天下りあっせん禁止

きのうの日経新聞に載っていたのですが…。

 政府はあっせんを伴う国家公務員の天下りへの批判があることなどから、独立行政法人の役員への天下りを今後は基本的に禁止する方針だ。29日の閣議で決める。10月1日付の独法の役員人事は事前に決まっていたものは混乱を避けるため大幅に変えないが、新政権の閣僚が任命するものは一部認めないもよう。天下りのあっせんを伴う国家公務員の早期勧奨退職の禁止も確認する方向だ。
 28日に鳩山由紀夫首相と仙谷由人行政刷新相が会談して確認した。民主党は国家公務員の天下りのあっせんを全面禁止するとマニフェスト政権公約)に明記。まずは新政権の閣僚に任命権のある独法について対応方針を決めることにした。(07:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090929AT3S2803328092009.html

なにをどこまで禁止するのかがよくわからないのでなんとも言えないのではありますが、「役員への天下り」ということですから、とりあえず管理職レベルくらいで行われている官庁と独立行政法人との交流人事(たとえば、キャリア官僚のhamachan先生が独法の労働政策研究・研修機構の統括研究員に「天下り」しているとか)は禁止されるわけではないんでしょうね?独立行政法人というのは行政の一定の役割を担っているわけですから、官庁との人事交流はあったほうがいいというか、むしろ必要ではないかと思うのですが…。この場合はもちろん官庁の人事で行くわけですから官庁の「あっせん」ということにもなるのでしょうし…。
まあ、「役員への天下り」で、「早期勧奨退職の禁止も」やるということですし、他のメディアでは「定年まで官庁で勤めるようにする」ということも云われているようですので、官僚のキャリア末期における「天下り」を禁止するということでしょうか。ここは確かに国民の批判が強いところではありますし、民主党も口を極めて批判してきたところでもあります。もっとも、国民の批判が強いのは天下りそのものではなく、天下った官僚の高額退職金とかいった厚遇に対するものが大半で、あとは天下りの人的つながりによる政府調達の優遇発注にともなうムダづかいへの批判もあるでしょうが、待遇が「適正*1」で優遇発注などの弊害もないのであれば、経験や知識に照らして独法の役員に官僚OBが適任・適材であることをもって「天下り」が行われることまでは(少なくとも強くは)批判されないではないかと思いますが。
実際、独法の多くは「天下り」で役職を充足することを前提に人事管理を行っているのでしょうから、いきなりそれが来ないということになると、役員人事に大いに支障をきたすのではないでしょうか。世間には独法の役員というのがとんでもない閑職だという思い込みがある(事実とんでもない閑職もあるでしょうが、実際そうでもない例もあります)ようですが、本当にそうなのか、そこは実態をふまえて議論する必要があるでしょう。
もっとも、マニフェストには「天下りのあっせんを全面禁止」と書いているということは、「あっせん」ではない天下りまでは禁止しないとも読めます。実際、すでに独法役員を公募して、そこに官僚(OB)が応募して採用され就任する、というアイデアも出ているのだとか。公募というとおおげさですが、要するにハローワークに求人を出せばいいわけで、そのときに独法役員たるに必要な資質を明示すれば、官僚OB以外にはなかなか適任者も見つからない、ということがはっきりするでしょう。…と、うまくいけばいいのですが、こんな仕事だったら誰でもできるだろう、それでこの厚遇だったら俺だって、という人が(しかもそれなりの人が)次々と出てきたら選考過程をどう説明するのか、という悩ましい問題になるかもしれませんが…。
となると、やはり「厚遇」にも限度はあるわけで、前払い的な人事制度の見直しはどうしても避けては通れなくなりそうです。民主党が一方で官僚たたきを熱心にやり、一方でこうした必要な見直しを行うというのは、なかなか両立困難な課題になりかねないという心配もなきにしもあらず、ですが…。

*1:現実には、キャリア官僚は強烈に後払い的な賃金制度になっており、若〜中年時の低すぎる処遇、苛酷な激務などをキャリア末期に「取り戻す」必要があることを考えると、天下りの厚遇は実は生涯でみれば「適正」だという考え方もあり、私も多分にそう思ってはいます。為念。