なにやらあれこれと起きた1年でしたがまあなんとか無事に暮れようとしております。ということで年末恒例のこれを。11月中旬から12月上旬は特に建て込んだためこの時期のものには抜けがあると思いますがご了承を。なお例によって一著者一冊・著者五十音順となっております。さて。
さしずめThe Architectures of
Sherlock Holmes というところでしょうか。わが国を代表する
シャーロッキアンの北原尚彦氏が
一級建築士でスケッチのテキストを多数執筆されている村山隆司氏とともにホームズ正典に登場する建物の外観や間取りをイラストで再現したまことに楽しい本です。
建築士だけにホームこらこらこら、実は私も
Kindleに正典全巻が収納されている程度にはホームズ譚のファンであり、こたえられない一冊でありました。
坂本貴志『ほんとうの定年後-「小さな仕事」が日本を救う』
前著、
坂本貴志『統計で考える働き方の未来』 - 労務屋ブログ(旧「吐息の日々」)の続編という感じで、書名のとおりわが国における「定年後」のほんとうの現実を豊富な統計と事例から明らかにし、今後のありたい姿の現実的な提案として"「小さな仕事」の積み上げ経済“を提言した、長寿化・高齢化が進む現代に時宜を得た本です。実は今年定年を迎えた私にとってはさらにタ
イムリーな本であり、随所でうなずきながら読んでおりました。
瀧川裕英『くじ引きしませんか?-デモクラシーからサバイバルまで』
実は日本キャリアデザイン学会の代議員は有被選挙権者からの抽籤というまことに公平で民主的な方法で選出されています。研究者だけではなく、高校教員や大学職員、労使の実務家、官僚など多様な会員で構成されている学会の特徴を代議員会に反映すること、なるべく多くの人に学会運営に関心を持ち、関与してほしいことなどの意図によるものです。本書は今年創刊された「法と哲学新書」の一冊で、
法哲学の専門誌に掲載された特集の書籍化とのことです。「法と哲学」でありながら経済学者も複数登場しており、オリジナルはたぶん私には歯が立たなかったものと思いますが新書は読みやすく配慮されていて興味深く読みました。「法と哲学新書」のもう一冊『タバコ吸ってもいいですか』も面白かった。
選手のパフォーマンスや作戦の適否などを数値化し統計的に検証し、試合やチーム編成などに生かそうという
セイバーメトリクスの解決書です。よりよい数値化や評価方法を求める努力の蓄積や、そこからもたらされた興味深い知見(2番打者に強打者を配置とか無死一塁では
送りバントより強攻とか)が紹介されています。最近ではテレビの野球中継などでもトラックマンという計測機器を使用して投手の球速だけでなく回転数や変化量、打球の速度や角度などのデータが紹介されるようになって進歩しているなあと思うわけですが、これは「
セイバーメトリクスの革命」をもたらしているとのことです。
日本生産性本部が設立された1955年から59年までの5年間に、同本部の機関紙に掲載された生産性運動に対する賛否両論の論争が原文のまままとめられた本で、巻末には資料としてこの問題をめぐる国会質疑や『
中央公論』誌上での双方のイデオローグによる論争などが収録されています。800ページを優に超える大部で、時間のあるときに徐々に読み進めてはいるのですが実はまだ読み切れていません(笑)。結局は歴史が決着をつけたわけではありますが、社会も経済も現在とは異なる中で真剣に展開された路線対立の記録は実に読ませるものがあり、単なる資料にはとどまらない本だと思います。
もちろん(笑)通読はしておりませんが、濱口先生のこの記念碑的労作をあげないわけには参らないでしょう。Nスぺを取り上げたエントリを書く際にはちょこちょこ参照しました。
広瀬友紀『ことばと算数ーその間違いにはワケがある』
つい先日、書店で偶然に見かけてパラパラと眺めたところ、
SNSなどでときどき見かける「こどもの算数の面白い回答」の事例があげられていて関心をひかれたので気まぐれをおこして買って読んでみました。実は
言語学の本で、全面的に初めて知る内容ばかりだったのですが、とても読みやすく書かれていて面白かった。もう1,2冊読んでみようかな。
本田一成『ビヨンド!ーKDDI労働組合20年の「キセキ」』
KDD労組が
KDD、DDI、
IDOの合併にともないオープンショップの
KDDI労組となってから今日に至るまでの苦闘の歴史を非常に多数の
オルグたちのヒヤリングから描き出した一冊です。まさに
大河ドラマ、一気読みしました。
なお本書で
情報労連の杉山豊治さんが逝去されていたことを初めて知りました。
連合総研の研究会でご一緒させていただいたことはいい思い出です。ご冥福をお祈り申し上げます。
いろいろあった一年でした。良いお年をどうぞ。