アベノミクスの評価

報道によれば消費増税延期、解散総選挙ということになったそうで、争点のひとつはアベノミクスの評価なのだとか。多様な観点からの評価があるでしょうが、ここでは私の関心事項である労働政策について簡単にレビューしてみたいと思います。
まず結果としての労働市場全体を見てみますとこの間1%ポイント程度完全失業率が改善しており、就業者数は約80万人、雇用者数も約50万人増加しています(以上総務省労働力調査」2012年12月確報と2014年9月速報をもとにしています)。賃金についてはまだ賞与を含む年収ベースの比較が難しいのですが、所定外や賞与が増加していることは確実そうですし、上記のとおり雇用者も増えていますので日本全体での(名目)総報酬額は増えているでしょうし、物価上昇が想定ほどではない(これについてはアベノミクスの効果は十分でないと言えると思いますが)ことを考えると、実質でも増えているのではないかと思われます(これはあまり自信がない)。
ということなので、個別の論点に関してはともかく、さすがに労働市場全般に関しては合格点をつけざるを得ないのではないかと思われます。
もちろんこれは経済情勢が好転した結果という部分が大半であり、今後ともなにより適切な経済政策・金融政策を通じて雇用情勢の一層の改善が望まれるわけですが、それではこの間の労働政策がどうだったかというのを見てみますと、いま思い出すものを順不同で拾ってみるとこんな感じでしょうか。

ほかにもいろいろあると思いますがとりあえずこんなところで。最低賃金の引き上げはマクロ経済の改善に貢献していると思いますが(まあ経済が好転しているから最賃も上がっているとも言える)、使用者サイドからみると使用者負担による政策が多く(政策そのものの是非についてはまた別問題)、労使関係や人事管理への介入も目立っている上、労使双方にメリットがありそうな派遣法改正はいまだに成立せずと、まああまりでかしていない(その良し悪しはまた別問題)という印象は禁じ得ないのではないでしょうか。もちろん好況で労働市場が逼迫している状態では雇用労働に関しては企業も負担を受け入れやすいわけなので、それほど大きな抵抗はなくなんとか受け入れられているのだろうとは思いますが。
なおアベノミクス肝煎りの成長戦略に関しては、これも以前から書いているとおり私は労働政策にはそもそも成長戦略として大きくは期待できないという立場ですが、新しい労働時間制度の導入によるイノベーション人材の育成、多様な(スローキャリアな)正社員といったものは中長期的には成長に資するだろうと思いますし、解雇の金銭解決については実務上必要性が高いと考えています。これらは一応検討の俎上には乗っていますので(まあ進行はあまりはかばかしくはないようですが)、まあ評価はこれからというところでしょうか。未成立の派遣法改正法案成立とあわせて、経団連はじめ経済団体の皆様のご尽力をお願いしたいところです。