企業スポーツで業績向上

これはうれしい話。日経新聞企業総合面のコラム「回転いす」は、企業経営者の雑感をコンパクトにまとめた楽しい記事ですが、一昨日(7日)は雪印乳業の高野瀬社長が登場し、企業スポーツについて言及していました。

▽…所属選手2人がスキーのジャンプでトリノ五輪に出場する。メダルへの期待はともかく、「元気で明るい笑顔で戻ってきてほしい」との言葉を手向ける。企業スポーツを取り巻く環境は厳しくなっているが、「スキー部がなくなる時は当社がなくなる時」と継続を断言。若手選手の採用も続けるという。
▽…食中毒、子会社の牛肉偽装表示と事件が相次いだ中でも「廃部の意見は全く出なかった」。むしろ「社員の士気向上と企業イメージの回復に必要不可欠だった」と振り返る。苦しい時こそ企業スポーツが効果を発揮すると強調していた。
(平成18年2月7日付日本経済新聞朝刊から)

事件が続いた当時はいまにも倒産するかという印象すらありましたから、その中でも企業スポーツを続けてきたというのはよほど大切にしているのでしょう。


実は、先月も日本電産の永守社長が、同じ「回転いす」で企業スポーツを話題にしています。

▽…企業スポーツを巡る環境が厳しさを増す中で、グループの日本電産サンキョーのスケート部の活躍を目の当たりにして「社員の士気向上の効果は大きい」と驚く。トリノ冬季五輪には5人の所属選手のうち4人が出場を決めた。自身も激励に訪れる予定だ。
▽…スポーツ媒体への社名の露出が増えて「宣伝効果も予想以上」。一時は存続も危ぶまれたスケート部だが「最盛期並みの選手20人体制に拡大する」と宣言する。シェアを重視する本業と同様に順位にはこだわり、「四年後の冬季五輪は男女とも金銀銅を独占」と目標は高い。
(平成18年1月18日付日本経済新聞朝刊から)

企業スポーツというと「宣伝効果」や「社会貢献」が強調されがちなように思いますが、やはりその原点は社内の一体感の情勢、士気の向上といった労務施策であるということなのでしょう。企業スポーツ(とりわけ社会人野球)を愛する私としてはうれしい話です。
バブル崩壊以降、企業スポーツの廃部・休止が相次いだのは、当然ながらリストラ、経費節減の一環として、「株主の利益を生まない」企業スポーツがターゲットにされたのだろうと思います。
雪印日本電産サンキョー(旧三協精機)も、経営危機に陥り、厳しい経営再建を余儀なくされた点では同じですが、この2社は逆に企業スポーツを存続させたことで、リストラに取り組むエネルギーを生み出したということでしょう。これに限らず、日産の再建に乗り込んできたカルロス・ゴーン氏が当初は野球部を廃部しようと考えていたものの、都市対抗野球を観戦し、その応援の盛り上がりをみて「野球は日産の企業文化」と考えを変えたというのは有名な話です。とりわけ雪印の場合は、マスコミや世論の批判、指弾を浴びつづけていたわけで、そうした中で従業員がプライドや誇りを守ることができたのは、意外にシンボル・スポーツの存在が大きな役割を果たしていたのかもしれません。
企業スポーツはマスコミの露出も少なく、地味な印象がありますが、従業員の意欲を高め、ひいては業績の向上に結びつくという効果があるということを、経営者も投資家もぜひとも認識してほしいと思います。

  • それにしても、ほとんどの場合社会人スポーツのほうが学生スポーツよりはるかに技術レベルが高く(しかも、野球のようなプロがある競技以外はほぼ社会人が日本の最高水準ですし)、観戦して面白いにもかかわらず、どうしてマスコミは学生スポーツ(とりわけ高校)のほうを大きく取り上げるのでしょうか?高校生、ということに特別の付加価値があるのでしょうか?なんとも不可解です。