みちのく銀行、継続雇用を70歳に延長

今朝の日経新聞で小さく報じられていました。

 みちのく銀行は4月から、行員の定年後の継続雇用期限を65歳から70歳に延長する「キャリア70プラン」を導入した。少子化で新卒採用が難しくなると予想される中、豊富な知識や経験、人脈を持つシニア行員がより長期間活躍できるようにする。65歳の誕生月の月末まで5年間、継続雇用しているのを、70歳到達後の年度末まで5年超引き上げる。嘱託・パート職員の雇用期限も60歳から70歳に延ばす。
平成27年4月13日付日本経済新聞朝刊から)

みちのく銀行のウェブサイトにはニュースリリースなどは掲載されておらず、細部については(全員なのか一部なのか、労働条件はどうなるのかなど)わからないのですが、まあ先進事例と言っていいのでしょう。
それはそれとしてこのブログを読まれている方であればこの話にはなんらかの感慨めいたものがある人も多いだろうと思います。なぜかといえば申し上げるまでもなく、労働関係者にとってみちのく銀行といえばなによりみちのく銀行事件(最一小判平12.9.7)であり、これが高年齢者雇用をめぐる事件だったからです。
この最高裁判決が出たときには私もすでにバリバリの労務担当者でしたが、これについてはその3年前に第四銀行事件の最高裁判決(最二小判平9.2.28)で原告が敗訴していたことや、行員4分の3を組織する多数派労組が同意しており、高裁でも原告敗訴の判決が出ていたことなどがあって、少し意外に思った記憶があります。朝日新聞はこの判決に大喜びして社説でも取り上げていましたが。
さてこの2判決は就業規則の不利益変更に関する最重要判例とされており、JILPTのウェブサイトでもこの2例を並べて解説されています(http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/069.htmlhttp://www.jil.go.jp/rodoqa/02_chingin/02-Q04.html)し、hamachan先生もたしかご著書『日本の雇用と中高年』で解説されていたと記憶しています(すみませんいま手元に当該書がないので勘違いだったらご容赦ください)。この2事件の判決が分かれたのは、上記リンク先にもあるとおり、第四銀行の場合は55歳から60歳への定年延長にともない多数派労組の同意を得て55歳からの大幅賃金ダウンを実施した(つまり不利益変更の代償がある)のに対し、みちのく銀行の場合は(大きな賃金ダウンなく)他行に先行して60歳定年延長がすでに実施されており、その後経営不振に陥った際に(やはり多数派労組の合意を得て)他行並に55歳以降の賃金を引き下げた(つまりその時点では不利益変更の代償はない)、という事情の違いによるものでした。事件当時60歳定年はまだ努力義務(平成10年に義務化)でしたが社会的に強く要請されており、先行して定年延長に踏み切って社会的要請に応えたことで、結果的にのちのち競争上不利になってしまうということでは進む政策も進まなくなりますよねえというのが大方の企業実務家の受け止めだったように記憶しています。
月日は流れて、そのみちのく銀行が今回はやはり社会的要請に応えて70歳までの継続雇用に踏み切ったということで、まあ金融業界は比較的取り組みは進んでいるらしく地銀でも北都銀行東邦銀行などが70歳継続雇用を導入しているらしいのですが、まあ最初にも書いたように先進事例に入るでしょう。もちろん労働条件については抜かりなくやっておられるだろうとは思うわけですが。