日本労働研究雑誌688号

(独)労働政策研究・研修機構様から、日本労働研究雑誌11月号(通巻688号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/11/index.html

今回のメインは恒例のディアローグ「労働判例この1年の争点」ですが、私としてはなんといっても特集(ミニ特集とのことですが)「スポーツと労働」が気になるところです。実は同誌は2005年4月号でも「スポーツと労働」を特集しており(http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/04/index.html)、このときは4月号ということで短いエッセイが中心の編集でしたが、今回は本格的な論文集になっています。
中でも注目されるのがわが国スポーツ社会学の泰斗であり最高権威である佐伯年詩雄先生が「企業スポーツの現在を考える」という論文を寄せられているところで、日本労働研究雑誌の学際性が際立っています。私も若干関与した経団連による実態調査の結果などもふまえ、これからの企業スポーツの意義・可能性として「組織力開発」と「人材育成・組織のダイバーシティによる活性化」をあげておられます。「企業スポーツには、自らが組織力開発において重要な要素である(1)ダイバーシティを統合化する「インクルージョン」、(2)参加の喜びを感じる「エンゲージメント」、(3)相互理解を推進する「コミュニケーション」があふれているからである。企業スポーツが、こうした要素を「状況従属的」ではなく「政策戦略的」に活用し、勝利からも敗北からも学ぶ「学習する組織」モデルを体現するとき、日本企業が難題とする組織力開発という重要な経営課題に応え得る貴重な経営資源としての意義を明確に示すことができよう」との結論は、長年(と言っていいと思う)企業スポーツに関わってきた私にも強く響くものです。
続く中村英仁先生の論文は2014年に先生が笹川スポーツ財団で実施した調査(この結果は佐伯先生も参照しておられます)にもとづく企業スポーツ選手のセカンドキャリアについての研究で、私が同誌の2007年7月号(これは福利厚生の特集でした)に載せた「企業スポーツと人事労務管理」も参照いただいております(ありがとうございます)。続く中澤篤史先生の論文は「部活動顧問教師の労働問題」という昨今話題のきわめて時宜を得たものであり、さらに川井圭司先生の論文「アスリートの組織化」は、スポーツ選手とクラブ(経営者)との集団的関係に関するものです。川井先生は2005年4月号の特集でもMLBにおけるプロ選手の法的について紹介しておられます(http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/04/pdf/017-019.pdf)。Bリーグが2シーズンめを迎え、卓球のTリーグも発足が間近となる中、やはり時宜を得たテーマと言えそうです。