阿部正浩先生

今朝の日経「経済教室」に、独協大学教授の阿部正浩先生が「失業の増加と長期化 失職より転職失敗が主因」という論考を寄せておられます。見出しには「ミスマッチ克服重要 成長部門へ人材の移動を」とあります。非常に参考になる内容なので、ご紹介したいと思います。

 労働統計指標にはストック指標とフロー指標とがある。…フロー指標を用いて直近の失業率上昇と失業長期化の背景を検討してみよう。…08年前後でフロー指標に変化があったことがわかる。
 特に変化が見られるのは、転職成功、失業化、失業継続、失業離脱(入職)の各指標である。…08年以降に転職成功指標が低下する一方で、失業化指標は上昇しており、仕事を離職した人が1年以内に職を見いだせない傾向が強まっている。同様に、失業継続指標は上昇し、失業離脱(入職)指標は低下している。つまり、仕事を辞めた人や失業中の人の転職成功確率が低下し続けているという変化が08年以降に確認される。
 08年以降の失業率上昇の要因として、いわゆるリストラの増加や非正規雇用者の雇い止めを問題視するのが一般的だ。しかし、フロー指標を見る限り、それらが失業を押し上げた第一の理由ではない。むしろ離職者や失業者の転職成功率が低下したことが、失業率上昇の要因としては重要だ。とりわけ、若年層の転職成功率の低下が直近の失業率上昇に大きく影響している。
 25〜34歳の失業者のうち1年以上失業している長期失業者の割合は、2000年以降高まる傾向にあるが、特に10年4〜6月になると3人に1人の水準にまで達している。以前であれば、中高齢者層と異なり、若年層が離職する率は高いが、彼らの転職成功率も高く、結果として失業期間は相対的に短いという特徴を持っていた。しかしながら、09年以降には25〜34歳の長期失業者割合は45歳以上のそれを上回ってしまう。そもそも離職率が高い若年層の転職成功率が悪化すれば、失業率は当然悪化する。
 では、転職成功率が低下している原因は何か。最も影響している要因は「空席」の仕事が絶対的に少ないことだ。10年7月時点で、ハローワークに有効求職者として登録されている人が274万人にいるのに対して、登録されている有効求人数は136万件しかない。求職者の2人に1件しか求人がないのである。
 こうした状況下では、求職者と求人の条件が一致する仕事はさらに絞られる。09年上期に企業が充足できなかった産業別求人数(厚生労働省「雇用動向調査」)と09年4〜6月の前職産業別の失業者数(前記『労働力調査』)を比較すると、失業者全体の6割にあたる建設業や製造業、卸売・小売業や一部のサービス業で相対的に求人数が少ない。一方、相対的に求人数が多いのは宿泊業・飲食サービスや医療・福祉などであるが、これら産業を離職した失業者は全体の16%にすぎない。
 同様に職業別の比較をすると、専門的・技術的職業従事者や保安職業・サービス職業従事者で相対的に求人数が多く、事務従事者や製造、機械運転、建設作業などで相対的に求人数は少ない。この結果、求人が相対的に少ない産業や職業を離職した人が長期失業する確率が高まっている。
 一般に仕事を探している人の多くは、前職で培ったスキルを生かすため、同じ産業や職業で職探しをする傾向にある。しかし、産業や職業の構造が変化すると、衰退する産業・職業を離職した人々は求職難に直面し、成長する産業・職業では求人難に直面する。こうして生じる産業や職業のミスマッチ失業を克服するには、衰退部門に補助金を与えて離職失業を未然に抑止するか、教育訓練や労働市場のマッチング機能を強化して人的資源を衰退部門から成長部門へ積極的に移動させていくことが必要となる。
 リーマン・ショック以降にとられたのは、企業に補助金を与えて未然に失業を防止する政策であった。…08年以降も就業継続指標に大きな変化が見られないが、その理由として09年初めから利用が急増した雇用調整助成金の果たした役割は大きい。

 雇用調整助成金の利点は、一時的なネガティブショックによる雇用調整を回避することで、景気回復後に同一企業に保蔵された労働者の人的資源を早期に活用できる点にある。この利点を社会が生かすには、助成された企業や仕事が将来成長することが期待されねばならない。さもなければ、保蔵された労働者も企業の衰退とともに、いずれは雇用調整を余儀なくされる。その場合、助成金は市場から退場すべき企業と仕事を延命させているにすぎない。
 特に最近は、国際競争の激化によって競争力を失いつつある仕事が国内に出てきている。そうした仕事では、非正規労働者の活用などで労務コストを抑える努力がこれまで懸命になされてきた。しかし、こうした対応もいずれ限界が訪れるだろう。競争力を失った仕事をどの程度国内に残すべきか、考える時期に来ていると思う。
 雇用不安を解消するには、雇用を保蔵し雇用継続確率を高めるような政策をとるべきなのか。あるいは、新たな雇用を創出すると同時に、労働者の教育訓練やマッチング機能を高度化して転職成功確率を高める政策をとるべきなのか。今後の日本経済を取り巻く環境変化の下では、後者の政策が望まれると筆者は理解している。
(平成22年9月24日付日本経済新聞朝刊から、以下同じ)
http://www.nikkei.com/paper/article/g=96959996889DE3E7E3E1EBE6EAE2E0E1E2EBE0E2E3E29997EAE2E2E2;b=20100924

さて阿部先生によれば2008年以降の労働市場の特徴は、雇用失業情勢の悪化の要因として「派遣切り」などのリストラや非正規労働者の雇止めによって失業の発生が増加した以上に、失業した人の再就職が困難で失業が長期化していること、とりわけ若年にそれが顕著に見られることにあるということです。そして、その要因としてこう書かれています。

…最も影響している要因は「空席」の仕事が絶対的に少ないことだ。10年7月時点で、ハローワークに有効求職者として登録されている人が274万人にいるのに対して、登録されている有効求人数は136万件しかない。求職者の2人に1件しか求人がないのである。

ということで、最大の要因は需要不足だという見解が明快に示されています。したがって、現状の雇用失業情勢を改善させるには需要の増加をはかる、つまり経済の活性化をはかることが最大の効果を持つわけですが、阿部先生は直接的効果とは関係なくミスマッチのほうにご関心があるということで、限られた紙幅の中で労働需要増加策の重要性については自明のこととして敢えて述べられなかったのでしょう。ちなみに見出しの「ミスマッチ克服重要」が阿部先生のご関心を反映するいっぽう、冒頭にまとめられた「ポイント」には3つに絞られたポイントの1つとして「求職者の2人に1人しか求人がない状況に」があげられていてなかなかいいバランスになっています。日経GJ。
さて続いて論考はミスマッチの議論に移りますが、現状が紹介されたあと、ミスマッチ失業の克服策としてこう書かれています。

…産業や職業のミスマッチ失業を克服するには、衰退部門に補助金を与えて離職失業を未然に抑止するか、教育訓練や労働市場のマッチング機能を強化して人的資源を衰退部門から成長部門へ積極的に移動させていくことが必要となる。

これがまともな議論というものですよねえ。さすがに阿部先生は、どこぞのビジネス誌論説委員のように「ミスマッチ失業の克服のために解雇規制を緩和して労働市場を流動化させろ」とかいった暴論を述べたりはされません。
さて、阿部先生は省略した部分で雇用調整助成金の費用対効果について触れられ、衰退産業の出口戦略の重要性を述べられています。これまた非常にもっともなご意見と思われますが、逆にばっさり打ち切って衰退産業を「突然死」させるのがいいかどうかは微妙なところだろうと思います。雇用調整助成金の趣旨は「一時的な」売上や生産量の減少に対する雇用調整を助成するものなので、それほど遠くない未来にいずれ売上や生産量が回復することが予定されています。建前としては「元に戻る」ということかもしれませんが、実際問題として、衰退産業もリニアな右肩下がりで衰退していくわけではなく、景気循環などに応じて、業績が沈んだと思ったら少し浮上し、また沈んで、また少し浮上して…と元には戻らないまでも波打ちながら衰退していくわけです。この場合、沈んだときに人を減らして、少し戻したときにまた少し人を増やして…ということで衰退産業が新規雇用を吸収するのもあまり喜ばしい話でもないでしょう。そう考えれば、衰退産業が雇用を維持しつつ、自然減などでゆるやかに人を減らしていって、あるところで商売をたたむ…という形で、極力雇用を維持しつつ「安楽死」させるための道具として雇用調整助成金を活用するという考え方もあってもいいのではないでしょうか。まあ本来の趣旨とは違うかもしれませんが。
さて、これを読む際にもうひとつ注意すべき点があるように思われます。阿部先生は結論として、

 雇用不安を解消するには、雇用を保蔵し雇用継続確率を高めるような政策をとるべきなのか。あるいは、新たな雇用を創出すると同時に、労働者の教育訓練やマッチング機能を高度化して転職成功確率を高める政策をとるべきなのか。今後の日本経済を取り巻く環境変化の下では、後者の政策が望まれると筆者は理解している。

とまとめておられますが、ここでは新たな雇用を創出すると同時にというのが最重要のポイントと思われます。「同時に」というのは最低限であって、実際にはこれを先行させることが望ましいでしょう。これまたあまりに自明なことなので阿部先生はわざわざ書かれなかったのだと思いますが、単純に考えて、求職者2人に対して求人が1人しかないという状況の中で「雇用継続確率を高めるような政策」を打ち切ったら、いかに「教育訓練やマッチング機能を高度化」しても大幅な失業増、一段の長期化は避けられないはずです。いっぽう、新規雇用創出策が奏効して求職者1人に対して1人以上の求人があるような状況になれば、「雇用継続確率を高めるような政策」を打ち切っても「教育訓練やマッチング機能を高度化」すれば雇用失業情勢の改善が期待できます。つまり、現状は「雇用継続確率を高めるような政策」と「教育訓練やマッチング機能を高度化」の二者択一ではなく、双方を並行して行う必要がある時期だと思われます。重要なのは、後者の効果がしっかり出たら前者を徐々に縮小していくという手順とタイミングではないかと思われます。まあ言わずもがなという感もありますが、しかしこういう論考を読むと都合よく二者択一と受け止めて「そうだそうだ、今後は雇用調整助成金なんかやめて教育訓練とマッチングだ、解雇規制緩和だーわはははは」とか言い出す残念な人がいそうな気がするもんですから。いませんかねそんな人。

大手商社、採用開始時期見直しを要請

就職活動の早期化・長期化が問題になる中、大手商社7社が採用活動開始を「4年生夏以降に」 するよう経団連に検討を要請したそうです。日経新聞がきのうの1面で報じていました。

 三井物産三菱商事など大手商社は日本経団連に対し、企業の大学新卒者の採用活動時期を遅らせるよう呼びかける。毎年4月ごろから面接や試験が始まるが、就職活動の長期化が学業の妨げになっているとの声が強い。企業が採用時期の目安にしている経団連の「倫理憲章」の見直しなどを要請する。就職人気の高い商社の提案は、産業界で論議を呼びそうだ。
 雇用情勢の悪化を背景に大学生の就職活動は早まっている。今では3年生の秋に就職活動を開始。大手企業は4年生の4月ごろに採用試験をするが、内定をもらえずに秋まで就職活動を続ける学生も多い。
 学業に影響が出るほか、企業側にも学習経験や問題意識が不十分な学生が多いとの不満がくすぶっている。
 日本貿易会の槍田松瑩会長(三井物産会長)の呼びかけで今週、大手商社7社の人事部長が集まり、見直しへ向けた協議を始めた。
 2013年春入社の新卒から、企業の採用活動を遅らせるよう経団連に働きかけるとともに、商社の採用試験時期も見直す。4年生の夏以降に遅らせることが可能かなど、検討する。7社の今春入社の新卒総合職は合計730人だった。
 日本経団連は「企業の採用のあり方については選考活動の開始時期も含めて継続的に幅広く議論している」といい、今後、本格的な見直しにつながるか注目される。
(平成22年9月23日付日本経済新聞朝刊から)
http://www.nikkei.com/paper/article/g=9695999693819696E0E0E2EB918DE0E0E2EBE0E2E3E29F9FEAE2E2E2;b=20100923

11面にも関連記事があります。

 新卒採用活動の早期化は学生の学業に影響を与えるだけでなく、企業にとっても負の側面が小さくない。例えば多くの企業が国際感覚を身につけた人材の採用に力を入れているにもかかわらず、就職活動がネックとなって海外に留学する学生数は年々減少している。企業が優秀な学生をいち早く囲い込む従来の新卒採用は曲がり角を迎えている。
 企業と大学が会社訪問や内定の解禁時期を申し合わせた「就職協定」が1997年に廃止されてから、大学生の就職活動開始時期は次第に早まっている。
 現在は日本経団連が早期選考の自粛を促す「倫理憲章」を定めている。ただ、「卒業学年に達しない学生に対して面接など実質的な選考活動は厳に慎む」との表現にとどまっているため、4年生になったばかりの学生に内々定を出す企業も多い。
 多くの企業が国際競争を勝ち抜くための人材を求めているにもかかわらず、就職活動の早期化は学生の“内向き志向”を強める一因にもなっている。2001年に約4万7000人いた米国への留学生数は08年に約2万9000人まで減少した。企業は採用する学生を厳選する傾向を強めており「大手企業でも実際の採用数が計画数に満たないケースが増えている」(毎日コミュニケーションズ)という。
 国立大学協会などはこれまでも経団連に対して採用活動早期化の是正を要請するなど、学業に専念できる環境づくりを訴えてきた。一橋大学キャリア支援室の高橋治夫シニアアドバイザーは大手商社が採用時期見直しの検討を始めたことについて「夏休みを活用して就職活動に専念できるようになれば学生のメリットは大きい」とみる。
 ただ、商社の一部には産業界で歩調が合わなければ優秀な人材確保に支障が出るとの慎重論も根強く、早期の見直しが実現するか流動的な要素もある。
(平成22年9月23日付日本経済新聞朝刊から)
http://www.nikkei.com/paper/article/g=9695999693819696E0E0E293988DE0E0E2EBE0E2E3E28698E0E2E2E2;b=20100923

「産業界で歩調が合わなければ優秀な人材確保に支障が出るとの慎重論も根強く」ということで「経団連の「倫理憲章」の見直しなどを要請」するという、いささか歯切れの悪い話になっているわけですが、さすがにいかに就職人気の高い大手商社といっても7社だけでは新卒就職市場への影響力は限られているでしょうから、まあ致し方のないところでしょうか。
理屈としては、就職人気が高くて採用力の強い(と思うのですが)経団連各社が「夏からしか始めません」と言って本当にそうすれば、「比較的採用力の高くない企業が4月に内定を出す」→「経団連各社が夏以降に内定を出す」→「4月に内定を出した各社で辞退続出」→「4月に内定出してもしょうがないから夏以降にしよう」ということになるだろう…ということでしょうか。まあそうなってもよさそうな気もしますが、はたしてそううまく行きますかどうか。
実際、現状すでに似たような状況はあるわけで、当の大手商社さんたちも今は4月くらいに内定を出しているでしょうが、その有力な競合相手と目される中央省庁(I種)の内定は7月下旬くらいです。したがって、そこでおそらく一定数の辞退者が出ているのではないかと思われますが(三菱商事に内定してたけどヤッパ経産省行きますとかね)、まあ毎年の話なのでどのくらいの歩留まりかは経験則でわかっていて、それを見込んで各社とも4月に多めに内定を発行しているのでしょう。これもあって大手商社は遅らせる時期を「夏以降」としているのかもしれませんが、仮に経団連各社が採用活動を夏以降開始にしたとしても、他社にしてみれば「辞退が出る分、多めに内定を出さなければいけないな」という程度の話で終わってしまうのかもしれません。これは企業の採用に限らず、たとえば大学入試などでも起こっている話です。
もっとも、こうした対応で間に合うのは歩留まりがある程度高い場合で、予想以上に辞退が出た場合、大学なら(それなりに受験者が集まる大学に限られますが)補欠合格を出せばいいわけでそれで受験料は入るし入学金は入るしでこらこらこら。いや今では入学金は返還する大学が多いのかな。企業はさすがに補欠合格というわけにはいかないので、追加募集・採用ということになるのでしょう。とはいえ、内定出したはいいけれど半分以上が辞退しましたとか、追加募集を不要にするには採用予定数を確保するにはその3倍も内定を出さなければいけないとかいうことになるとさすがに話が成り立ちません。そうなると、どうせ夏以降に経団連各社に刈り取られるんだから刈り取られたあとにやったほうが楽でいいやと思う企業も出てくるかもしれません。もちろん、テマヒマかけても手付かずの段階でチャレンジしたいという企業もあるでしょう。このあたり、残りものに福があると思うかないと思うか、どの程度あると思うかによるわけですが。
いずれにしても、早期化を是正するには、採用力のある企業がかなりの多数参画することが必要だということになりそうで、そういう意味では大手商社が経団連に要請したというのは合理的だといえるでしょう。
なお、長期化についても、開始が遅くなればその分短くなるのは自明の理というものでしょうし、上記の「採用力のあまり高くない企業が早く内定を出しても辞退が増えるだけだから採用力の高い企業のあとで採りましょう」というのが理想的に徹底されれば、学生さんが最初の内定を得たときにはそれ以上に魅力的な募集はなくなっていて、したがってそこで就活が終わることに理屈上はなります。これは実は企業にとっても採用コストをかなり低下させるのですが、しかし「コストはかかってもいいからいい人材を採れるチャンスに賭けたい」と考える企業も多そうですから、なかなかそう理想的な「打順」はできそうもありません。当然、学生さんによってどんな企業が魅力的かと考えるかは違うでしょうし。企業の側もあまり長期間をかけないようにすることも大事なのでしょうが、しかし予定数に満たない段階で打ち切るのも難しいでしょうし、求める人材もまた企業により/企業の中でも多様でしょうから、結局はある程度の期間をかけていかざるを得ないのでしょう。ただ、開始を遅らせることは遅れた期間以上に長期化を抑制する可能性はありそうで、そういう意味でも採用開始時期の見直しはやってみる値打ちがありそうです。
ただ問題は2つあって、ひとつは経団連会員企業がすべてこれに賛同し参加したとして、それでどれほどの影響力があるのかという点、もうひとつは経団連にはたしてそこまでの指導力があるのか(失礼)という点です。
前者については、経団連会員企業の新卒採用市場におけるプレゼンスがどの程度のものかによるわけですが、ちょっと見当がつきません。傘下の業界団体の会員企業まで足並みを揃えることができればだいぶ影響力がありそうですが、そうなるとますます第二の問題である指導力が問われそうです。
実際、採用の早期化は古くからある問題で、朝鮮特需の頃にはすでに社会問題になっていました。それ以降、大学、企業、官庁がなどが参加して懇談会を作ったり協定したりとあれこれ努力はしてきたわけですが、結局はやった当座はそれなりに改善するものの徐々に抜け駆けが増えて早期化し、正直者が馬鹿をみる…という話が繰り返されてきました。もっとも、1996年に就職協定が廃止されたことでさらに急速に早期化が進みましたし、過去もやった当座は一応は効果もあったわけですから、今回もやってみて悪い話でもないでしょう。過去は当然ながら旧日経連主導で行われてきたわけですが、今回は経団連と合併してパワーアップしているでしょうから、指導力も向上しているかもしれません。ということでやってみて損はないように私には思えますがどんなもんなんでしょうか。まあ、どこまで行っても「産業界で歩調が合わなければ優秀な人材確保に支障が出るとの慎重論」との兼ね合いで、まさか罰則付とかで規制するわけにもいかないのでしょうから、結局はいずれ紳士協定を守らずに抜け駆けする「紳士」が続出するといういつか来た道になるのかもしれませんが。