海老原嗣生・飯田泰之『経済ってこうなってるんだ教室』

雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんから、最近著『経済ってこうなってるんだ教室』をご恵投いただきました。ありがとうございます。海老原さんは精力的に著書を出されていますね。

カバーや帯には「小学校の算数と国語の力があればわかる経済・金融の超入門書!」「日経新聞は読んでいるけどわからないという人、もう大丈夫です」との惹句が並んでいますが、経済というよりは1時間でわかるアベノミクスの解説書という趣です。アベノミクスの背景となっている金利、物価、為替やそれらの企業行動や企業業績などに与える影響といったものを平易に説明してアベノミクスへの理解を促すと同時に、最近の中国経済やトランポノミクス、さらにはシムズ理論まで取り上げるという行き届きぶりです。
ということでまさに最近の日経新聞がわかるようにするということに特化した本という印象があり、専門誌の編集にも携わる海老原さんらしく、ビジネス誌の特集の5回分くらいを一貫した流れで整理した本という印象もあり…という本なのですが、あとがきで成り立ちについて書かれているのを読んで腑に落ちました。これはリクルートの営業マン向けの研修をまとめた本なのですね*1リクルートの営業となると相当にハードなBtoBのビジネスだろうと思われ、経済や景気についてクライアントと議論する場面も多いでしょうし、消費増税をめぐる若干の陰謀論?めいた話題も営業トークには有用でしょう。なるほどそういう場面で特に役立つ本といえそうです。
なお多少アドバンスした内容は経済学者の飯田泰之先生(アベノミクスの理論的支柱のおひとりでもある)が担当しておられます。飯田先生は「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」については「実はまだ人手不足ではない、高齢者や女性に比較的低賃金での供給余力がある」「いずれ余力がなくなれば賃金も上がるし設備投資も進む」とお考えのようですね。

*1:となると「小学生の算数と国語」は少々失礼な感はあります(笑)し、実際難関中学を受験する小学生でも難しいのではないかという内容もありますが。