大竹文雄『行動経済学の使い方』

 大阪大学大竹文雄先生から、最新著『行動経済学の使い方』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 大竹先生といえば中公新書という感じだったと思うのですが、本書は岩波新書です。行動経済学、特にナッジの解説書/啓発書というおもむきの本で、まずは行動経済学全般の簡単な説明があり、次にナッジについての解説、続いてその具体的な応用事例が幅広く紹介されています。労働分野に優れた業績の多い大竹先生らしく、昨今話題の「働き方改革」関連も含めて職場・就労にまつわる事例が豊富なほか、医療や公共政策についても紙幅が割かれています。
 大竹先生の本の例にもれず、本書もたいへん身近で親しみやすい題材を多く取り上げ、平明な記述でわかりやすく解説されており、現実の仕事や生活に役に立つのではないかと感じる人も多いのではないかと思います。一方で、ナッジは効果的であるだけに好ましくない使われ方をすること(セイラーのいう”スラッジ”)ことへの懸念もあり、正直なところ自由と多様性が好きな私もいささかの警戒感がないではありません(本書でもそうした懸念に対してコメントされてはいます)。とはいえ、だから使わないというのはまさしく不合理な発想であり、不適切な使われ方をしないように・されたらわかるようにしっかり勉強し情報を集めることが大事なのでしょう。そういう意味でも、まずはナッジを知るための第一歩として好適な本だと思います。