高仲幸雄『同一労働同一賃金Q&A』/関島康雄『改訂チームビルディングの技術』

 (一社)経団連事業サービスの讃井暢子さんから、経団連出版の最近刊2冊、高仲幸雄『同一労働同一賃金Q&A-ガイドライン判例から読み解く』と、関島康雄『改訂チームビルディング-みんなを本気にさせるマネジメントの基本18』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

同一労働同一賃金Q&A-ガイドライン・判例から読み解く

同一労働同一賃金Q&A-ガイドライン・判例から読み解く

 まず前者の高仲著は、来年以降順次施行されるいわゆる「同一労働同一賃金」の経営法曹による解説書です。これについては繰り返し書いているとおり政策として極めて筋悪であり、ガイドラインも実務で使うには不明確な部分が多すぎ、裁判例もあまり多くない上に個別にかなり振れていて、ようやく昨年ハマキョウレックスと長澤運輸の最高裁判決が出てなんとなく目鼻がつき始めたかなという状況であり、まあ実務家の疑問や不安のあれこれに歯切れよく答えるのは無理なご注文としたものでしょう。
 そんな中で、この本は現状得られる限りの情報を駆使して主要なポイントをQ&A形式で網羅的に解説しており、その努力と苦心には感服せざるを得ません。一方で、地裁・高裁判決に対しては明確に疑義を呈している部分も何カ所もあり、また「今後の動向に注視が必要」という趣旨の記述も散見され、いずれ時間をかけながら整理されていくのでしょうが、やはり「同一労働同一賃金」のやり方はいかにも拙速だねえと再認識したところです。
 なお経団連出版の類書と同様、後半部分は資料集となっていて法令やガイドラインなどが収載されているのですが、最後の部分では判例・裁判例を分解して住宅手当、家族手当、精勤手当、…、割増賃金、賞与…などに細かく分類して整理しており、なかなか有益かもしれません。
 後者の関島著は2015年に刊行されたものの改訂版ということで、マネージャーを対象とした職場運営の指南書です。文章が平易で分量も多くないので読みやすく、人により職場により、なんらかのヒントが得られるのではないかと思います。