島貫智行『派遣労働という働き方』

一橋大学の島貫智行先生から、ご著書『派遣労働という働き方−市場と組織の間隙』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

派遣労働という働き方 -- 市場と組織の間隙

派遣労働という働き方 -- 市場と組織の間隙

派遣労働はともすれば善悪の極論や、結論ありきの印象論で語られがちです。この本は、そんな派遣労働について、派遣元・派遣先・派遣労働者三者雇用関係に着目し、その三者に対する入念な聞き取り調査をベースに、アンケート調査や公的統計の再分析などを組み合わせて、その多様な実情を明らかにしています。特に第2部、第3部でふんだんに紹介されているヒヤリング事例はリアリティがあり、なにかと紛糾しがちな派遣労働をめぐる政策論の基礎資料として有益なものではないかと思います。派遣元と派遣労働者、派遣元と派遣先の長期的関係が重要という政策的含意も非常に納得のいくものであり、「派遣の禁止ではなく常用化促進」という私の持論をサポートしていただけるもので心強く感じました。
あとまあこれは余計なことかもしれませんが昨今流行の(笑)同一労働同一賃金についてはほとんど触れられておらず(たぶん語として一回出てくるだけ)、まあ実態をふまえた堅実な議論をすれば当然そうなると思うのですが、しかし立派な姿勢だと思いました。