大阪の話(2)

さてやはり各方面から悪評紛々の大阪府の教育基本条例案に関しては、こんなニュースも流れておりました。

 大阪府の2012年度の公立学校教員採用選考で、合格者2292人のうち284人(12.4%)が3日までに辞退したことがわかった。記録の残る過去5年間の最終辞退率は9〜10%で、過去最高の辞退率。
 府教委によると、理由は「他府県や私学の教員に採用」が57.4%、「大学院進学など」が25.4%、「教員以外の就職」が5.3%。採用試験が行われている最中の8月に、教員評価の厳格化などを定めた教育基本条例案大阪維新の会が公表したため、影響を指摘する大学関係者もいる。府教委は「分析していないのでわからない」としている。
asahi.comhttp://www.asahi.com/national/update/0209/OSK201202090089.html

過去5年は9〜10%で安定していたとのことで、誤差の範囲と言い切るには少し大きいかなという気もしますが、どうなんでしょうか。いずれにしてもウェブ上ではこの条例案が嫌いな人たちが「橋下のせいだ、責任取れ」などとさかんに燃え上がっているようです。
そこで仮に条例案の影響があるとして、条例案にある教員評価の厳格化などは労働市場的には労働条件の悪化なので、以前に較べれば応募が減るのは自然ですし、合格後にそれが判明したのであれば辞退者が出るというのもまた自然な話だろうと思います。加えて、一般論としては労働条件を下げれば応募者の質の低下も同時に発生するわけで、こちらを問題視する意見もあるようです。
もっとも「質低下」の懸念に関しては必ずしも悪いとばかりは言えないようにも思います。例えば教員評価の話でいえば、条例案にその厳格化を織り込んだのは教員に対して厳格な評価に対峙する心構えを求めてのことでしょうから、それを嫌って辞退する合格者が出ることは、むしろ条例案の趣旨にかなうもので意図したとおりとの見かたもできそうだからです。
いっぽう、低下しては困るような質まで低下したり、辞退が多過ぎて必要数が充足できないとなると問題ですが、だから条例案がけしからんという議論はさすがに短絡的で、労働条件というのはパッケージなので、その他の労働条件で評価の厳格化を埋め合わせて十分以上の改善があればいいわけです。要するに、それなりの人材が、評価が厳格になってもいいから大阪府の教員になりたいと考えるくらいに、たとえば賃金を引き上げるといったことが必要になるわけです。
ところが、橋下氏(というか後任の松井知事)は他方では公務員の労働条件の抑制にも熱心なわけですから、それではさすがに思うような人材確保は無理でしょうねえということになり、突っ込むならここではないかなあと思いました。
まあ評価の厳格化が嫌いな人はそれ自身が否定されなければ満足できないのでしょうが、であれば辞退が増加したことを騒ぎ立てても意味がなく、別の作戦を考える必要があるものと思います。