日本労働研究雑誌1月号

(独)労働政策研究・研修機構様から、日本労働研究雑誌1月号(通巻678号)をお送りいだだきました。いつもありがとうございます。今年の表紙色は明るい緑ですね。

今回の特集は「フランチャイズにおける労働問題」ですが、フランチャイズといえば昨年末にこんなニュースが流れて関係者の耳目を集めたこともあり、たいへん時宜にかなった企画と申せそうです。

 大手コンビニエンスストアファミリーマート」のフランチャイズ(FC)加盟店で2013年、勤務中に事故死した男性従業員(当時62歳)の遺族が、長時間労働による過労が原因として、同社とFC店経営者に約5800万円の損害賠償を求めた訴訟が、大阪地裁で和解した。
 同社と経営者が連帯して解決金4300万円を支払う。本部企業が、直接の雇用関係がないFC店従業員の過労死に対する支払いに応じるのは極めて異例だ。…
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161230-OYT1T50029.html

フランチャイズにおける「労働問題」の特集なので、労働条件や労働者性が関心の中心であり、また数の多さや労働条件の問題などからコンビニエンスストアがやはり注目されているようです。
ただ、コンビニにおける労働条件(店長にせよ(アルバイト)店員にせよ)については経営問題、特に価格設定の問題が大きいのではないかという印象はあり、今号でも土屋論文が経営問題を論じる中で見切り販売の問題を取り上げています。さらに進めれば、低賃金も長時間労働も価値に見合った価格で販売できていないからという面は相当にあるのではないかと思われ、それは結局価値にふさわしい高い価格で購入しようとしない消費者の問題でありましょう。
それが過当競争によるものであるとすれば、労働時間の上限規制や最低賃金の引き上げ、深夜業割増の引き上げといった方法で過剰な店舗を淘汰していくことも考えられるでしょうが、それはやはり橋本論文でも論じられているように経営者店長の保護について困難な課題があります。となると、営業時間規制とか、出店規制とかを考えることになるのでしょうか。いずれにしても消費者は過当競争から得ていた利益の縮小を余儀なくされるわけですが…。
なおこのファミリーマート加盟店の事件は「2以上の事業場における労働時間の通算」にも該当しており、この例では同一使用者の複数事業場での兼職でしたので疑問の余地なく通算されたわけですが、これが仮に異なる使用者の事業場で兼職しており、それぞれの事業場における労働時間は特段問題になるレベルでなかった場合(特に同じファミリーマートの異なるフランチャイズ店での兼職だった場合)、はたしてどのような解決・救済になるのか、なかなか難しい問題になりそうです。