ぱ、ぱぱだんし?

あらかじめお断りしておきますがネタです(笑)
しばらく前の「スポニチ」にこんな記事が掲載されておりました。

 第1子が12歳以下の子供を持つ父親の73・4%が子育てにかかわり、“父親予備軍”の20代未婚男性の86・0%も将来関与したいとの強い意欲を持っていることが、23日までに電通がまとめた調査で分かった。「会社一辺倒の生き方に変化が生じていることが一因」と電通は分析している。
 同社は子育てに意欲的な男性を「パパ男子」と命名。レジャー、教育といった育児関連市場拡大の原動力として注目している。
(平成22年1月23日付スポーツニッポンから)

ぱ、ぱぱだんし?
おもわず目が丸くなってしまいましたが、気を取り直して続けましょう。

 子育ての利点を尋ねたところ「家族の一体感が高まる」が父親で59・7%、父親予備軍で56・0%と、それぞれ最多。「自分の生き方を見直すきっかけになる」は父親で35・5%、予備軍で41・0%と、比較的高い比率を占めた。
 父親は「子供と2人だけの時間をつくる」が59・2%、「寝かしつけ」は52・3%を占め、入浴や学校行事への参加など従来型の関与にとどまらず、幅広く子育てにかかわりつつある。
 育児休業は父親の49・7%が取得の意向を示した。ただ、3カ月間以上が理想と考える人が59・3%に対し、現実に取得できそうなのは1週間までとの回答が69・4%と、理想と現実のギャップは大きい。予備軍も70・0%が取得を希望する。
 父親600人、予備軍100人に昨年9月にインターネットで調査。子育ての利点と「寝かしつけ」など実際の関与の仕方は複数回答方式で、他の項目は択一方式で答えてもらった。

「自分の生き方を見直すきっかけになる」って、経験もしてない予備軍にわかるのかよとか、ツッコミたくなるところもありますが、まあ父親の育児参加が進むのはおおいにけっこうなことですし、若い人ほどそうした意識が高いのも好ましく感じます。行政の啓発活動が結実したと言いたいところかもしれませんが、これからの時代、育児参加しない男性は結婚できないというのがデフォルトになりつつあるような雰囲気も漂っていますから、女性の意識や行動の変化が男性の変化を促しているのではないかという気もします。「日本一芸のあるフェミニスト小倉千加子先生はすでに10年近く前に「男は仕事と家事、女は家事と趣味(的仕事)」と喝破しておられましたな。ま、結婚できないほうが育児参加するよりカッコ悪いのであれば、男性の育児参加が世間の大勢になればそれ以降は特段抵抗もなく広がっていくのかもしれません。望ましい方向性と申せましょう。
さてそれはそれとして「パパ男子」なんですが、とりあえず「パパ男子」でぐぐってみると、去年の年末に電通が調査結果のリリース(http://www.dentsu.co.jp/news/release/2009/pdf/2009093-1222.pdf)を出していて(スポニチ、なぜ今ごろ?)、それに関係した記事がいくつか引っかかってきます。・・・・・・が、残念ながらこれまでのところそれ以上の広がりはないようです。リリースをみると、記事にもあるように電通は「これらの子育てに意欲的な男性を「パパ男子」と命名し、今後、子育て市場の拡大を牽引する原動力として注目している。」ということで、「草食(系)男子」「弁当男子」の路線を狙って、これを大いに流行させて一山あてるぞとの意欲がありありなのですが、どうやら思惑外れに終わりそうな雰囲気です。
ま、まだ本当のパパではないけれど育児には関心のある若い男性…ということで「パパ男子」なんでしょうが、だいたい、いまどき男子・女子という用語が普通なのは学校とスポーツくらいのもんでしょう。となると、恋愛と弁当は学園生活につきものですが、育児となるとねぇ…。
さて、たしかに昔は職場で「女子社員」という言い方は普通にされていた時代があったように思います…が、いまやほぼ死語でしょう。実際、「女子社員」でぐぐるとアダルトがぞろぞろ出てきて辟易するのでアマゾンで検索してみると、どうやら80年代後半までは「女子社員」をタイトルに含む本が普通に出版されていたようで、著者が「三井銀行人事部研修所」の『女子社員の躾け方―こう教えれば,相手も素直に受け入れる!』なんて本が1884年に出ていたり、労働経済学の大家(だと思う。同名異人かもしれません)である桜林誠先生が『女子社員・定年到達者・身体障害者派遣社員の賃金と労務』なんて本を1988年に出されていたり、おやおや、著者「電通NGグループ」の『女性プランナー入門―電通女子社員たちの企画作り体験記』なんて本も1987年に出ておりますな。これは「女性」と「女子」が混在していてなかなか興味深い事例ですが…。で、明らかに1990年代に入ると「女子社員」と銘打った本は激減していて、これは察するに均等法の威光でありましょう。
それでは相方の「男子社員」はといえば、まあそう銘打った本もなくはありません。『男子社員AtoZ』(現代経営研究所、1987)なんて本もあることはありますが、書名に「男子社員」を含む例は「女子社員」に較べると非常に少ないようです。また、1970年の『こうすれば女子社員を戦力化できる―管理者と男子社員のために』のように、書名に限らず内容においても、「女子社員」とペアで用いられるケースがかなりの割合を占めているように見受けられます。ちなみにこの本、吉武輝子、貴島操子、樋口恵子という錚々たる執筆陣で、この顔ぶれでこの書名、どんな内容の本かぜひ読んでみたい…と思ったらユーズドが1冊出ていて9,800円じゃ手が出ねえよ。で、「管理者と男子社員のために」ということは、管理者(当然に男性という前提なのでしょう)以外の男性社員が「男子社員」ということなのでしょうか。この執筆者なら「女子社員」と言った以上は「男子社員」と言わざるを得ないというバランス感覚もあったのかもしれない…といろいろ空想は働くわけですが。
つまるところ、女性は就職後数年経てば結婚などで退職していくという前提があったから、女性社員は「女子社員」と普通に言われ、その対語として時折「男子社員」も用いられた…という俗っぽい理解がけっこう当たっているのかなあ、などと思ったりもします。
そこでパパ男子に戻りますと、その対語は「ママ女子」?それとも「おひとりさま女子」かな?前者はまさに小倉先生いわれるところの「男は仕事と家事、女は家事と趣味(的仕事)」で「カネとカオの交換」の結婚を志向するタイプ、まあこれが多数派なのかどうか。後者はなかなかどうして颯爽たる印象がありますね。それに対して「パパ男子」ときたら、いかにもそうした「女子」のご意向に諾々と従ってこうなりました…みたいな雰囲気がそこはかとなく漂いますよねえ。そんなニュアンスを感じるとすれば、育児参加に前向きな若い男性たちも「パパ男子」とは呼ばれたくない、そんな名称でカテゴライズされたくはないのではないでしょうか。
育児に積極的な若い男性が増えること自体は大いに歓迎すべきことですから、妙な用語を流行らせようとしてかえって逆効果、ということにならなければいいのですが。まあ流行らないでしょうから取り越し苦労でしょうが。