潜在失業率

会社が社会奉仕活動で始業前に会社近辺の清掃をやるというので今朝ほど参加してきました。まあ空缶空瓶や包装などの類は想定されたわけですが、レトルトカレーの空き袋とか捨てられているのは少し無理がありそうな(箱は見当たらなかった)。それからスプレーラッカーの空缶を2本収穫したのにはたまげました。いまどきこんなビジネス街で夜中にラッカー吸って気持ちよくなってる人とか、いるのかなあ。あと目薬の空容器というのも無茶な部類かと。いっぽうでたばこの吸殻・空箱などはほとんど見当たらず、これはおそらく路上禁煙の効果でしょう。とは言ってもピースの空缶が転がっていてああまだあるんだと思ったり、いや都会(に限らないかな)にはいろいろなものが落ちているものだと、文字通りの意味で。かなりの大人数だったのですがみなさんそれぞれに豊作だったように見受けられ、ゴミの投げ捨てはやめましょう
さて余談が長くなりましたが昨日の日経新聞から。

 総務省が15日発表した2011年7〜9月期の労働力調査の詳細集計(被災3県除く)によると、「就業を希望するが求職活動をしていない人」が前年同期より19万人多い469万人になった。リーマン・ショック後の急激な雇用悪化があった09年7〜9月期の461万人を上回る。条件の良い求人が不足していることを受け、労働市場から退出する「潜在失業者」が完全失業者の約1.7倍まで増えた。
 失業者はハローワークに通うなど求職活動をしている人を示す。仕事をするつもりはあるが「希望する仕事は見つからなそうだ」といった理由で職探しをあきらめる人は失業者ではないが、潜在失業者とみなされる。その増加は働き手の喪失とともに、生活保護などの負担増や税や社会保険料を納める層の減少につながっている面がある。
 潜在失業者数の変化を男女別にみると、女性は6万人増だった一方で男性は13万人増。仕事を探さない理由では「自分の知識・能力にあう仕事がありそうにない」「勤務時間・賃金などが希望にあう仕事がありそうにない」との回答が増えた。
 全体の非労働力人口は前年同期比62万人増の4280万人。リタイアした人や専業主婦など、そもそも働くことを希望していない人は39万人増の3728万人だった。
 11年7〜9月期の完全失業者は被災3県を除くベースで前年同期比43万人減の277万人だった。そのうち1年以上失業状態にある人は前年同期比19万人減の103万人になり、2四半期連続で減少。表面的には長期失業者は減ったが、そのうち一部は先行き不透明感から職探しをあきらめて労働市場から退出している可能性がある。
平成23年11月16日付日本経済新聞朝刊から)

男女別・年齢階層別のデータも公開されていました(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou2/4hanki/dt/zuhyou/dt031.xls)。
(万人)

  15-34 35-54 55以上 15-24の内定者 完全失業者
74 20 42 38 168
138 144 50 31 109

理由(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou2/4hanki/dt/zuhyou/dt032.xls)をみると女性の潜在失業者が多いのは想像されるとおり「育児・家事のため仕事が続けられそうにない」人が112万人いる影響なのですが、それを除いてもまだ男性よりかなり多くなっています。よく言われることですが、働き盛りの男性は潜在的失業者になってはいられないということが反映された数字だということなのでしょう。
さて記事にもあるとおり『仕事を探さない理由では「自分の知識・能力にあう仕事がありそうにない」「勤務時間・賃金などが希望にあう仕事がありそうにない」が増えている』のではありますが、これらを含む「適当な仕事がありそうにない」は男性49万人、女性103万人で、「健康上の理由」と「その他」を合計した男性78万人、女性105万人を下回っています。「その他」の中身にもよりますが、まあかねてから指摘されており関係者の共通意識でもある「不況期には女性を中心に労働市場からの撤退が拡大する(ことでわが国の失業率は比較的低くなっている)」というメカニズムが働いているということだろうと思います。
また、上記のとおり「適当な仕事がありそうにない」の理由をみても「勤務時間・賃金などが希望にあう仕事がありそうにない」「自分の知識・能力にあう仕事がありそうにない」が(増えているだけでなく)多いのですが、特に後者は女性が多く、たぶん理由の多くは勤務時間なのでしょう。勤務時間が長い・賃金が低いから働かない、というのであれば、まああまりブラックな仕事では困るわけですが、一応は働かざるを得なくなれば働き口はある可能性が高い、ということでしょう。前者についてはよくわからないのですが、自分の能力が不足なのか、あるいは自分の能力が生きない簡単な仕事で不満なのか、まあどちらもあるのでしょう。完全失業者に対する調査では選択肢が「自分の技術や技能が求人要件に満たない」となっていて明確ですし、「希望する種類・内容の仕事がない」という選択肢もあるのですが、潜在失業者に対してはこの選択肢がなく、これも「自分の知識・能力にあう仕事がありそうにない」に含まれているかもしれません。まあ最初に書いたような軽易な清掃作業(まあ要するにゴミ拾い)などは雇用というよりはボランティアやシルバー人材センターなどの領域なのでそうした仕事は仮にあってもやる気にならないというのもわからなくはありません。いずれにしても、こちらについても同様、一応は働かざるを得なくなれば(教育訓練などが必要になる場合はあるでしょうが)働き口が確保できる可能性は高そうです。
ということで、全体的にはまあ働かなくてもすむ人が働いていないのなら大きな問題ではないはずで、「潜在失業者まで含めると日本の失業率は10%を軽く超えている」といったことを大問題のように言う人がいますが、やや過大評価かと思います。
もちろん過小評価もできないわけで、特に若年で「適当な仕事がありそうにない」ので潜在的失業者になっている人たちの中には、現時点では親と同居しているので困らないが、ここで意味のある仕事について能力・キャリアを蓄積・形成しないとあとあと非常に困ったことになる、という人たちが相当数含まれているものと思われます。以前から繰り返し書いていますが、ここには重点的な支援が必要でしょう。ただ、雇用失業情勢が厳しく全般に求人の不足する中では、求職者支援制度など能力開発も重要ですが効果は限定的ですし、勤務時間や賃金などの労働条件がなかなか上がりにくいのも致し方のないことでしょう。ハローワークなどの公的機関や民間の人材ビジネスにおいて、こうした若年に対して、仕事が能力・キャリアの面で有意義であり、労働条件も今は良くないがブラックではなく、かつ経済・業績の好転にともなう労働条件の改善が期待できる求人を発掘してマッチングしていくといった取り組みが求められるということでしょうか。なんか書いていて本当にそんな求人が十分にあるのかどうか、あまり現実的でないかなあとも思うわけですが。