小池和男『戦後労働史からみた賃金』

小池和男先生から、ご著書『戦後労働史からみた賃金−海外日本企業が生き抜く賃金とは』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

戦後労働史からみた賃金

戦後労働史からみた賃金

米国のサラリーの歴史(一部英・豪も含む)から説き起こし、続けて戦後わが国の賃金体系を事実上主導した金子美雄の賃金論を紹介します。その最重要のポイントは欧米であればホワイトカラーが担う仕事の一部をわが国ではブルーカラーが担っており、その技能形成に有利なのが職能給であったという「ブルーカラーのホワイトカラー化」であり、その観点から、電算型賃金から日経連『能力主義管理』への流れ、なぜ職務給ではなく職能給が普及したか、成果主義はなぜ失敗したか、などがあざやかに紐解かれます。そした最後に日本企業の賃金、サラリー方式が海外でも十分に有効であり、日本企業が競争を生き抜き勝ち抜く上で不可欠との主張が展開されます。
もちろんそれにも課題はあり、各社の人事担当者が苦心を重ねているところだろうと思いますが(他人事)、そこはあえて言及せずに日本の賃金の良さや強みを強調されたのでしょう。この本でも課題や問題点に向き合うときに誤った既成概念や通説にとらわれてしまうことの危険が指摘されていますが、たしかにそれで良さや強みを見失うことは避けるべきでしょう。とりわけ、当分は課題が表面化しそうにない・それまでに対処の可能性のある海外においてはそうかもしれません。