JILPT労働政策フォーラム「多様化する仕事と働き方に対応したキャリア教育」(3)

もう少しだけ残っているので書きます。実践報告について、特に大学と高校の取り組みは多大なご苦労がしのばれるもので、その勤勉さにはまことに頭が下がるものがあったのですが、それに協力する企業というのも立派なものだと思いました。文部科学省が展開している中学生の職業体験は、実施率こそ公立校の9割近くにまで達していますが、4割が1日、3割は2日という短期にとどまっており、その最大の課題は受け入れ企業の確保といわれています。24日のエントリでも書きましたが栃木県下のインターンシップ参加率は1割に満たないということで、まあ全体の6割以上を占める普通科ではインターンシップを行わないのがむしろ普通であるとしてもやはり低率であり、その理由もおそらくは受け入れ先確保の困難さではないかと思われます。
まあそれもむべなるかなで、受け入れるとなればそれなりの意味のある仕事を準備する必要がありますし、仕事を教えたり、制服や作業服を容易したり、危険のないよう配慮したりしなければなりませんし、万一の事故というリスクもあります。インターンシップは無料のアルバイトとかいう勘違いも一部にはあるようですが、たとえば(これは中学生の職場体験ですが)東京都の受け入れ事業者向けのマニュアル(http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/seisyounen/pdf/02_shokubataiken/27guideline.pdf)とかを読んでみると、いやこれ本当にタダでやるの?という話ではなかろうかと思います。これを社会奉仕として実践していただける企業というのはまことにありがたい存在と申し上げるべきでしょう。
こうした状況の中、宇都宮商高では2年次に全員が5日間のインターンシップを実施しているそうですが、同高の全日制の定員は280人であり、その受け入れ企業の確保には相当に苦労があったのではないかと思われます。県庁所在地に立地する創立100年を超える伝統ある商業高校ということで地元企業で活躍する卒業生が多いものと思われ、他校に較べればまだ協力を得られやすい環境はあったのかもしれませんが、それでも容易ではなかったでしょう。そして、インターンシップがフォーラム当日に報告のあったような大きな成果を上げているのだとすれば、それはすなわち受け入れ企業の人材育成力だということにならないでしょうか。同高のウェブサイトでインターンシップのようすが紹介されていますが(http://www.tochigi-edu.ed.jp/utsunomiyashogyo/nc2/index.php?key=joq51mgkw-287)、受け入れ先はかなり多様なようであり、また小規模な組織もかなり含まれているものと思われるわけですが、そういう現場の人材育成力というのは実はすばらしいものがあるのでしょう(そうはいっても当たり外れは大きいような気はしますが)。
企業の実践報告では、両社ともに現状の定着状況は良好なようですが、やはり過去は相当ご苦労されたのだろうなという印象は持ちました。藤井産業の大久保部長は前回書いたとおり「3年、5年の視野で」と繰り返されましたが、これはおそらく1年、2年で退職していった若者に対する「せめて3年いてくれれば続いただろうに…」という気持ちの反映ではないかと邪推したわけです(申し訳ありません)。それでもなお大久保部長は「長期雇用、雇用保障は大切にすべきだ」とも発言されていて、月並みですがやはり人材を大切にする会社なのだろうなあと思いました。まあ、そういう企業だからこのフォーラムに登壇するのでしょうが…。
ということでたいへん充実したフォーラムで、フォーラムの時間と往復の時間がちょうど同じくらいでしたが、はるばる出かけた甲斐がありました。宇都宮ぎょうざも美味でしたし、東武電車を使えば浅草−東武宇都宮は往復2400円でそれほど高くもないですし。また行こう。