カラ求人

面白いエントリをみつけたので備忘的に転記します。
http://anond.hatelabo.jp/20100419004746

 中小企業で総務と人事を担当している。
 過日、職安から「御社で求人募集は行ってはおりませんでしょうか?」という電話があった。
 新卒採用でさえも引き締めようとしている我が社なので丁重にお断りをしたのだが、どうにも相手は食い下がらない。「ああ、有効求人倍率を上げようとして、この人たちも必死なのだな」と感じたわけだが、上司に相談しても「断ってくれ」の判断だったので、再度丁重にお断りした。
 数日後、職安の職員がある人物を連れてやってきた。商工会議所の専務理事だった。社長と直接会いたいとのことだった。社長は彼らとしばらく話をした後、俺たちに「求人を出してくれ」と言ってきた。そんな余裕はないですよ、と答えると「地域活性化のためだし、専務理事がああして来られると、こちらとしてもなあ」ということだった。ちなみに、職安の職員はああやって商工会議所等の団体幹部と一緒に企業訪問を個々で繰り返しているらしい。
 募集要項はこちら側で決めたら良いというわけで、恐ろしくハードルを上げた求人を出してみた。学歴はもちろん大卒以上。業務に関連する学部卒であることを暗に仄めかした書き方をしておいた。営業経験5年以上で、業務に関連する資格保持者。月給制で月14〜16万。年間休日96日。他にも、傍から見れば「ブラック企業」と言われるような条件を提示して職安に出してやった。本当は年齢も30歳未満にしたかったのだが、職安の担当者に「求職者がもう少し応募しやすい条件でお願いします」と言われてしまい、年齢の部分だけは譲歩した(ちなみに、経験者云々のところも同じように言われたが頑なに拒否をした)。
 こんな条件で応募してくる奴なんかいないだろ…って思っていたら、これがいるんだな。驚いた。30代後半あたりの「第一期就職氷河期世代」が多いのだが、中には20代もいる。求人を出した一日目に、もう既に10件ほどの求職申し込みがあった。
 応募してくれた彼らにとっては残念だが、うちは採用する気は最初からないので、とりあえず近場の人は面接だけをしてすぐに不採用通知の連絡を行うようにしている。不採用通知のテンプレも既に出来上がっていて、面接実施→面接者帰宅→すぐ封筒作成…といった段取りで進む。こちらとしては、通常業務に時間を割かれるので面接自体が無駄な行為なのだが、こうなってしまった以上仕方がない。表向きだけでも、そう取り繕わなければならないのだ。
 今求職活動をしている人たちは本当大変だと思う。うちだって本当は求人を取り下げたい。取り下げることで、求職者たちの精度や確率だって上がるだろうし、余計な時間や手間隙だってかけなくて済む。国も、思い切って35歳以上のニートやフリーターの数を弾き出して、きちんと公表したら良いと思うんだ。くさいものに蓋みたいな状態だし。
 とりあえず、うちに面接に来る前に限らず、ハローワークで「どれくらいの人が応募していて、不採用者はどれくらいなのか」というのをきちんと調べてもらったほうが良いと思う。

類似の話はたまに耳にするわけですが、まあ職安にしてみても「求人開拓せよ」と言われればこうでもするしかないでしょう。「まさかこんな条件でこんな人材が採れるわけがない」と思ってたら本当に来ちゃったよ、じゃあ採ってもいいか…ということになってくれればそれでよし、このエントリのように「それでも採れません」となったとしても同じことですものね。気の毒なのは無駄足を踏まされる求職者で、とりあえず職安の求人で落とされたら「もともと採る気なかったのかもね」と割り切ってしまうくらいのタフさが必要なのかもしれません。まあ、企業がカネ払って求人誌に広告出してる求人に較べたら、タダで出せる職安の求人のほうが気合入ってないことはたぶん確実なわけですし。
それはそれとして、こういうのがどのくらいの割合あるのかわかりませんが、こういうのが増えるほどに構造的・摩擦的失業率は過大評価され、需要不足失業は過小評価されることになるのでしょう。求人開拓を一生懸命やるほどに、誤った政策を誘導しかねない推計結果が出るというのも少々皮肉な感じがします。