国家公務員希望者全員再雇用「定員の枠内で」

もう一つ本日の日経新聞朝刊から。

 政府が臨時国会に提出する国家公務員法改正案の概要が25日、分かった。希望する定年退職者は原則再任用するが、国家公務員全体の定員の枠内に収める。財政状況が厳しいため、定員を増やすのは難しいとみられ、再任用の希望者が多ければ新規採用の一層の抑制を迫られる可能性もある。
 国家公務員の退職共済年金は2013年度から報酬比例部分の支給を段階的に引き上げ、25年度には65歳となる。13年度以降は60歳で退職すると当初は年金を受け取れなくなる。このため、政府は定年退職する公務員のうち、希望者は原則全員を再任用する基本方針を3月に決定した。
 適正ではないと判断した希望者は再任用する義務がないとしたが、フルタイム(常時)勤務で再任用する場合は定員の範囲内にとどめる方針を盛り込む。「退職者の再任用による定員増は国民の理解が得にくい」(総務省)ため、再任用者数は現行の定員の枠内にする方向で検討する。
 国家公務員の13年度の新規採用者は、民主党政権が発足した09年度に比べ約6割減の3780人。政府内には、若手の採用を抑えて定年退職者の再任用を増やすことを危惧する声もある。
平成24年10月26日付日本経済新聞朝刊から)

個別の使用者レベルで考えれば、退職するはずだった高年齢者を継続雇用すればどこかでその分の人件費を減らさなければならないわけで、いまのわが国の労働市場においてはそれは若年、とりわけ新卒者の採用において減らされることになるであろうということは、官民問わず問わず明らかだということでしょう。
さて2点ほど興味深い点がありまして、まず「適正ではないと判断した希望者は再任用する義務がないとした」というところです。いや先日取り上げたように民間においても心身の故障のため業務に堪えられないまたは勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ない等合理性相当性のある場合は再雇用を要しないという指針の案が示されているわけなので、国家公務員においても同様だということでしょうが、しかしこれは民間に較べて甘く運営しても辛く運営しても文句が出そうだな。ちょっと行政当局が気の毒な感はありますがおそらくは率先垂範して(?)再雇用者に甘い運営になりそうな気がします。となると若年にとってはますます狭き門になりそうです…になりそうなのですが、そこでもう1点、「フルタイム(常時)勤務で再任用する場合は定員の範囲内にとどめる」の出番になるわけです。いやフルタイムなら定員の範囲内ということはパートタイムであれば定員の範囲外ということでしょうから、定年到達者はパートタイムで再雇用して定員外とし、そこで定員をあけて新卒はじめ若年を採用しようという図式なのでしょう。おおっと、これは「高年齢者の雇用と若年の雇用は質的に違うし労働市場全体では雇用が増えるのだから問題ない」というお役所の説明そのままではありませんか。なかなか味なことをお考えになるものだと感心することしきり。
ということで「退職者の再任用による定員増は国民の理解が得にくい」と悪しざまに言われているわからずやの国民のみなさんは、パートタイムで再雇用された国家公務員の処遇に目を光らせることが必要になりそうです。私個人としては、処遇に見合った仕事をしてくれるなら若年のチャンスが失われるよりはずっとマシだとは思います。でもヤッパ公務員は収益とか関係ないから楽だよね。