労働政策研究・研修機構、仕分けられる

現政権の最大イベント、「事業仕分け」第二弾がはじまり、労働政策研究・研修機構(JILPT)も本日仕分けの対象となりました。機構全体が仕分けられたわけではなく、行政刷新会議のサイトによれば(1)労働行政担当職員研修(労働大学校)、(2)労働政策研究(職業情報・キャリアガイダンスツールの研究開発)、(3)成果普及等、この3つが仕分けられた模様です。結果はと申しますと、asahi.comによれば…

 労働政策研究・研修機構については、ハローワーク職員らへの労働大学校の研修事業は「国などが実施し事業規模を縮減」。機構の労働政策研究・成果普及事業は「一定の役割を終えたため廃止」との結論が出た。
http://www.asahi.com/politics/update/0423/TKY201004230202.html

日経によりますと…

 労働政策研究・研修機構の手掛けるキャリアガイダンス事業に関しては「この分野は民間のほうが優れている」などの意見が多く、「廃止」と決定。同機構の労働大学校は「国などが実施で事業規模は縮減」と判定した。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0E1E2E3EB8DE0E1E2E6E0E2E3E29F9FE2E2E2E2

と、相成ったようです。
労働大学校については、そもそも労働研修所という厚生労働省の機関(施設等機関)だったわけで、それを2001年の特殊法人等整理合理化計画にもとづいて、2003年に当時の日本労働研究機構にくっつけて労働政策研究・研修機構として独立行政法人化したわけです。で、今回また国がやるということですから、いわば元に戻すわけですね。まあ、縮小するそうですから、旧労働研修所のような機関とはせずに、官房の人事課か総務課あたりでやるということかもしれませんが…。それにしても、法改正や制度改正も多いですし、雇用失業情勢が厳しくて職安も労基署も役割が重くなっているはずなんですが、本当に研修を縮小していいものかどうか…。
キャリアガイダンス事業については、JILPTはかなり体系的に研究して充実したものを作り上げています(http://www.jil.go.jp/institute/seika/index.html)。まあ、たしかにこうしたことに関してはリクルートとかの方が優れているのではありましょう(リクルートのキャリアガイダンスのページはこちら。http://shingakunet.com/career-g/リクルートの回し者かおまえは)。ただ、一応それなりにこれを公的に行うということについても理念をもってやっているわけです。JILPTの下村英雄副主任研究員がそのあたりを書いたコラムがJILPTのサイトに掲載されています。http://www.jil.go.jp/column/bn/colum091.htm

…「キャリアガイダンスの効果をいかに実証するのか」というテーマは、キャリアガイダンス研究の最先端のトピックでありながら、とても難しい問題を含んでいる。…解決すべき問題がいくつかあるため、キャリアガイダンスの効果を実証的な形で示すのは、一般に考えられている以上に難しい。
 そこで、1つの考え方として、目下、提供しているキャリアガイダンスが一定水準のサービスに達していることを、一定の学術的・理論的な根拠に基づいて開発された標準的なテストや情報ツールを用いることによって保証するという考え方が出てくる。こうしてキャリアガイダンスのアカウンタビリティの問題は、標準的なキャリアガイダンスツールの継続的な研究開発の必要性へと結びつく。
 特に、先進諸国では、標準的なキャリアガイダンスツールの提供は公的な機関で行っていることが多く、一定水準のキャリアガイダンスツールを無償または実費で提供している場合が多い。このことで、国内におけるキャリアガイダンスツールの質のミニマムを規定することができ、国内におけるキャリアガイダンスの質を保つことができるからである。結局、一国のキャリアガイダンスサービスの総体的なレベルとは、どの程度、質の高い標準的なキャリアガイダンスツールを用意できているかに、かなりの部分、依存するということになるのである。
http://www.jil.go.jp/column/bn/colum091.htm

まあ、どうなんでしょうね。仕分け人としてみればこんなの屁理屈だということかもしれません。JILPTがキャリアガイダンスの研究をやめても、リクルートとか他の民間企業がもっと優れたものを低廉に提供するということであれば、たしかに「役割を終わった」ということになるのでしょう。これは結果をみてみないとなんとも言えません。
あと、成果普及等も廃止ということですが、JILPTのサイトをみると刊行物http://www.jil.go.jp/publication/とフォーラム・シンポジウムhttp://www.jil.go.jp/event/が該当するようです。フォーラム・シンポジウムはともかく(役所が自前でやってもいいわけですし)、出版物もやめてしまえということでしょうか?他の出版物はともかく、「日本労働研究雑誌」*1だけはなんとしても残さなければいけないと思うのですが…。私はビジネス・レーバー・トレンドも愛読していますし、「ユースフル労働統計」や「データブック国際労働比較」も便利に活用しておりますが…。困るなあ。
いずれ、仕分けの状況も前回同様に公表されるのでしょうから、またその時点で確認してみたいと思うのですが、本当にしっかり議論して判断しているのかどうか、心配な感じです。

*1:このブログの読者の方ならご存知のとおり、日本労働研究雑誌はわが国における労働研究のジャーナルの最高峰であり、若手研究者の第一の登竜門と申せましょう。その編集委員を務めることは研究者のキャリアとして高く評価されているようです。