違和感

一昨日になりますが労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会が開かれ、高年齢者雇用について議論が行われたので参加してまいりました。
議論は多岐にわたりましたが、私が依然としてどうしても違和感をぬぐえないのが、現行法制下ですでに労働側が事実上の拒否権を持っているにもかかわらず、それを背景とした個別労使における団体交渉が広がることもなく労働側が法制化を主張している点です。これは、実態としては基準制度を容認、あるいは積極的に支持している単組が相当にあるということでしょうし、であれば、まあ過半数代表は手続き的な問題もつとに指摘されており、組織率の実態などを考えれば除外することも考えられるでしょうが、過半数労組との労働協約による基準制度は労使自治の観点から尊重されてもいいのではないかと思うわけです(実際にそういう趣旨の発言もさせてもらいました)。
もちろん労組からすれば余計なお世話であり、以前も書きましたが(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20110510#p1)連合として機関決定したということは傘下の単組もそれを支持している(少なくとも拘束は受ける)ということなのだということでしょうし、実際にそういう趣旨のご発言がありました。ただ、余計なお世話にさらに余計なお世話を重ねれば、やはりまずは単組レベルで(もちろん連合共闘や産別共闘で取り組むことはあるにせよ)希望者全員再雇用を要求し、交渉の結果としてそれを獲得する。もちろん交渉の過程では、要求を実現するために労使でどのように努力するかも話し合われることでしょうし、そうしたプロセスを踏むことが、経営サイドも労組の発言や意向を尊重することにつながるのではないかと思うわけです。そして、希望者全員を実現する企業労使が増えてきて、それが社会的に大きく広がってきたら、それではこれを一般的なルールにしましょうというのが、構成員の団結と参加を力とする労働運動のあるべき姿ではないかと思うわけです。特に今回は労働サイドに事実上の拒否権があるので、通常とは異なり労働サイドのほうが力関係は優位なのですからなおさらです。もちろん法制化運動も否定はしませんし、せっかく支持政党が政権を取ったわけですからそれを大いに活用するのもよろしかろうと思いますが、現場での労使の対話というステップをスキップして、一足飛びに機関決定して法制化しようというのは、労働運動のあり方として本当にいいことなのかどうか。以前から何度か書いていますが(たとえばhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20081022とか)、私は疑問に思います。
いやホント余計なお世話なんですが、しかし私としては労組に期待もすれば応援もしている(ビジネス・レーバー・トレンドにこんな記事(http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2005-10/p2-11.pdf、4ページ)を書いたこともあります。もちろんこれについては賛否があると思います)からこそ、余計にそう思うのです。