した。
 岩崎氏はファイザーグループに40年間勤めた生え抜きで、先月20日に社長に就いた。
 会見では、前社長が約300人の人員削減策計画を打ち出しながら、組合の反発で撤回した経緯に触れ、「コミュニケーションや手続きに反省すべき点があった」と説明。その上で「経費や人員削減だけではなく、不要施設の売却や集中購買など、各部門の無駄を省いていきたい」と述べた。
(平成18年3月2日付日本経済新聞朝刊から)

ふーむ、今度は日本人社長ということのようです。前任のセリンダー氏は新聞記事には「退任」とあるだけですが、どこかの国のファイザーに移ったのでしょうか。労使紛争がもとで退任ということなので、後任は日本の労使慣行に通じた日本人のほうが好ましいという判断だったのかもしれません。
それにしても、300人のリストラ計画は撤回されたというのですから、労組はよく頑張ったといえるでしょうが、そもそもこの計画自体が米国本社の要請によるかなりいいかげんなものだったということではないでしょうか。