「髪バッサリ」に慰謝料24万円

たまには(本当か?)下世話な話題もいいでしょう。今朝の日経新聞の社会面にこんな記事がありました。

 東京・歌舞伎町のキャバクラに勤める女性(27)が、「美容院で希望に反して髪を短くされ、収入も減った」として、都内の美容院経営会社に慰謝料など600万円を求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であった。水野有子裁判官は「女性は髪をアピールポイントとしていたのに自信が持てなくなった」と述べ、慰謝料約24万円の支払いを命じた。
 水野裁判官は「美容師が十分な確認を怠り、結果として意に沿わない髪形となった」として、美容院側の過失を一部認めた上で、「容姿の美しさが重視される職業で、髪形は大きく影響する。女性は接客にも自信が持てなくなった」と述べ、慰謝料支払いを命じた。
(平成17年11月17日付日本経済新聞朝刊から)

いかにも三面記事的な「ふーんニュース」ですが、これも一種の労働問題でありましょう。


容姿が重視される職業だから髪型が「資本」であるというのはうなずける考え方ではありますが、髪の毛はまた伸びるわけですから、不可逆的な毀損を受けたとはいえませんし、「十分な確認を怠り」という以上は自分の希望をきちんと伝えなかったという点で原告にも非があるということで過失相殺をしているのでしょうから、24万円の慰謝料というのは妥当な線ということなのでしょうか。
むしろ興味があるのは「600万円」という請求の根拠です。裁判としては高額とはいえないでしょうが、それにしても一般的なサラリーマンの年収を上回る金額です。「収入が減った」ということですから、基本的には髪を切る前後の収入を比較して、その差額を根拠にしているのだろうと思います。もちろんこの中には純然たる精神的被害に対する慰謝料も含まれているでしょうし、期間がどのくらいかにもよりますから、収入減がどの程度なのかはわかりません。それにしても、髪型で収入が半減するほど売上が落ちるとも思えず、そう考えると「差額で600万円」ということは、接客業とはなかなか稼げる仕事なのでしょうか。
いずれにしても、経営者(この事件では美容師ではなく美容院経営会社が被告になっています)は、美容師とは人的資本をメンテナンスする職業であるという意識を徹底する必要があるということでしょうか。