記録回復基準の不徹底

まず3日の朝刊から。

 年金記録問題の被害者救済のために昨年12月から実施している記録回復基準の緩和策について、職員が知らなかったり誤って理解したりしている年金事務所が8割弱にのぼることが、厚生労働省が2日までに実施した覆面調査で判明した。8月中に、職員に基礎知識を確認するための試験や緊急研修を実施し、事態の改善に乗り出す。
 年金記録問題の早期解決を掲げる長妻昭厚労相の改革方針が現場に行き届いていないケースが多いことが浮き彫りになった。
 覆面調査は厚労相の指示で、全国120カ所の年金事務所を対象に7月上〜中旬に実施した。厚労相直属の年金記録回復委員会委員らが匿名で電話し、緩和策が適用されるべき事例を挙げて対応を尋ねたところ、正しい回答を得られたのは全体の2割強に当たる28カ所にとどまった。
 全120件の対応のうち「一部不適切、説明不足」が16件、「誤認」が4件、「知らない」が56件、「論外な対応」が15件だった。厚労相は「予想外にひどい結果だ。教育体制の根本的な見直しが必要だ」と語った。
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819481E2E0E2E38B8DE2E0E2EAE0E2E3E29797E3E2E2E2

論外な対応」というのがどういうものだったのかまず興味をひかれるわけですが、厚労省と年金機構のサイトをざっと見た限りではこの調査結果は公開されていないようなので、記事以上の情報はわかりません。
さて、不知・誤解のあった緩和策というのはこれのことと思われます。
http://www.sia.go.jp/infom/press/houdou/2009/h091225_02.pdf
これを一般国民が理解して自分がどうか判断せよというのはさすがに無理なご注文でしょう。となると、当然ながら疑問のある人は年金事務所に照会するわけで、そのときに正確な回答ができているのかどうか、たいへん心配になる結果です。たしかに対象者の数は多くはないでしょうが、きちんと周知徹底して適切な事務をお願いしたいものです。
さてそれはそれとして、「厚労相直属の年金記録回復委員会委員らが匿名で電話し、緩和策が適用されるべき事例を挙げて対応を尋ねた」というのもなんかやり口が陰険であまりいい感じはしませんねえ。まあ、実態を知るためには必要だということかもしれませんが、こういうやり方だと思うと、さぞかし意地悪な問い合わせをしたのだろうなあとか、わざと対応者が困惑するような聞き方をしたのかもしれないなあとか、まあ余計な邪推も出てくるわけです。もちろんそうであっても100%正しい回答がなされるべきだというのが正論ですし、そうあるべく努力してほしいわけではありますが、しかし結果は少々割り引いて慎重に評価すべきだという感もあります。
職員の周知を徹底することが目的であれば、なにも匿名抜き打ちでやることもなく、「抜き取りで覆面調査をやるよ」と事前に告知してやればいいわけで、もし自分が当たったら大変だということで、みんな予習に励むことでしょう。それで実際に覆面調査をしてみて、まあ100%にはならないにしても、90%とか95%とかは正確に対応できました、でも100%があるべき姿なんだからあと10%、5%頑張りましょう…というやり方のほうが、職員の意欲に与える影響はかなり良好なのではないかと思うのですが。
逆に、こういう調査を一度やってしまうと、たしかに「次がいつあるかわからない」と恐怖感を植え付けることで周知徹底が強化されるかもしれませんが、しかしそういう職場でぜひ働きたいと思う人も少ないでしょうねえとも思うわけです。
いや待てよ、事前予告の有無は記事からはわかりませんから、ひょっとして事前予告してこの結果だったとか…いやまさかね。