日本ウェルネススポーツ大学

昨日、茨城県北相馬郡利根町の日本スポーツウェルネス大学を訪問し、見学させていただく機会がありました。
http://www.nihonwellness.jp/
2012年4月開校とのことですから1期生が3年生になったところということのようです。スポーツプロモーション学部スポーツプロモーション学科のみの単科大学で、過程も通信教育課程のみ、学生数は1学年二百数十人という小規模な大学です。
運営にあたっている学校法人タイケン学園は1999年に開校、すでに日本ウェルネススポーツ高校や日本ウェルネススポーツ専門学校から多くの卒業生を送り出しており、長い人は勤続10年を超えて初級マネージャーに到達するキャリアになってきているわけですが、マネージャーになるのであればそれなりの理論的知識や学位があるほうがよろしかろうということで、専門職として働きながら学べる通信課程で…ということのようです。もちろん、この学校法人の卒業生に限らず、高卒や専門学校卒でスポーツ関連の仕事についている人というのも相当数いるのでしょうから、そうした人たちの入学も念頭に置かれているものと思われます。
またこの手の大学ですので当然ながら運動部強化には熱心なわけで、硬式野球ソフトボール、バドミントンなどの戦績が掲示されていました。硬式野球部は地理的には関甲新連盟かお隣の流通経済大が所属する東京新連盟になるのでしょうが、社会人チームとして都市対抗野球をめざしているのだそうで、これはすでに日本ウェルネススポーツ専門学校硬式野球部が社会人チームとして活動しているので、そちらに合わせたものでしょう。女子ソフトボールも大学ではなく日本リーグの二部で、こちらはもともとあった専門学校のチームを大学のチームに合流させたような形になっているのでしょうか。
さらに、大学開学と同時にバドミントンの強化に取り組んでいるとのことで、こちらは関東大学リーグの6部からスタートして早くも3部まで上がってきているということですから、かなり順調な強化ぶりと申せましょう。そのほか個人種目の有力選手なども相当数いて、それぞれの拠点で活動しながら学んでいるとのことで、これは他の大学でもよくみられるところで、そこが通信制のいいところなのでしょう。ちなみに日本ウェルネスは高校も通信制ということで、スポーツ強化のかたわら学びたいという選手の受け皿になっているようです。
さてこの大学のユニークな特徴として知られているのが廃校利用で、二つあるキャンパスはいずれも旧利根中学校・布川小学校の廃校利用です。学校施設の流用ですから、学校に利用するというのはたいへん常識的な考え方で、現に多くの事例があるようです。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296844.htm
大学のウェブサイトの写真をみるとかなり立派なキャンパスのように見えるわけですが、いや実際立派だが、しかしまあ現地をみるとなるほどこれは小中学校だよなという感じではあります。講義室や教員の研究室なども基本的にはほとんどが教室の流用で、時間割やスケジュールなどの黒板などもそのまま残っていましたし、準備室や倉庫のある教室などはその特徴を生かそうとしているようでした。もともと通信制のスクーリングがメインの用途なのでそれほど多くの講義室が必要なわけではなく、スペース的にはかなりゆとりがありそうで、一部教室にはトレーニング機器や測定機器が置かれて生理的データがとれるような研究室もあり、もちろん新築の大学校舎とはまいらないまでも、学習環境としてもまずまずではないでしょうか。立地という面でも、JR成田線布佐駅から徒歩15〜20分くらいと、毎日通学するにはさすがに不便でしょうが(だから人口減で廃校になるわけで)、スクーリングで短期間通学するならそれほど悪くもないでしょう。ちなみにスクーリングは1週間程度の集中講義で行われることも多く、その場合は成田や我孫子で宿泊する学生さんも多いそうです。
もともと学校だったのでもちろん校庭や体育館、プールなどもありましたが、実技科目というのはほとんどないらしく(まあスポーツプロモーション学なので実技はないのが当然なのかもしれません)、体育館は主に運動部の強化施設にあてられていました。特に小学校のほうの体育館はコート4面を有するバドミントン専用に改装され、体育館ではなくバドミントン館と称され、大会なども開催されているとのことでした(とはいえ実際にみるとステージも残っており、その上部には校章も掲示されていて、学校体育館であることは一目瞭然ではありましたが)。ただバドミントンは盛夏でも閉め切り・無空調の競技なので、小学校の体育館の流用先としては最適かもしれません。
グランドのほうは小学校1面、中学校2面があったようですが、校庭はどちらも町が売却しなかったとのことで、空き地になっていました。中学校のもう1面は天然芝の野球場で、こちらは売却されて硬式野球部が利用していました。小学校の校庭は町民がレクリエーションなどに活用しているから、ということのようでしたが、中学校のほうは特にそうした気配もなく、まあまったくの更地なので町としてもこれは別途使途を考えようということなのかもしれません。いずれにしてもどちらも陸上競技部が本格的なトレーニングを行うには十分ではない(流通経済大の施設を借用しているとのことでした)ため、特に取得にこだわることはなかったようです。プールも小学校に2つあるのですが、さすがに小学校のものなので大学生が使うには浅すぎるのでしょうか、使われていないようでした。
あと面白かったのは映画やドラマのロケに使われているという話で、たしかに学校らしいつくりの校舎ですし、学校といわれて多くの人のイメージするような施設で、実際に使われていますから整備もされていればリアリティもあり、しかも通信制ということで稼働率が低いので、使い勝手のいいロケ先なのかもしれません。
また、そのような成り立ちの大学なので利根町との連携や地域活性化にも積極的に取り組まれているとのことで、近隣のアパートなどは運動部員が入居して活況のようです。
ということで百聞は一見に如かず、予想以上にたいへん有益な社会学習をさせていただきました。ご対応いただいた皆様、本当にありがとうございました、って誰も見てないって(笑)。