日本労働法学会誌130号

日本労働法学会誌130号が到着しました。今回は5月に龍谷大学で開催された第133回大会の内容が中心です。
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03879-1
手弁当の社会人会員としては首都圏開催以外の大会に参加することは困難で、今回も菅野和夫先生の特別講演や、労働法学会では珍しい企業実務家の報告(資生堂の山極清子さん)を含む野川忍先生の小シンポなど興味深い内容が多かったのですが参加がかなわず残念でした。先日の134回大会もさすがに小樽までは行けなかったなあ。
さて菅野先生のご講演についてですが、JILPTの理事長という要職にあるお立場から、労働政策の現状と今後の展望についてお話しされたようです。前段では労働政策研究における各分野の学際的な協働の重要性と労働法学の役割について述べられ、後段ではJILPTが進めている日本的雇用システムの歴史と現状、変化と行方を探るプロジェクト研究について紹介されています。それを通じて、日本的雇用システムは「長期雇用慣行は保持しつつ中途採用併用・職責役割重視・早期選抜併用」「正社員の多様化と非正規労働者の統合」「OJT・面倒見などの職場集団機能の低下」が進んでおり、今後の展望としては「マクロの観点からの(政府主導による)改革が望まれることもありうる」「急激な変革は困難だが必要な修正はなされる」「現状を客観的に見据えた上での現場労使の対話が重要」とまとめられ、最後に労働法学の役割として「腰を据えた基礎研究(学際的な共同研究)こそが重要」と述べられています。さすがと申し上げるべきか、まことに適切な指摘であるようにも思われます。
各小シンポについては追い追い勉強させていただくとして、大会とは別の「回顧と展望」に大石玄先生が登場しておられるのを懐かしく拝見しました。福原学園事件の評釈で、研究者のキャリアの問題を指摘されているのは興味深く感じました。また、最後には花見忠先生がボブ・ハップルとロジェ・ブランパンへの追悼文を寄せておられ、偉大な先達の功績にあらためて思いを致すことができます。