派遣に交通費

id:mkusunokさんから、10日のエントリ(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20111110#p1)にはてなブックマークでこんなコメントをいただきました。

[人事管理]期間の定めの有無による処遇の相違 - 2011-11-10 - 労務屋... d:id:roumuya
社会 1 user 2011/11/11
mkusunok 個別に様々な事情があるんだろうけど派遣にこそ交通費くらい出そうよって思うんだ、個人的には 2011/11/11
http://b.hatena.ne.jp/mkusunok/20111111#bookmark-67045409

当該エントリは有期労働契約に関するものですが、ご指摘の派遣についてはまた異なる事情があるので書いてみたいと思います。
その前に実態はどうかというと、かなり古いのですが、厚生労働省の2001年の調査によると、派遣労働者のうち通勤手当が支給されているのは71.2%となっています。これを多いとみるか少ないとみるかは難しいところですが、とりあえず10日のエントリで紹介した正社員や有期労働契約の人の数字よりは(もちろん単純な比較はできませんが)小さそうにみえます。
さて、派遣先が派遣労働者に直接通勤手当を支給すると労働基準法(賃金の直接払い原則)や職業安定法(労働者供給事業の禁止)に違反することとなりますので、通勤手当を支給するのであれば派遣元が支給し、派遣料金にそれを反映するということになります。固いことを言えば、労働者派遣制度の建前では派遣先は仕事を指定してその仕事ができる労働者の派遣を受ける(したがって仕事ができることを派遣元が保証している以上事前面接は不要なはずなので禁止して差し支えない)わけですから、通勤費の多寡によって派遣料が異なることはおかしいという理屈になります。まあ実態としてはそんなことを言う派遣先はまずないだろうとは思いますが、理屈上は派遣を臨時・例外として市民権を与えていないことの悪影響がこんなところにも出てくるわけです。
それではなぜ派遣元が派遣社員通勤手当を支給しないかというと、おそらくは派遣先が頻繁に変わるため、都度交通費を計算しなおして支給する事務が煩雑だからではないでしょうか。派遣元とすれば人件費であることには変わりないわけですから、賃金の中に平均的な通勤費用をドンブリ勘定で放り込んでおいた方が楽だということだろうと思われます。逆に、通勤手当を支給するのであれば、その平均額分は基本給(?)が低くなるということになるわけです。
どちらでも同じようにみえますが、ここで重要なのは、通勤手当であれば合理的な実費は非課税*1だということです。つまり、ドンブリ勘定ではなく基本給と通勤手当に分けて支払うことで、派遣元の負担は同じでも派遣労働者の手取りが増えることになります。しかも、通勤手当は割増賃金のベースから外すことができますから、残業がある場合には残業代の節約にもなるわけで、派遣元にもメリットのある話です。
派遣は勤務場所が頻繁に変わるだけに、通勤費が高くなって負担感を覚えるケースも多いのではないかと思います。それを軽減するという意味でも、ドンブリ勘定をやめて通勤手当を切り出すことは有効と思われます。多少の手間かもしれませんが、派遣元に一考を促したいところです。

*1:公共交通機関は上限月10万円、自家用車などは距離により異なる上限あり。