「社員をうつ病に罹患させる方法」の話

なんか愛知県の社労士さんのブログが炎上しているということで、読者の方から感想を求められましたので少し書きます。実は話を聞きつけて見に行ったところ閉鎖中で読むことができず、そのまま忘れていたのですが、読者の方からはあわせて魚拓のアドレスもお知らせいただいたいので読んでみました(およそおすすめできるものではないのでリンクははりません)。。
とはいえ感想と言われても論外というか言語道断というか、読むほどに辟易してまともにコメントする気にもならないシロモノということでまあ大方の皆様方と同じです。社労士さんというのも全国で40,000人いらっしゃるそうで、中にはおかしなのもいるということでしょうかねえ。最初は極論を吐いてマッチョなイメージを作ろうという作戦なのかなあなどと思っていたのですが、しかしこのブログは今年の4月にスタートしているところ後の方になればなるほどエスカレートしており、同時に論調の破綻や文章の拙劣さもどんどんひどくなっていますので、どうやらこの方ご自身の精神状態が悪化しているのではないかと邪推することしきり。税理士の仕事もされているようですしDVD教材に出演するなど手広くやっておられるようなのですが、経営の実情は火の車で追い詰められているのではないかなあ。
ただまあ強く思ったのは多数の良心的な社労士さんにはお気の毒だということです。社労士さんというのも割合立場がはっきり分かれるお仕事で、「私労働者の味方です」という社労士さんは一定割合いてたいへん立派なことだと思いますし、テレビで「社労士の仕事は明るい職場づくりのお手伝いです」とか言っている社労士さんもいる(まあそれも立派だ)わけですが、しかし大半の社労士さんはクライアントさんからの「勤怠不良、成績不良の甚だしい従業員に苦慮しています」といった相談にも誠実に対応しているのではないかと思うわけで、そういう良心的な社労士さんからしてみれば「あんなのと一緒にしてくれるな」と憤っておられるのではないかと思うわけです。
というのも、就業規則に適切に服務規律や懲戒規定をおき、勤怠不良や非違行為などがあればそれを適用して、まずは書面での警告指導や始末書の提出などを実施し、さらに重なれば減給や出勤停止などの処分を行い、粘り強く指導や警告を繰り返しながら、それでも繰り返すようであれば退職を勧奨するというのは、およそ労務管理の中でももっとも神経をすり減らす、困難な仕事ではありますが、それ自体はまさに「普通の」社労士さんの指導するところだろうと思われるからです。で、大多数の良心的な社労士さんは、それをなるべく本人の(しぶしぶながらの)納得がそれなりに得られ、紛争を招かないように、慎重に、目立たぬように解決していけるようクライアントを指導するわけです。そこに専門家としての苦心があるのだろうと思うわけで、その一番難しいところで、パワハラして降格して減給すれば簡単に辞めますよとかうつ病に追い込んで休職は2か月にして解雇すればいいんですよとかいう無茶苦茶を同業者に書かれたんじゃまあたまらないだろうなと、余計なお世話ながら同情にたえないなあと思うわけです。
あとまあもう一つ思ったのは、hamachan先生のご著書にもあるように、中小企業ではそうした勤怠不良、成績不良の甚だしい従業員というのは社労士さんに相談するまでもなく解雇しているという実態もあるわけで(というかそれほどの非違がなくても解雇が行われている実態もあるわけで)、そもそもそこがそれほどご商売になるものかとも思うわけです。つまり、この手のものが出てくる背景のひとつには一部の論者が「日本では倒産寸前まで解雇は絶対にできない」などといったウソを拡散しているということがあるのではないかなあと、まあそんなことも思った。もちろん紛争防止のために専門家の手を借りることはいいことだと思いますが。