壮絶すぎる「出世競争」

現代ビジネスの「部長、役員経験者が明かす!メガバンクの壮絶すぎる「出世競争」 これぞ究極のサラリーマン社会」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50461)という記事に対する感想のご要望をいただきました。
ということで以下4コママンガ風の感想要約です(笑)
https://twitter.com/roumuya/status/818743008606633984
https://twitter.com/roumuya/status/818743515664424960
https://twitter.com/roumuya/status/818743780094263296
https://twitter.com/roumuya/status/818801964335013893
さてそれはそれとしてまあ正直現代だしな(失礼)という感は相当にあり、もちろん私はメガバンクの内部事情は知らないので判断はできないのですが、かなり誇張や脚色が入っているのではないかという印象はあります。ただまあそれなりになかの人に取材をかけて書かれてもいるようであって話半分で読んでみる価値はあろうかとも思い、また昨日のエントリとの関連性も多少はあるので、ここで取り上げることにしました。ちなみにtwitterとかはてぶとかFBとかあれこれ探してみたものの関係者からの反応は見当たらず、まあそらそうかな。
さて私の感想ということですが、さすがにここまで極端な実態というのはありえないのではないかと思いますが、しかし類似の話がまったくないこともなかろうとも思います。
昨日も触れましたが(まあしょっちゅう書いているわけだが)、日本の大企業では大卒総合職というのは基本的に全員が幹部候補生であって、記事にもあるとおり(本当かどうか知らないが、以下同じ)「同期1000人のうち、役員になれるのはたったの10人」という過酷な競争、4年に1人の社長を頂点とした一大トーナメント人事が展開されているわけです。その中でも、この記事は1敗失格の純度の高い(?)トーナメントを描いていますが、通常はまあ敗者復活戦もそれなりに準備されているのが普通でしょう(競馬の勝ち抜け制のほうがむしろ近いかも)。まあこのあたりは企業の人事管理のポリシーの問題でしょう。
とりわけメガバンクともなれば、新卒労働市場の中でも上澄みのさらに上澄みの、高い潜在力を持つ人たちを採用しているわけですから、基本的に全員きわめて優秀であり、そういう人たちを「同期1000人のうち、役員になれるのはたったの10人」というふるいにかけていくとなると、なかなか敗者復活の機会もつくりにくいのかもしれません。
また、やはり記事にあるように、入社7年めで2人に1人の選抜であれば、ボーダーラインを除けば相当割合は「国立大卒で英語もペラペラ、そのうえ営業成績も抜群。中堅私大卒で体力だけが自慢の私」など納得せざるを得ない評価で選抜することも可能でしょうが、より上位の資格・役職になるほどに、それまでの選抜を勝ち抜いてきた優秀な人揃いですから、そうそう大きな差のあろうはずもありません。
となると、どうしたって業績や実力だけでは判断できないという場面は多くなってくるはずで、結局のところはなにかで減点してふるい落とすという話になるのかもしれませんし、その裏返しとしての「目立ったもの勝ち」もあるのでしょうし、それこそ(本当かどうか知らないが)学閥とか派閥とか、「覚えがめでたい」とかいったことで決まってくるということもあり得るのでしょう。まあ、正味の話としては、こうした激しい競争を戦いつつ、さらに重責も担わなければならないという立場の人であれば、キーとなる部下には信頼できる人材を置きたいと思うのはむしろ自然であり、またそのほうが生産性も高いのではないかと思われますから、学閥やら派閥やらがそういう信頼感につながるのであればそれが必ず悪いということでもないだろうと思います(まあ歪んでいるなとは思いますし、もちろん人事担当者には「そうではない」という矜持を持ってほしいとは思うわけですが)。メガバンクはいずれも合併会社であるという事情も考慮すべきでしょう。
そこでそういう事情だとすれば問題は敗者へのケアだろうとは思うわけで、まあある程度の段階で勝ち組と負け組が分かれるというのはほとんどの企業でそうではないかと思うわけですが、一般的な対応としては前述のように敗者復活のチャンスは残しておき(結果的に復活するかどうかは別問題)、またあまり早い段階では勝ち負けを明示的には示さないというものになるのではないかと思います。まあそれがフェアかどうかというのは議論があると思いますが、労使で時間をかけて協議検討してそれがいいということになったのであればそれは尊重されるべきなのでしょう。
逆にいえば、敗者復活の機会のない不可逆的な選抜をしたのであれば、それは本人に明示しなければフェアとはいえそうにありませんし、明示することで転職などに活路を求めるという選択を可能としていくという考え方もありますので、記事のとおりだとすれば、昇進の有無という形で明示するメガバンクのやり方にも合理性はありそうです。
また、しょせんそういうあいまいな基準で差をつけているのであれば賃金などであまり大きな差はつけないとか、それなりの水準は維持するとか、よほどのことがない限り下げるまでのことはしないといった配慮は必要であり、その点もまあメガバンクの水準がそれなりに維持されるならまずまず配慮されていると考えていいのではないでしょうか。記事は「最終的な「年収格差」は4倍以上……。」とか鬼の首を取ったように書いていますが、まあ社長と比べるのはアコギとしても役員まで上り詰めた人と定年まで係長止まりで再雇用された人(再雇用で大幅に賃金が下がることに注意)とで年収格差が4倍というのはまあ普通じゃないかなあ。
ということで最後にまた繰り返しますが実際のところがどうかは私にはわからず、とりわけ敗者復活しなかった人だけが取材されているのではないかという疑念は払拭できないわけですが、まあ話半分に読んでも、メガバンクの労使だって真摯に考えているはずであって、それなりにそうなる事情というのがあるのではないかと思いました。