中部産政研『50歳代のスタッフがイキイキと活躍できる働き方』

 (公財)中部産業・労働政策研究会様から、第8期調査研究の報告書『50歳代のスタッフがイキイキと活躍できる働き方』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。研究主査は同志社の藤本哲史先生と関西外大の古田克利先生です。
 開くと本文冒頭にいきなり朝日新聞に掲載された「働かないおじさん、妖精さん」特集の後払い賃金の模式図がそのまま引用されていて意表を突かれる(笑)わけですが、まあ時宜を得た調査テーマだということは間違いないでしょう。こうした世間の論調や、先行研究の成果なども踏まえつつ、表題にあるような働き方を探ろうという試みです。調査対象は中京地区の大手企業8社のホワイトカラー・エンジニアで全体の8割強が製造業となっています。
 結果をみると、まず全体的には、仕事に対する意識や意欲、達成感などに関する質問が多数あるわけですが、ほぼ例外なく
50歳未満マネージャー>50代マネージャー>50歳未満スタッフ>50代スタッフ
【50代スタッフについては】マネージャー経験者>非経験者
 という結果が出ています。この構造は非常に安定的で、現にマネージャーであること、マネージャー経験があることが「イキイキと働く」ために大きな意義を有することが見てとれます。いっぽうでその差は(設問によりますが)大きなものではないため、調査対象企業では世間で言われるような典型的な「働かないおじさん」問題は大きなものではないとされています。
 まあ、あえて大雑把かつ下世話にまとめてしまえば、40代マネージャーはポストを得て「前途洋々」、40代スタッフは「まだ先がある」のに対して、50代マネージャーは「一応勝ち組だけど先は見えている」、50代スタッフは「上は望めない」という状況(もちろん例外は多々ありましょうが)というところでしょうから、まあこういった結果になるのも納得いくものがあります。
 もうひとつ、個別の設問から興味深い結果をご紹介しますと、仕事の特性(協働性、裁量性、重要性…といったもの)と、50代/50歳未満・マネージャー/スタッフといった類型との関係を見てみると、

  • 50歳未満スタッフ:「仕事の困難性」(担当業務に必要とされる能力が保有能力を上回る)が他の類型と較べて最も高い
  • 50歳未満マネージャー:「仕事の協働性」「裁量性」「重要性」(成果の業績への影響度)「役割明確性」「多技能性」(さまざまな能力が求められる)が他の類型と較べて最も高い
  • 50代マネージャー:(類型中で最も高い仕事特性はない)
  • 50代スタッフ(元マネージャー):「仕事の一貫性」(最初から最後まで自分でやり切る)が他の類型と較べて最も高い
  • 50代スタッフ(マネージャー経験なし):「仕事の簡易性」(担当業務に必要とされる能力が保有能力を下回る)が他の類型と較べて最も高い

 という結果が出ています。「一貫性」というのも、現実的には多分に「雑用もすべて自分でやらなければいけない」という意味であることを考えれば、「能力の高い高年齢者に能力に見合った仕事が付与できていない」というポスト詰まり・仕事詰まりの状況にあることが明らかに見て取れる結果だろうと思います。
 まあ、限られた企業、かつ労働条件の優れた大企業が対象の調査なので、一般化することは相当に慎重であるべきだろうとは思われますが、しかし貴重な調査ではないかと思います。もうひとつ特筆すべきなのは、これは中部産政研の調査では毎回みられる特徴なのですが、自由記述欄の回答が非常に多いことがあげられます。やはり調査対象との関係で多様性は高くないのではありますが、働き方や仕事、あるいは生活との関係についても深く考えていることがうかがわれる内容で、かなり率直な本音もあり、失礼ながら新聞記事より参考になるのではないかなどとも思いました。