パート労働者「不足」に転じる

今朝の日経新聞から。「パート労働者「不足」に転じる」との見出しがあります。

 厚生労働省は8日、5月の労働経済動向調査を発表した。パート労働者が「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた事業所の割合を差し引いた過不足判断DIが全産業で1ポイントの不足超過に転じた。製造業では過剰感が薄らぐ傾向にあり、一部に明るい兆しも出てきた。ただ正社員などの過不足DIは過剰超過が続き、全体の雇用情勢は依然厳しい。
 調査は従業員30人以上の5835事業所を対象に、景気動向や労働力需給の変化について現状や見通しを聞いた。回答率は約49%。パート労働者の過不足を産業別にみると、宿泊業や医療・福祉業で不足超過になる一方で、建設業や情報通信業などは過剰超過。製造業は14ポイントの過剰超過だったが、超過幅は前回調査よりも8ポイント縮小した。
 ただパート労働者を除いた正社員などの過不足判断DIは全産業で15ポイントの過剰超過だった。卸売業や小売業などで過剰感が高まっている。
(平成21年6月9日付日本経済新聞朝刊から)

もっとも、パート労働者の過不足判断DIがマイナスだったのは前回(今年の第1四半期)だけで、しかも数値はマイナス1でした。昨年第4四半期はプラス14、第3四半期はプラス18で、縮小はしていましたが、まだ不足感が残っていました。これをみると、「「不足」に転じる」という見出しはやや大げさな感はあります。まあ、厚生労働省の発表資料にも同様の表現があって、事実であるには違いないわけですが。
さらに、正社員等労働者(期間1年以上の有期雇用を含む)をみても、昨年は第4四半期がプラス13、第3四半期はプラス18で、パート労働者とほとんど同じです。ところが、今年に入ると前回がマイナス11、今回がマイナス15と、パート等労働者と較べると明らかに悪化しています。
ということは、これは需要の動向というよりは、雇用調整速度の違いが表れているとみたほうがいいのかもしれません。実際、先月末発表の一般職業紹介状況をみても求人関係の指標は軒並み減少になっていますし、同じく労働力調査の就業者数をみてもほぼ同様です。有期雇用の多いパート労働者の方が、雇い止めなどによって比較的速く雇用調整が進み、短期間で適正規模になったというのが現実ではないかと思われます。そう考えると、明るい兆しには違いないでしょうが、あまり過大評価もできないのかもしれません。もっとも、労働力調査の臨時雇(1ヶ月以上1年以下の契約)は今年に入って増勢ですので、一部には仕事が増えたことに対して有期契約を増やすことで対応している状況もあるのでしょう。このあたりは統計の取り方がかなり違いますので、なかなか一概にはいえないところではありますが。
また、生産・売上額等、所定外労働時間、雇用の判断DIをみると、依然として前期比で減少するとみる事業所が多いのではありますが、数字自体は製造業とサービス業を中心に顕著に改善がみられ、これはたしかに明るい兆しのように思われます(その一方で、卸売・小売はまだ低迷していますが…)。まだまだ厳しい状況ですが、一応は底を打ったといえるのかもしれません。とはいえ、それが雇用情勢全般に波及し、正社員の需給まで改善されるには、ある程度の期間は必要でしょうが…。