「ダメな議論」フォロー

12月1日のエントリに「いちエネルギー政策ウオッチャー」さんからコメントを頂戴しました。

2011/12/05 21:17
おっしゃることも分かりますが、かなり知識が不足されているように感じます。
再生可能エネルギー政策をウオッチしてきた人の多数が、「おいおい、この期に及んで新日鉄と山路かよ、ふざけんな」と思うのは当然かと思います。
この人事が、再生可能エネルギー普及を阻む方向に天秤を傾けるものであることは、間違いないでしょう。
それを承知の上でそれが正しいのだというのであれば、一定の見識ではありましょう。
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20111201#c1323087438

繰り返し書いておりますが私はエネルギー政策について知識不足であることはご指摘のとおりですし、「それが正しい」といった特段の定見があるわけではありません(以下も一般論の枠組みに再生可能エネルギーの具体例をあてはめてみたものとご理解いただければと思います)。また、再生可能エネルギー政策を(プッシュしつつ)ウオッチしてきた人の多数が、「おいおい、この期に及んで新日鉄と山路かよ、ふざけんな」と思うというのは、それは当然の心情だろうと私も思います。
ただ、環境意識の高まりや原発事故の影響で国民の再生可能エネルギーに対する期待は高まっているにせよ、電力料金の値上がりをどこまで容認する準備があるかについては、未知数ではないかと思います。
たしかに、買い取り価格を高くすればするほど、供給量は増えるでしょう。しかし、全体に占める比率が上がるに伴って、国民の負担も増して行きます。再生可能エネルギーの普及を進める上において最も恐れるべき事態は、国民の太宗が「こんなに電力料金が高くなるなら再生可能エネルギーなんか要らない、やっぱり天然ガス火力でいい」と言い出すことではないでしょうか。
そうならないようにするためには、なるべく早い段階から、なるべく低い買い取り価格で(もちろん当初はスケールメリットが働かないなど高くならざるを得ない状況はあるわけですが)再生可能エネルギー供給事業が成り立つようにしていくことが望ましいと思われます。そういう意味で、原価の把握を大口ユーザーでありかつビジネスの論理で動く、したがって価格にシビアな新日鐵の幹部が監視することは理にかなっていると私は思います(山路氏についてはよく知らないのでなんとも申し上げられないのですが)。
もちろん、これは1日のエントリでは言及できていないのですが、再生可能エネルギーの供給には外部経済がある(というか、温暖化ガス排出が少ないということで外部不経済化石燃料エネルギーに比べて小さい)わけなので、その普及に国民負担を求める(賦課金であれ税財源の補助金であれ)ことは正当化できると思います。だから総括原価方式になっているのでししょうし、さらには適正な利潤の部分で配慮することも可能だと思われます。結局は委員会が意見を述べるにせよ(前述のとおり)国民の意思に基づいて政府が決定すべきものであり、実際今回の法律もそうなっているのではないかと(違うかもしれない)思います。
繰り返しになりますが私はエネルギー政策について知識不足であり、上記に誤りがある可能性や、私の知らないエネルギー政策・電力政策の特殊性がある可能性もあると思います。ただ、上記は要するに「国民負担を求めるならそれを国民が容認する範囲内にするしくみが必要」という議論であり、類似の政策にも一般論として相当程度該当する議論ではないかとも思います(それこそ東京電力の電力料金設定についても該当すると思われますし、そこで一貫性が問われることにもなるわけです)。
まあ、河野氏にしても東京新聞にしても本当に関心があるのは再生可能エネルギーではなく原発のほうだろうと思われますので、再生可能エネルギーの関係者は上記のようなことは私があれこれ言うまでもなくご承知で、河野氏東京新聞を迷惑に感じられつつも「それにしてもまたぞろ新日鐵かよ、勘弁してくれよ」という率直な感想については同感だ、というところなのでしょうか。