都道府県最低賃金審議会

 職場の回覧で、連合の機関誌「月刊連合」を読みました。メインの特集は改正貸金業法なのですが、地域別最賃が決まったということで、千葉、京都、福島、大分の各府県の最賃審議会で議論に参加した各府県連合のオルグによる座談会が掲載されています。見出しは「目安を上回る「17円」アップで平均額は「730円」に。「できる限り早期に最低800円」へ手応えあり!」となっています。繰り返し書いているように私は最低賃金が向上すること自体は好ましいことだと思いますし、今年は中賃目安(平均15円)を上回ったことはご同慶です。
 さて座談会の内容は各府県での議論の経過がリアルに語られていて興味深いものがあります。使側の対応に不満を述べるのもまあ当然と申せましょう。ただ、雇用戦略対話の「早期に800円、2020年に1,000円」という合意の金額部分だけを強調するのはいかがなものかという感はあり、やはり「名目3%・実質2%の経済成長」についても一定のウェートがおかれてしかるべきではないかという印象はあります。経済成長、生産性向上*1の裏付けのない最賃引き上げは、まあ再分配機能の強化という側面はあるにしても、失業増などの副作用もあるわけですから。「中賃目安をベースにして地賃の議論をしたい」というのも、中最審では「目安は取り切りではない」ということで合意しているわけでしょうから、希望としてはわかりますが無理なご注文というものでしょう。
 ただ、労側委員がこうした不満を洩らすのも理由はあるわけで、今年はとりわけ使側委員の姿勢が強硬で、47都道府県のうち全会一致で決着したのはわずか8県しかなく、残り39の都府県は多数決、しかも38都府県は使側委員全員反対という形で決着しています*2経団連タイムス3014号によれば、

 今年度の結審状況をみると、全会一致が8件、使用者側全員反対が38件、使用者側一部反対が1件となった。今年は使用者側全員反対が昨年度の16件と比べて急増し、最低賃金額を時間額表示に一本化した02年度以降で最多となった。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2010/0930/11.html

ということで、これは労使の協議と合意によって労働政策を決定するという三者構成の精神を著しく逸脱する由々しい事態ではないでしょうか。「月刊連合」の座談会を読むと、結局は公益委員が労使双方の言い分の間をとった案を出し、それで多数決という展開になっているようで、労組にしてみれば使用者が頑なだということかもしれませんが、それで済まされる状況ではないようにも思われます。
今年については結局は地方の使用者にとっては中賃目安が高すぎたということがこうした結果を招いた最大の要因でしょうから、各都道府県の経営者協会は経団連に厳重抗議するくらいのことはしてもいいのではないでしょうか。あと公益委員の先生方については、いやこれは言ってもせんないことなのでやめておきましょうか…。

*1:私としてはこの座談会で生産性向上があたかも「国と使用者がやるべきこと」というニュアンスで語られているのにはかなり不満で、それって労組も当事者であってほしいなあと思うわけですが、まあ連合には生産性運動に消極的な労組もあるようですからこのあたりが限界なのかもしれません。

*2:9月27日のエントリhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100927では東京都は全会一致だろうとの推測を書きましたが、残念ながら安西先生の説得をもってしても使側全員反対というのが実際の結果だったようです。おわびして訂正いたします。