審議会方式は維持されるもよう。

hamachan先生のブログから。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-5089.html

「今後の労働者派遣制度の在り方について」の諮問

 本日、厚生労働大臣から労働政策審議会に対して標記の諮問がされたとのことです。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1007-1a.pdf

>労働者派遣制度については、労働力の需給調整を図るための制度として、我が国の労働市場において一定の役割を果たす一方で、近年、日雇派遣など社会的に問題のある形態が出てきているほか、やむを得ず労働者派遣を選択する者の存在や法違反事案の顕在化などが課題となってきた。

このような状況を踏まえ、貴会における調査審議を経て、昨年11月4日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出したところであるが、同法案は、本年7月21日、衆議院の解散に伴い廃案となったところである。

同法案提出後、我が国の雇用情勢は急激に悪化し、いわゆる派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じたところである。

このため、上記の法律案において措置することとしていた事項のほか、製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律案を提出する必要が生じている。

以上を踏まえ、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第9条第1項第1号の規定に基づき、今後の労働者派遣制度の在り方について、貴会の調査審議を求める。

平成21年10月7日

厚生労働大臣 長妻 昭

今後、具体的な審議は、職業安定分科会労働力需給制度部会で行われることになります。

まずなにより、今後も公労使三者構成による審議会で労働政策の検討が行われるらしいことは極めて喜ばしいところです。
そこでどのような諮問かというと、

同法案提出後、我が国の雇用情勢は急激に悪化し、いわゆる派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じたところである。

このため、上記の法律案において措置することとしていた事項のほか、製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律案を提出する必要が生じている。

もちろんこれは、廃案になった法案の内容は維持しつつ、さらに製造業派遣や登録型派遣を禁止し、違法派遣の場合には派遣先との雇用契約を成立させるという法案を作れという答申をしろ、という意味なのでしょう。民主党マニフェストにはもう少し細々と?書いてありますが、まあだいたいそれに沿ったものを出せ、という趣旨なのだろうと思います。
もっとも、文章上では「上記の法律案において措置することとしていた事項」「についても検討を行い、改めて法律案を提出」と読めますので、廃案になった法案の内容についても再検討することを妨げるものではなさそうです。また、「製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い」というのは、検討を行えば足りるのであって、必ずしも特定の結論を予定しているわけではないのでしょうから、別段民主党マニフェストのとおりの答申をしなければならないということでもないでしょう。
実際、廃案になった法案にしても民主党マニフェストにしても、選挙を意識して場当たりに場当たりを重ねたような内容で(廃案になった法案には、情報公開や教育訓練など有意義な内容も若干は含まれていますが)、「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために」なるとは思えず、八代尚宏先生がいみじくも喝破されているように「派遣労働者のための法律ではない」(http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/02/wg/tokku/gaiyo3-4.html)と言わざるを得ないように思われます。
hamachan先生も次のように述べられていますが、私もまったく同感です。

 三者構成審議会の意味は、政党が労使の声を聞かずに自分たちだけで作ったマニフェストに縛られる必要がないということですから、きちんと原点に立ち戻った議論を期待したいと思います。

審議会だけではなく、鎌田先生が座長を務められた研究会まで立ち返って、場当たり的な政治的要請を離れて今一度「原点に立ち戻った議論」をしてほしいくらいのテーマだと思います。