日記

まさか自分が兼業することになるとは。今年度から会社勤めのかたわら中央大学ビジネススクール専門職大学院戦略経営研究科)で客員講師を務めることになりました。もっとも講義は後期の後半期なので11月以降になるのですが「キャリア管理論」を講じます。ということで曲がりなりにも(かなり曲がりなりですが)現役復帰したということでブログ名称を変更というか元に戻しました。どうぞ人生100年時代の学び直しは中央大学ビジネススクールで(←さっそく宣伝)。在勤のまま学べるプログラムになっておりますので40歳定年で退職する必要はまったくありません(おい)。

中部産政研第6期調査研究報告書『一人ひとりが力を発揮するための職場風土と職場環境』

(公財)中部産業・労働政策研究会様から、第6期調査研究の報告書をお送りいただきました。ありがとうございます。今回の研究主査は今野浩一郎先生と上野隆之先生で、まだ中部産政研のウェブサイトにはアップされていないようですが、まもなく掲載されるでしょう。
http://www.sanseiken.or.jp/research/
内容は表題のとおりなのですが、ホワイトカラーの「この仕事は自分の仕事だと考える=当事者意識」と「この仕事は自分の仕事として取り組む=当事者行動」に着眼し、これらが仕事の成果と相関することを確認した上で、本人の意識や人事管理との関係を検証しています。
非常に多岐にわたって「なるほど、そうだろうな」という実感に合う結果が多く導き出されていますが、いくつか目についたところをつまみ食いでご紹介させていただくと、まだ経験の浅い若手は全年齢と較べて相関関係が出にくい傾向が明らかに見られるのですが、本人要因「責任のある仕事は任されたくない」についてはは全年齢では当事者意識/行動と有意な相関がない一方、若手ではかなり大きな負の相関を示しています。意欲ある若手は責任ある仕事を任せてほしいと考えていることの現れでしょう。「規模が大きな仕事」も全年齢では相関がありませんが若手では当事者意識とやはり強く相関しています。人事管理においては全年齢・若手ともに「挑戦的な仕事を与える」が当事者意識/行動と強く相関しているのとも整合的で、能力・キャリア形成に有意義な「少しストレッチした仕事」の付与の重要性がうかがわれます(そしてそれが上位になるほど稀少な資源であるところに人事管理の難しさがあるわけですが)。
人事管理で面白いのが「ほめてくれる」が全年齢・若手とも有意でないのに対し、「叱ってくれる」は全年齢で有意にプラスの相関を示しています(若手では有意ではない)。このあたり一般的な傾向がどうなのかよく知らないのですが「ほめて伸ばす」のは子どもだけという話なのか、ほめられるのは当たり前であって(ある程度経験を積むと)叱られるのをむしろ期待の表現として歓迎するという話なのか…。
「人事考課は公正である」については、全年齢で当事者意識と、若手で当事者行動と有意に負の相関を示していて、まあこれもやる気のある人ほど評価に不満を感じやすいということなのでしょうか。
もうひとつ、「仕事の集中に配慮する」が全年齢で当事者行動と有意にマイナス相関していて、これも意欲の高い人は仕事が増えることを厭わないのだと考えれば納得いくものがあります。これまた巷間「働き方改革」「長時間労働の抑制」でメンバー間の負荷の平準化がマネージャーの大事な仕事とか言われているわけですが、メンバーとしてみたらそんなの望んでないという話なのかもしれません。もちろん程度問題で過度な集中は困るでしょうし、なにより見返りがあるのならという話でもあるでしょうが…。
ということでなかなか面白い調査結果です。楽しみに勉強させていただきたいと思います。

日本労働研究雑誌4月号

(独)労働政策研究・研修機構様から、日本労働研究雑誌4月号(通巻693号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/04/index.html
例年4月号の特集は一般向けに短めの読み物で構成されているのですが、今回は「この国の労働市場」ということで、冒頭のhamachan先生こと濱口桂一郎JILPT研究所長による「横断的論考」に続いてアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン、韓国の労働市場について各国の専門家が紹介していて、例年のようなエッセイではなく論文になっています。中国がないのが少し残念だったかな。解題にもあるように海外事例を参照しながら議論することは多いわけで、主要国について労働市場の全体像を知ることは非常に有意義でしょう。こちらも楽しみに勉強させていただきたいと思います。

HRmics29号

(株)ニッチモの海老原嗣生さんから、HRmics29号をお送りいただきました。ありがとうございます。
こちらから全文がお読みになれます。
http://www.nitchmo.biz/hrmics_29/_SWF_Window.html
今号の特集は「高等教育、無償化の前に考えること」、表紙に「欧州事情から見えてくる、今、本当にやるべきことは?」と大書されているように欧州、特にドイツの事例から高等教育の在り方を考え直そうというものです。
ごくごく大雑把に言ってしまえば(本当に大雑把です)日本企業が新卒一括採用で未熟練の新入社員を働かせながら(給料を払いながら)人材育成しているのに対して、ドイツでは(進学率が上がったこともあり)学生さんがカネを払って企業でOJTを受けているということであるらしく、日本も高等教育無償化をやるならアカデミアではなく職業的意義のある大学を増やすべきだということのようです。これまたしっかり勉強させていただこうと思います。