働き方改革実行計画(2)

ということで3月31日に書き始めた働き方改革実行計画へのコメントを続けたいと思います。
まず、(案)が取れたものがこちらにあります(工程表はついてない)。
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf
さて前回は上限規制のところで終わっていますが、インターバル規制については休息確保の努力義務と労使をまじえた検討会の設置、中小企業への助成などが記されており、まあソフトローを活用しながら労使の努力を促すというのは好ましい方向性だと思います。それにより世間の大勢としてインターバル規制が普及すれば法制化を考えればよいといういつもの話です。
適用除外についてはいろいろ議論がありましたが、運輸や建設についてはまあ時間をかけて関係者全員で解決していきましょうというところでしょうか。それなりに現実的なところにおさまったのだろうと思います。(案)の方についている工程表を見ると、ここだけは他のページと較べて格段に詳細なスケジュール感が示されていますので、業界と行政ですでにかなり詰められているのかもしれません。
面白いのは一部でも話題になっていますが医師について「時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する」という内容が盛り込まれたことで、どうやら日本医師会ロビー活動が結実したようです。実現会議の議論では実態を踏まえた適用除外を求める意見があったと思うのですが実現したのはこれのみのようであれだなやはり医師会の政治力はすごいんだなこらこらこら。
一方で「新技術、新商品等の研究開発の業務」については、「医師による面接指導、代替休暇の付与など実効性のある健康確保措置を課すことを前提に、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とする」という消極的な姿勢にとどまっているのですが、これはまあ別途労基法のほうで手当てされることになっているからということのようで、後の方に「高度プロフェッショナル制度の創設や企画業務型裁量労働制の見直しなどの多様で柔軟な働き方の実現に関する法改正…ついて、国会での早期成立を図る」と書かれています。これについてはフューチャー(株)の金丸恭文氏が資料を提出して(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai10/siryou6.pdf)「罰則付き時間外労働の上限規制の導入は、高度プロフェッショナル制度裁量労働制の拡充の3点セットを前提に実行されるものとして理解している」と「食い逃げは許さないぞ」という姿勢を示されているのが目をひきます。金丸氏はさらに「今回の働き方改革に伴う労働法制改革は、技術革新等がもたらす変化対応に制約とならないよう、政府全体および労政審においても過去と現在に固執することなく未来への洞察を怠らないよう要請する」とも書いておられ、まあ例の電通の一件などもあり政治的にはどうしても安全サイドに逃げたいという誘惑が働くというのもわからなくはありませんが、しかしイノベーションの担い手たちが存分に能力を発揮できるように配慮してほしいものだとは強く思います。
あと「企業本社への監督指導等の強化」についてはまあそれがいいたあ言いませんが従来からやると言っていたことなので仕方ないかなという感じです。これについてはこの話が持ち上がったときに書いた(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150515#p1http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150520#p2)ので繰り返しません。
さて「5.柔軟な働き方がしやすい環境整備」以降は政府提出資料などでは触れられていたものの突っ込んだ議論はされていない内容がほとんどなのですが、まずテレワークに関するこの記載が目を引きます。

 具体的には、在宅勤務形態だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務を、雇用型テレワーク普及に向けた活用方法として追加する。
 テレワークの導入に当たっては、労働時間の管理を適切に行うことが必要であるが、育児や介護などで仕事を中抜けする場合の労働時間の取扱や、半日だけテレワークする際の移動時間の取扱方法が明らかにされていない。このため、企業がテレワークの導入に躊躇することがないよう、フレックスタイム制や通常の労働時間制度における中抜け時間や移動時間の取扱や、事業場外みなし労働時間制度を活用できる条件などを具体的に整理するなど、その活用方法について、働く実態に合わせて明確化する。
 また、長時間労働を防止するため、深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制等の対策例を推奨する。

サテライト勤務やモバイル勤務を在宅勤務とまったく一緒くたにしていいのかというのは若干疑問も残るところで、まあいずれも上司や同僚の目がなく職場で働くよりは負担が軽いという点では共通ですが、やはり自宅で働くのとサテライトオフィス(これは同僚ならいる可能性もある)やスターバックスとかで働くのとでは負担の程度が異なり、必要な保護の程度も異なってくるのではないかと思うからです。そのうえで、労働時間の取り扱いや事業場外みなしの適用について具体的に整理するとされているのは歓迎したいと思います。とりわけ現時点では「ポケットベルを持たせたらまずダメ」という使えない制度に成り下がっている事業場外みなしの適用が大幅に拡大されればテレワークの普及は相当に加速することが期待されると思われます。これについては工程表のほうにはより具体的に「携帯電話を持っていても事業場外みなし労働時間制を活用できる条件…の明確化」と書かれていますが、使いやすい制度にしてほしいと思います。
なおこれについても工程表のほうには「国家公務員について、2020年度までに、(1)必要な者が必要な時にテレワーク勤務を本格的に活用できるようにするための計画的な環境整備を行い、(2)リモートアクセス機能の全省での導入を行う」と官自ら範を垂れる姿勢を示しており、まあご自身でやってみて使いやすい制度を経験的に考えていただけるならそれもよろしいかと思うところです。
さて今日はあまり書けていませんが時間切れのため明日以降に続きます。