中部産政研第6期調査研究報告書『一人ひとりが力を発揮するための職場風土と職場環境』

(公財)中部産業・労働政策研究会様から、第6期調査研究の報告書をお送りいただきました。ありがとうございます。今回の研究主査は今野浩一郎先生と上野隆之先生で、まだ中部産政研のウェブサイトにはアップされていないようですが、まもなく掲載されるでしょう。
http://www.sanseiken.or.jp/research/
内容は表題のとおりなのですが、ホワイトカラーの「この仕事は自分の仕事だと考える=当事者意識」と「この仕事は自分の仕事として取り組む=当事者行動」に着眼し、これらが仕事の成果と相関することを確認した上で、本人の意識や人事管理との関係を検証しています。
非常に多岐にわたって「なるほど、そうだろうな」という実感に合う結果が多く導き出されていますが、いくつか目についたところをつまみ食いでご紹介させていただくと、まだ経験の浅い若手は全年齢と較べて相関関係が出にくい傾向が明らかに見られるのですが、本人要因「責任のある仕事は任されたくない」についてはは全年齢では当事者意識/行動と有意な相関がない一方、若手ではかなり大きな負の相関を示しています。意欲ある若手は責任ある仕事を任せてほしいと考えていることの現れでしょう。「規模が大きな仕事」も全年齢では相関がありませんが若手では当事者意識とやはり強く相関しています。人事管理においては全年齢・若手ともに「挑戦的な仕事を与える」が当事者意識/行動と強く相関しているのとも整合的で、能力・キャリア形成に有意義な「少しストレッチした仕事」の付与の重要性がうかがわれます(そしてそれが上位になるほど稀少な資源であるところに人事管理の難しさがあるわけですが)。
人事管理で面白いのが「ほめてくれる」が全年齢・若手とも有意でないのに対し、「叱ってくれる」は全年齢で有意にプラスの相関を示しています(若手では有意ではない)。このあたり一般的な傾向がどうなのかよく知らないのですが「ほめて伸ばす」のは子どもだけという話なのか、ほめられるのは当たり前であって(ある程度経験を積むと)叱られるのをむしろ期待の表現として歓迎するという話なのか…。
「人事考課は公正である」については、全年齢で当事者意識と、若手で当事者行動と有意に負の相関を示していて、まあこれもやる気のある人ほど評価に不満を感じやすいということなのでしょうか。
もうひとつ、「仕事の集中に配慮する」が全年齢で当事者行動と有意にマイナス相関していて、これも意欲の高い人は仕事が増えることを厭わないのだと考えれば納得いくものがあります。これまた巷間「働き方改革」「長時間労働の抑制」でメンバー間の負荷の平準化がマネージャーの大事な仕事とか言われているわけですが、メンバーとしてみたらそんなの望んでないという話なのかもしれません。もちろん程度問題で過度な集中は困るでしょうし、なにより見返りがあるのならという話でもあるでしょうが…。
ということでなかなか面白い調査結果です。楽しみに勉強させていただきたいと思います。