岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること

一部で話題の岩波書店の定期採用を備忘的に転載します。
http://www.iwanami.co.jp/company/saiyo13a.html

募集の種別 2013年度定期採用(経験者含む)
担当業務 出版業務全般
採用人数 若干名
入社時期 2013年4月
  (都合のつく方には、上記以前に入社をお願いする場合があります)
応募資格 A:4年制大学卒業者(2013年3月卒業見込者を含む)
    1982年4月2日以降生まれ
  B:出版関連業務(編集/製作/校正/販売/宣伝/経理/総務等)経験者=学歴は問わない
    年齢:35歳程度まで
  岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること
応募書類 1.入社志望書(岩波書店作成のもの)
  2.作文:「職業としての出版と私」
  岩波書店作成原稿用紙使用/800字以内、自筆、縦書)
  3.紹介状:岩波書店著者によるもの(岩波書店社員紹介の場合は不要)

以下略。ボールドはママです。選考方法は書類選考→筆記試験のあと面接が3回あるようで、筆記試験は4月8日、面接日程は4月14、18、21日に設定されています。2次面接が水曜日なのは学事日程的には残念な感じですが、岩波書店はたぶん経団連の倫理憲章遵守宣言には参加していないのかな(ウラ取りしてないのでただの推測です)。
話題になっているのは言うまでもなく「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」という部分なのですが、まあ従業員数200人の企業が若干名を採用するということなら十分ありうる話でしょう。こういうのに不公平とか差別とか目くじらを立てる人というのもいるだろうと思いますが、私は採用の自由は最大限認められるべきという立場なのでこういう話にはきわめて寛大です。いやたしか赤旗の記者って日本共産党員しか応募できないんじゃなかったかな(いまウラを取ってはいないので自信なし)。
岩波については要するにこれでどういう質保証をしようという意図なのかですが、とりあえず記念受験の排除にはかなりの効果を発揮しそうです。あとはまあ岩波っぽい人を採りたいという意図もあるのでしょうか。「岩波書店著者」というのがどこまで含まれるのかわかりませんが(「世界」にエッセイを一度載せました、というくらいでもOKなのかとか)、さすがに本は読んでませんが紹介状は書いてくださいとは言えないでしょうから、まあ(目的はともあれ)岩波の本を読む気になるような人に限定されるでしょうというのはあるのかな。いやそもそも岩波に入りたい人はそういう人に決まっているような気もしますが。営業上の効果は…まあ、知れたものかな。
ただ入社志望書(エントリーシートですね)と作文用の原稿用紙はウェブから書式がダウンロードできるようになっていますが、紹介状には所定の様式はないようなので、その文面はけっこう選考の参考になりそうです(つかまあそれが紹介状本来の目的だ)。大学であればまあどこでも岩波の出版物で書いた人は誰かどうかいるでしょうが、さすがに紹介状を書いてもらうとなると本を読みましたくらいでは難しいでしょう。実際、書くとなれば「岩波肇君をご紹介します。同君は私のゼミ生にて本学きっての俊英であり御推薦申し上げます。採用方よろしくご配慮をお願いします。講談大学教授文学博士中公博」というくらいの文面にはしなければならない(のか?)でしょうし、そうなるとまあそれなりに出来のいいゼミ生とかに限られるかなという感じもします(同君は私の講義を聴講し抜群の答案を書きました、とかもあり得るかもしれませんが)。そこまで書いたのに採ってみたら全然使えませんでしたとかいう話になったら二度と岩波から出せなくなってしまうかもしれないとかいう抑止力も働きそうなので、けっこう高度な質保証になるのかもしれません。
ちなみに「卒業後3年」などとケチなことを言わず、35歳までの経験者を新卒と同一プロセスで採用しようというのは、文科省厚労省的には好事例ということになるのでしょうか。
ところで私って「岩波書店著者」だったかなあ。共同執筆のどれかが岩波だったようが気がしなくも。あとで調べてみよう。

  • (2月5日追記)残念ながらやはり私「岩波書店著者」ではなかったようです。まあそうでしょうねえ。ということで紹介状が必要な向きはhamachan先生にこらこらこら。